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#54

ワンルームに6人家族が楽しく暮らす 芦花公園の家

東京都世田谷区にある蘆花公園は、明治・大正期を生きた文豪・徳富蘆花の邸宅跡地です。蘆花が過ごした晴耕雨読の日々は、現代にまでその名残をとどめ、園内には今日も穏やかな時間が流れています。今回は、そんな蘆花公園の近くにお住まいのYさんのお宅を訪ねます。
9階建てマンションの7階にお住まいのYさんは、イタリアンレストランのオーナーシェフです。8年前にこの部屋を購入した当初は、奥様と2人のお子さんの4人で暮らしていましたが、さらに2人の子どもが生まれ、6人家族になりました。しかし当時の間取りは、これから成長していく4人の子どもたちにとって十分なものではありませんでした。およそ70㎡の空間は、平面だけでは満足な広さを得られません。そこでなんと2LDKの間取りを大胆にワンルームに変更し、部屋の中に大きな箱を置くことで、立体的に間取りを広げることにしたのです。6人それぞれが自分のスペースを確保しながら、家族の距離も大切にできる家へとリモデルしたY邸は、TDYリモデルスマイル作品コンテスト2010で、家族構成・年齢変化に伴うリモデル マンション特別賞を受賞しました。
ワンルームの空間を、2つの箱が仕切るY邸。玄関に近いひとつめの箱は、3人の子どもたちのためのスペースです。ホワイトラワンや、奥様お気に入りのレモンイエローの壁紙で飾られた箱の中は、なんと3段構造に。一番下は収納、真ん中にはベッドスペースが。そして最上段には勉強机が備え付けられています。ベッドスペースに取り付けられた本棚を足場にして、上手に上まであがる子どもたち。秘密基地のようなこの空間は、とてもお気に入りなんだそうです。
青いフェルトが鮮やかなもう一つの箱は、ご夫妻と一番下のお子さんの寝室になっています。この箱もやはり3段構造ですが、最上段は多目的スペースにしました。壁の一部に鏡をはり、空間を広く感じさせる工夫もされています。
 限られたスペースでも、垂直方向に間取りを広げることによって、自分たちだけの特別な空間を手にしたYさんご一家。互いの気配をすぐ近くに感じられるこの家が、家族のつながりをさらに深めている、そんな気がするお宅でした。
 
設計担当:ミハデザイン一級建築士事務所
http://mihadesign.com/