バックナンバー

#9

美しき地球の四季 2時間スペシャル 一面の銀世界から爛漫の春へ

地球規模で世界の四季を追いかるBBC珠玉のネイチャー・ドキュメンタリー、今回は2時間スペシャル! 過酷な厳寒の冬から生命誕生の春を追跡する、生き物たちの奇跡の物語です。最先端技術を駆使して撮影した地球規模の春夏秋冬の移ろい…。そこには、生命の誕生や生存競争、美しい絶景の数々が収められています。
厳しい冬を乗り越えるためには、独創的な知恵と行動力が必要です。スコットランドの高地に住むライリョウは、零下30度の寒さに対応するため羽を増やし、足やまぶたにまで羽を生えさせるのです。同じキツネでも暖の取り方はさまざま。アカギツネは気持ち良さそうなフサフサの尻尾に包まって暖を取り、動物界で最も分厚い毛皮をまとうホッキョクギツネは、両足の肉球までも毛皮で覆われています。小さな耳とずんぐりとした短い足は熱が逃げるのを防ぐためのもの。その理にかなった機能で、零下70度でも快適に過ごせるのです。

今回のスペシャルでは、私たちになじみ深い日本の動物にも注目しています。中部日本の山中、世界有数の積雪量を記録する地域に、厳しい冬を頭脳で乗り切る動物たちがいます。人間を除くと地球上で最も北限に住む霊長類、ニホンザルです。凍える寒さから身を守るため、その体はとても厚い毛皮で覆われていて、子供のサルでも零下20度に適応できるほど。さらに、彼らは地球上で最も賢いサルの一種。雪で覆われた冬場でも、その頭脳を生かして飢えをしのぎます。創意工夫によって、あらゆるものを食べてしまうからです。木の皮もその一つ。見た目こそおいしくなさそうですが、これも彼らの賢い選択。木の表皮のすぐ下には、豊富な栄養が蓄えられていることを知っていて、生き延びるのに十分な栄養を摂取することができるのです。越冬のための知恵はこれだけではありません。日本は火山大国。火山活動によって温められた地下水が地上に湧き上がり、真冬でも入ることができる温泉です。ニホンザル、別名スノーモンキーが世界に有名になった光景の一つ、温泉につかる彼らの姿は、世界の人々を驚かせました。

そして春、新しい生命誕生の季節です。しかし、それは生きるための戦いの始まりでもあります。生を受けた動物たちは、早く成長し、生きていくためのすべを身に付けなければなりません。
早春の北米では、6万頭のハイイログマが巣穴から出てきました。10週間前に出産した母グマの近くには子グマの姿が。生まれてからずっと母乳を飲み続け、今では生まれた時の20倍の大きさになっています。しかし、外界には食べ物がありません。母グマは子供たちを引き連れて、初春の谷間に下りて行かねばならないのです。初めて見る外の世界に興味津々の小グマたちをよそに、先を急ぐ母グマ。冬眠中は、他のクマからの攻撃をしのぐことができましたが、今は違います。母グマははぐれ者を待ってくれるほど優しくはありません。迷う子グマたちは、自分で何とかしなければならないのです…。
シエラマドレ山脈の森の樹木に、何百万匹というチョウが群がっています。冬の間は暖を取るためお互いに寄り添って眠り、木の枝が毛布のようにチョウを覆い、夜の寒さから守ってくれるのです。ある春らんまんの朝、なにやら動き出すチョウたちをカメラが捉えました。太陽の熱で体温が13度以上になると、彼らは一斉に飛び立ちます。その数、一億匹以上!世界で最大規模のチョウの群団です。


©Lagrange/Tom Stack Assoc/Alamy Stock Photo 2011

©Sean Pavone/Alamy Stock Photo 2013


©David Rasmus / Shutterstock 2016


©Stephen Dalton / Nature Picture Library 2010