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#116

赤瓦とステンドグラスで甦った 昭和六年生まれの家

武蔵国の守り神、大国魂神社を中心に栄えてきた東京都・府中市。大化の改新の後、武蔵野国の国府が置かれ、江戸時代には甲州街道きっての大きな宿場町となりました。
今回は、この街で木造2階建ての古民家をリモデルされたMさん宅を訪ねました。元々ご主人のご実家だったM邸。かつて家の敷地前に、コンクリートに使う砂利を運ぶ機関車が通っており、当時の藁葺き屋根だった家は機関車の火の粉が原因で全焼。その後、昭和6年にご主人の父親が新たに建てた家が築80年を超え損傷がひどくなり、今回、耐震診断をしたところ、大きな地震には耐えられないと診断されました。Mさんご夫婦は建て替えを考えましたが、関西に勤めている長男が「実家に帰ってきた時に生まれ育った家が無いのは寂しい」とリモデルを提案。古民家再生を得意とする建築家に依頼したのです。
 
以前は屋根の一部がトタン造りで、夏は屋根が焼けてしまい2階の室内がとても暑かった為、全ての屋根を赤瓦に仕上げました。また、昭和35年頃までは養蚕農家だったM邸。農作業の合間に土足のまま休める広い土間があった玄関部分は、既存を生かしたまま新たにデッキ材を敷き、ゲストをもてなせる空間に。また庇が長く、暗かったため、2階の窓を増やし、天井を取り払って大きな吹き抜けを設けました。
子どもも独立し夫婦2人の生活では、家の東側3分の1のスペースしか使用しておらず、半分以上の部屋が物置状態でした。そこで広い空間を生かして、客間として使われていた家の中央をLDKに。玄関やダイニングなどには、昭和初期の洋館などにあったガラスで作られたステンドグラスの照明が置かれ、かつて奥様が趣味で作ったステンドグラスのランプシェードの光も古民家に良く馴染んでいます。また、タンス置き場になっていた西側の和室は、奥様のお琴の教室に。以前は場所を借りて教えていましたが、リモデル後は自宅で教室が開けるようになりました。奥様の好みで、収納部分の扉やドアに、フランス製の凝ったデザインの和紙などが大胆なデザインで用いられ、空間を鮮やかに彩っています。
今となってはなかなか手に入らない良質の素材を生かして、夫婦で安心して暮らせる美しい日本家屋へと生まれ変わりました。
 
設計担当:一級建築士事務所 アルケドアティス
http://www.alcedo-atthis.com/

【平面図】

1F before

1F after

2F before

2F after