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#289

旧神谷伝兵衛稲毛別荘Ⅰ Ⅱ

本格的なスランスワインの醸造技術を導入し、茨城県牛久でワイン醸造に成功した初代・神谷伝兵衛の別荘。本邸は浅草・神谷バーの隣にあったが、伝兵衛の病気療養用に建てたのが稲毛別荘。かつては生活用の和館もあったが、現在は接客用の洋館のみ残されている。いち早く取り入れた鉄筋コンクリート造、2階建、瓦葺き。南側にロマネスク風の5連のアーチで支えたベランダを設け、夏の別荘らしさを演出している。白い磁器タイルやアーチ上部の幾何学模様は当時流行のセセッションの影響とみられる。1階は玄関ホールと洋室1室のみ。2階はほとんどが和室。天井は煤竹を用いた折上格天井、床の間は広い畳床、床柱はブドウの木からなる数寄屋造。ワイン醸造を営む傳兵衛にちなんだブドウの意匠が多い。