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トラの王国! インド・ランタンボール国立公園 ベンガルトラの成長物語

インド北西部のランタンボール国立公園。環境破壊や密猟などで絶滅の危機にあるベンガルトラが住む「トラの王国」を、長年にわたり治めてきたメスのトラ、マッチェリ。10年以上に及び、湖畔の一等地を縄張りとして、時に勇猛に守り続け、多くの子孫を残し育ててきた。そして、貴重な生態を世界に伝えたことで、最も有名なトラとなった。

時は過ぎ、年老いたマッチェリに世代交代が訪れた。闘いの末、長年支配し続けてきた縄張りを娘に明け渡した彼女は、新たな道を歩み始める。その力強い姿が多くの人々を魅了し、いつしか”トラの女王”と呼ばれるようになったマッチェリ。闘いと愛に満ちた成長の物語。

1998年、3姉妹の1頭として育ったマッチェリは、当時”湖の貴婦人”と呼ばれ、湖畔を治めていた母親に襲いかかるものの返り討ちにあってしまう。その後、いく度となく縄張り争いに挑み、ついに親離れして間もなくの若さで母親から縄張りを手に入れる。

しかし、闘いにかけては天才的な才能を持っていても、狩りはまだまだ経験不足。方法は分かっていても、うまく獲物をとれないマッチェリは、湖畔に集まる動物たちについて、ひとつひとつ学び成長していった。

次にマッチェリが目指すもの、それは優秀な子孫を残すこと。オス2頭の子供を産み、若いながら母親として素晴らしい子育ての才能を持っていた。子供たちにエサを食べさせるため、いつしか巨大なワニを襲えるほどの狩りの名人へと成長していた。

しかし、そんな彼女にも危険な状況が迫る。子供たちの父親がいなくなり、縄張りに別の新しいオスが現れ様子をうかがっている。メスを狙い、その子供を捕らえて殺す習性があるオスのトラから子供たちを守るため、ある日、マッチェリはオスに襲いかかり、適度の傷を負わせて退散させるのだった。

時は流れ、9頭もの子供を生み育てて王国を治めてきたマッチェリにも、いよいよ縄張りを明け渡す時がやってくる。縄張りを狙っていた娘との闘いに負けた後、湖から去り、穏やかで威厳ある最期を迎えようとしている。この記録映像は、力強い姿が多くの人々を魅了し、いつしか”トラの女王”と呼ばれるようになったベンガルトラ、マッチェリの闘いと愛に満ちた成長の物語だ。


©Aditya Singh

©Aditya Singh