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#73

大きなお風呂から坪庭を愛でる御所の隣の家

鴨川の清流に人々が憩う、京都市上京区。夏の到来を間近に控え、御所の緑は日々濃さを増しています。今回は、そんな京都御所の目の前に建つ、築32年の京町家を訪ねます。
京都の暮らしに憧れていたという施主のSさんご夫妻は以前、銀閣寺のそばの京町家を借りて暮らしていました。京都の四季を感じるそこでの暮らしが気に入ったお二人は、家の購入を検討することに。そんな折、運よく見つけたのが、設備会社のショールームと倉庫として使われていたこの町家でした。もともと住居としての設備が整っておらず、隣家と壁が接する町家独特の造りで、建て替えることも難しいため、なかなか買い手が付かなったようです。しかし、ご自身で建築事務所を営む奥様にとっては、店舗と住居を兼ねる、可能性に溢れたこの物件は、まさに希望通りのものでした。そこで、同じく建築士のご主人と一緒にアイデアを出し合い、既存の外観はそのままにリモデルすることに。何の変哲もないショールームと倉庫が、お二人のライフスタイルにぴたりと合った快適で美しい空間へと生まれ変わりました。
間口は狭く、奥に細長い作りをしている京町家。通りに面するショールームだった場所は、ご夫妻が趣味で集めた可愛らしい雑貨を並べて店舗兼事務所にしました。その先をさらに奥へ進むと、かつての倉庫へつながります。開口部が少なく、断熱処理も施されていなかった3階建てのこの倉庫は、耐震補強と断熱材を充填し、新たにご夫妻の居住空間として生まれ変わりました。もともと採光の確保が難しいとされる京町家。そこでSさんは最上階の3階を生活の中心となるリビングダイニングキッチンにすることに。天井に4か所の天窓を設けることで、真上から射し込む光が階段の吹き抜けを通って、各階を照らします。また、壁や床を白くすることで、空間に広がりを感じられるようにしました。燦々と陽光が降り注ぐこの部屋は、ご主人こだわりの真空管アンプから心地よい音楽が響く、お二人の寛ぎの場となりました。
京町家の特徴の一つである中庭。その中庭とつながる一階部分は、広いスペースを確保した浴室に。海外製の大きな浴槽につかり、中庭の緑を眺めながらゆったりとお湯につかる。外からの視線が遮られた京町家ならではの贅沢な空間です。
憧れの街、京都で、こだわりの生活スペースと仕事スペースを実現したSさんご夫妻。京町家の新たな可能性を感じさせてくれるリモデルでした。

設計担当:コトリ設計事務所

【平面図】

1F before

1F after

2F before

2F after

3F before

3F after