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#82

木桶の風呂が鎮座する 目黒川沿いの家

都内でも有数の桜の名所、目黒川。春にはピンクのアーチを架け、多くの花見客を楽しませる川沿いの桜並木も、師走になれば色づいた葉を遊歩道に落とし、新たな芽吹きに備えています。
今回訪ねたのは、そんな目黒川沿いに建つマンションの一室。こちらで愛犬とともに暮らすのがSさんご夫妻です。以前は都内の賃貸マンションにお住まいでしたが、愛犬がのびのびと駆け回れる環境を求め、住宅の購入を検討。当初は郊外の一軒家を考えていましたが、職場へのアクセスが悪く、またご夫妻で暮らすにはそれほどの広さも必要ないため、都心の中古マンションを探し始めました。そこで見つけたのが、駅から徒歩圏内にありながら、目黒川沿いに広がる緑も楽しめるこちらのマンションでした。築41年、広さわずか48㎡というこの部屋をはじめて訪れたとき、その暗さが印象に残ったというSさん。一般的にはマイナス要素となりうる「暗さ」に落ち着きを感じたお二人は、光の陰影を楽しみながら、限られた空間の中で愛犬とともに快適に暮らせる家へとリモデルすることにしたのです。
L字型の間取りをしたS邸。間接照明に柔らかく照らされた玄関からのびる、トンネルのような廊下を抜けると、そこは大きなワンルームになっています。薄暗い廊下は、その先に広がる空間をより明るく開放的に感じさせるための仕掛けになっていたのです。そんなリビングダイニングの床に敷かれた無垢の杉材は足触りがよく、愛犬も気持ちよさそうに部屋中を走りまわります。その一角には、杉のフローリングと段差なくつながる畳部屋を設けました。以前はベッドでの生活だったSさんご夫妻ですが、リモデルを機に布団での暮らしへとライフスタイルを変更。昼はリビングの延長として、夜は寝室として畳部屋を使い分けています。一つの空間に様々な役割を持たせるという日本家屋ならではの間取り使いをマンションで再現し、限りあるスペースを有効に使えるようにしました。
リビングに土間を作るなど、和のテイストを随所に取り入れたS邸。中でも最も日本的な雰囲気を感じさせるのが、キッチンの隣に置かれた木桶風呂です。ご主人の出身地・青森のヒバを使ったこの木桶風呂は、なんと壁を隔てずLDKと繋がっているのです。ワンルームの一部に取り込まれた浴室は、ゆったりと木桶風呂に浸かるご主人と、キッチンに立つ奥様のコミュニケーションの場ともなっています。
家のどこにいても互いの様子が感じられるS邸。自分たちのライフスタイルと、何よりもお互いを理解しているからこそ実現した、素敵なリモデルでした。
 
設計担当:スマサガ不動産
http://suma-saga.com/

【平面図】

before

after