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#77

正面は焼き杉風 鉄骨の持ち味を活かした逗子の家

三浦半島の付け根に位置する神奈川県逗子市。湘南の海に浮かぶ江ノ島を眺める逗子海岸は、マリンスポーツを楽しむ人々で連日の賑わいをみせています。
今回訪ねるのは、そんな逗子市で建築事務所を開くUさんのお宅です。葉山町ご出身のご主人は、建築家として独立後、ご自身が生まれ育った三浦半島を拠点に仕事をしていました。しかし当時は自宅と事務所が離れており、急な用件への対応など、自宅と事務所が離れていることに不便さを感じていました。また、お子さんも誕生したことで、それまで奥様と2人で暮らしていた賃貸マンションも手狭になっていたのです。そんな時、自宅のそばで売りに出されていたのが、2階建てのこの建物でした。もともと会社の事務所として建てられていたため、一般の人は手が出しにくい造りでした。しかし、自宅で建築事務所を開きたいと考えていたUさんにとっては、願ってもない好物件だったのです。事務所使用の設計は構造がしっかりしており、間取りを自分たち好みに変えられると確信したUさんは、この物件を購入。建築事務所としての機能をしっかりと確保しながら、家族3人が快適に暮らせる家へと、リモデルすることにしたのです。
かつては、いかにも事務所といった印象の白い外壁だったU邸。そのイメージをガラリと変えるため、正面の壁には焼き杉風の板を張りました。ひとつしかなかった入り口ですが、新たに玄関を増設して、1階の建築事務所と2階の住居スペースを分けました。生活の中心となる2階は、Uさんのこだわりに溢れた、贅沢な空間が広がります。タモのフローリングが美しいLDKは、ご家族の寛ぎの場所。幅およそ3メートルもあるステンレスのキッチンは、足下に間接照明を仕込み、まるでステンレスの塊が宙に浮いているかのようなデザインになっています。また、既存の開口では、隣家に遮られて採光が満足に得られないため、天井高まであるサッシに交換。大きな窓から燦々と日が差し込み、部屋の印象をさらに明るくしています。
住居と建築事務所をつなぐ階段は、もとの幅の広さをいかし、片側に本棚を造り付けました。階段が、家族が寛ぐ図書館にもなる、楽しいアイデアです。
建築事務所の隣には、子供部屋も設けました。最近ではお子さんが、仕事の様子を覗きに来るようになったとおっしゃいます。リモデルで、家族の距離も一層近づいたようです。
 
設計担当:アーキグラフデザイン一級建築士事務所
http://plaza.harmonix.ne.jp/~shig/

【平面図】

1F before

1F after

2F before

2F after