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#108

古い建具を上手く活かした 物を作りたくなる家

今回訪ねたのは京都市上京区の小川通。良質な水脈に恵まれたこの界隈は、裏千家や表千家など水にこだわる茶道の家元が多いことで知られています。その昔は小川という清流が流れていましたが、今は石橋がその面影を残すのみ。そこに水はなくとも、茶の湯の歴史は脈々と流れています。
この町で築95年の町家をリモデルしたMさん。以前は仕事の関係で東京で暮らしていましたが、長女の誕生後、東日本大震災をきっかけにご主人の実家がある京都への移住を決意。以前は御所の近くに一戸建てを借りて住んでいましたが、「地域に根を生やしている感じ」を感じながら暮らしていきたいという思いもあり、この地で古い町家を手に入れ、リモデルすることにしました。
外観はご夫婦が気に入った格子を、ポイントに既存の風合いを残しつつ、自分たちで、奈良の薬師寺にも使われている防腐効果のある伝統的なベンガラ塗料を塗り補修しました。以前の玄関は、和室と水まわりスペースに挟まれた細長い空間でした。今回のリモデルでは、表の通りが車の通りが多いので、自転車で乗ったまま家に入れる広い土間を作りました。また土間の一角には、将来、染め物教室を開くことも考えている奥様の希望で、染め物ができる流し台を設けました。3部屋に仕切られ、暗く狭かった1階は床下全面をベタ基礎にして耐震補強を施し、壁を取り払って奥まで光が届く広々としたリビングダイニングに。 これまでは、同じ仕事に携わりながらも、仕事の話をすることはなかったというご夫妻。最近は、みんなが集まるリビングで、ちゃぶ台を囲みながら一緒に手掛けるプロジェクトの構想を話すようになったそうです。3歳になる娘さんも、奥様が勉強中の染め物に興味津々。「家族みんなの創造力が湧き出る町家空間」というお二人のテーマにぴったりのリモデルになりました。

設計担当:ミセガマエヤ
http://www.misegamaeya.net/

【平面図】

1F before

1F after

2F before

2F after