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自民党実力者たちの勢力図 キーワードは「赤坂議員宿舎4人組」
■「キーワードは『赤坂議員宿舎4人組』」
上山
今年の秋に想定される衆議院選挙、そして、自民党総裁選をにらみながらの、永田町での綱引きを読み解いていきます。ゲストは、永田町に独自の取材ルートを持つ、元テレビ朝日政治部長でジャーナリストの末延吉正さんです。どうぞよろしくお願いいたします。
末延
こんばんは、よろしくお願いします。
上山
そしてもう一方ゲストです。日本大学大学院講師・岩井奉信さんです。どうぞよろしくお願いいたします。
岩井
よろしくお願いします。
上山
この先、秋には自民党の総裁選、そして衆議院選挙が控えている状況です。そういった中で、菅総理の今後を見ていく上で、末延さんは、実はこちらの地図。永田町を中心とした地図から菅総理の権力基盤を読み解くことができると指摘しているんです。この永田町界隈ですね、国会議事堂のすぐそばには総理官邸がありまして、隣接するところに総理公邸があります。これは通常は総理大臣が入居するということなんですけれども、ただ、菅総理に関しては、現在、この公邸に住むことはなく、衆議院の赤坂議員宿舎に住んでいます。
ここから、赤坂議員宿舎から総理官邸に通う日々を続けているということなんですが、末延さん、この地図から菅総理の権力基盤が読み解けるというのは、これは一体どういうことなんでしょうか。
末延
普通はアメリカ大統領ならホワイトハウス、ロシアだとクレムリンですよ。イギリスだとダウニング10、「権力の館」はそういう公的なものです。だから総理公邸は、昔の総理官邸ですが、安倍さんも週末は自宅に帰っていたけど、ウィークデーはあそこ(公邸)で仕事していたんですよ、夜もね。その公邸に入居しないことがキーワードなんですね。
上山
どうして総理公邸に住まないのか、それがキーワードだと。
末延
「権力の館」はどこか。普通ならば総理大臣官邸および公邸ですよ、それがいまは「赤坂議員宿舎」。いまは、議員会館と並んで立派なホテルみたいな宿舎ができましたが、僕が若い頃、取材で回っていた時の議員宿舎はボロボロでしたよ。もともと何で宿舎ができたかと言うと、戦後、住む家が無かった、戦争に負けて。そこでパタパタ魚焼いたりしながらの木造の古い家だったんですよ。今、ホテルみたいになっていて、そこに菅さんは単身赴任、奥さんは横浜から週末だけ来られる。その宿舎に、菅総理を生んだ生みの親の81歳、二階さん、奥様が亡くなられお一人になられて、やっぱり単身で住んでおられる。さらに、菅さんと一番気が合う叩き上げの森山国会対策委員長、金丸国対委員長以来の剛腕ですが、鹿児島の市会議員から上がってきた方が、なかなかの業師なんですね。それから二階さんに付いてる林幹事長代理。菅さんを入れたこの4人「赤坂議員宿舎4人組」です。思い出してください。
10カ月前、安倍さんが8月28日の午前中に麻生副総理と会って、すぐに退陣の速報が流れたじゃないですか。夕方5時に退陣会見をやった。その日のうちに二階さんは一番大事な決定をしているんですよ。何かと言うと、当時人気があったのは石破さん。だから地方党員投票をやったらもう石破さんが行くんじゃないか。でも、コロナ禍にあるから政治空白作れないから、党員投票はやめて簡単な方法でやると。28日、その日に決めてるんですよ。その翌日、29日の夜8時。この「権力の新たな館」と僕が呼んでいる議員宿舎の応接室があるんですが、そこを予約して、この4人が集まって、そこで菅さんが初めて決意を述べる、やろうと思うと。そうすると二階さんが、応援するから頑張れと。明けて30日、二階派ナンバー2の河村元官房長官が菅さんを支持すると発表。みんなの受け止め方で言うとね、金曜日に退陣だったでしょ、安倍さんの衝撃的な病気退陣。そして29日の各紙は、週明けに本格化する、石破地方人気、なんて言ってたでしょ、皆、新聞は。ところが気が付いたら、退陣翌日の夜にもう決めて、一気に指示を出した。慌てた最大派閥の安倍さん出身の細田派、麻生派、それから竹下派。数から言えば最大勢力、これが揃って9月2日に菅支持の記者会見、二階さんのところは(会見に)来なくていいと、こうなったわけ。退陣から5日間で、電光石火で決めた。
幹事長という総裁選のルールを作れる二階さんが、ポリティカルアート、そういう政治技術を使って、総裁選は簡略化する、石破さんをそこでまず潰す、皆がぼーっとしてる間に、月曜日になったらもう決まっていたと。慌てて三大派閥が記者会見したけど。菅さんにとってみれば、(宿舎は)いいですよ。総理公邸に入れば総理番がウォッチしますよ。裏口もあるんですが、僕も時々使ってたんですが。宿舎の中は、入ったら分かんないんですよ。
上山
例えば総理動静には、この議員宿舎で4人組が会った場合には掲載されるんですか。
末延
菅さんの場合は、田中角栄さんと一緒で実務型だから、帰る前に議員会館の(自分の)部屋に寄って、実務的な処理をして帰られる、で、宿舎に入ったところで終わるんですよ、番記者の記録は。この「権力の館」、自動ドアで閉まって中に入ったら、もう分からない。そこで二階さんと会ってもわからない。特に国会対策で、森山さんと直接に菅さんがやっていたから、そこで話すと全然わかんない。だから新たな「権力の館」は「赤坂議員宿舎」だと。
管原
秘密裏に、この4人が集まって大きな事をここで決めていると。
末延
だから僕は思うんですが、菅さんが本当に自分が1本立ちした時、公邸にいつか入られる判断を、再選されれば、これは任期が3年だから、どこかで判断して入られると思うんですが。野党もずいぶん攻めてましたけどね、なんで公邸に入らないのかって。まあその方が自由がきくということでしょうが…。
■二階幹事長の“切り返し”安倍前総理は…
上山
二階幹事長に関しては、今、いわゆる安倍前総理、麻生副総理、甘利税調会長という、いわゆる「3A」と二階幹事長とのせめぎ合いが取りざたされています。様々な議連が立ち上がっているんですよね。
菅原
まずは5月21日のことですけれども、甘利税調会長が会長、そして安倍前総理と麻生副総理を最高顧問としまして、半導体戦略推進議員連盟を立ち上げました。一方、二階幹事長は「自由で開かれたインド太平洋」議連を立ち上げまして、安倍前総理に最高顧問を依頼して、これを安倍前総理は引き受けたんですね。
末延さん、二階幹事長といえば親中派ですけれども、今回は、中国に対抗する推進議連を立ち上げたということで、しかもそこに安倍前総理を引き込んでいる、これはどういった狙いが二階さんにとってあるのでしょうか?
末延
「3A」に「2F」、二階だから「2F」なんですが、メディアがこういうのを書き始めると、政局が始まったということなんです。この内、半導体議連は本当にあとで話も出るでしょうが、本当に今、必要な話だから、世界的に半導体はもう重要な問題だから、これは実質、意味があるんです。永田町的にいえば「3A」、3人が固まった、さっき言った二階さんが電光石火で10ヵ月前に菅政権を作って、幹事長が解散の時期まで言っていたじゃないですか。それに対して、数が一番多いのに、二階さんにいいようにされてるんじゃないかというので、甘利さんが今度は幹事長になった方が良いんじゃないかみたいな話を流しながら、「3A」がくっついた。それに対して二階さんが切り返した。木曜日(6月3日)、安倍さんのところで久々に対面取材しようと思って、議員会館行ったら、番記者、幹事長番がいっぱいいるから、おかしいなと思って入ったら、僕の前に二階さんが入ってた。
上山
末延さんの前に二階さんが?
末延
はい。それでちょっと待たされたんですけど、二階さんが出られたら記者がばーっと居なくなってね、安倍さんにはいつも電話取材していたんですが、今回は対面で取材したんです。まずこれを聞きました。すごいですよね、「開かれたインド太平洋」というのは安倍さんが考えた外交戦略で、それをアメリカ政府が使い、いまやG7でもこれを使っているって、日本が名付けた外交戦略が世界を引っ張っていく、こんなことは初めてですよ。その安倍さんイコールと言っていい議連の名前を付けて、自分(二階さん)がそれを作って、安倍さんに最高顧問で来てくださいと誘う、この切り返し技って、すごくないですか?
上山
実際に議連に出席していた安倍前総理もまんざらでもないというか、明るい表情されてましたけど、やっぱり嬉しいというか…
末延
ギャグをかましてたじゃないですか、会議冒頭。聞いてみたんですよ、これってどういう感じなんですか?と言ったら、苦笑いして「二階さんが考えたらしいけど、すごいよねって」笑ってましたけどね。まあやるじゃない、さすが二階さんという感じじゃないですか。
■幹事長ポストめぐる“綱引き”
上山
二階さんとしてのメッセージは受け取ったよ、ということなんでしょうか?
末延
政治家ですからね、まあ色んなことを考える。これからなんですが、二階さんはやっぱりできる人だなというのは改めて認識したでしょうし、自分はもうずっと最長不倒の総理をやったから、二階さんが元々3選の道を開いて自分を協力してくれた人だから、別に二階さんに何も変な感情はないよというのはおっしゃってましたが、まあ政局好きのメディアも含めてさっきの綱引き、「3A」対「2F」に戻るんですよ。二階さんは81歳ですが、幹事長在職も一番長くなってるんですよ。
そうすると数がいっぱいいる、最大派閥の細田派みたいなのは、そろそろいいんじゃないのかというような話が出て、そこを軸に動いている。結局、アメリカでもどこでもそうですが、政治というのは人間と人間の関係、ここから生まれていくんですよ、属人的な。それで話が面白おかしくなったり、本来の政策とずれたりする恐れがあるんです。見事な切り返しだったっておっしゃるじゃないですか。
菅原
そうですね、それだけ二階幹事長としても幹事長ポストにとどまりたいというところと、それを引きずり下ろしたい側というのがあると思うんですけど、その綱引きという意味では、岩井さんにも伺いたいんですが、それだけ幹事長というポジションは非常に重要なポジションだということなんですね?
岩井
そうですね、ともすると総裁よりも強い立場だろうと思いますね。一つは当然、先ほど末延さんもおっしゃってましたけれども、その党の金庫を預かる、お金の支出なども全部、司るのが幹事長なんですね。もう一つは選挙の実質責任者ですから、公認権というのも幹事長が持っている。そういった面では、党運営の全般を幹事長が握るという、自民党の場合は、今、総裁は総理大臣として党本部にいませんから、実質的には党は幹事長のもの、すなわち二階さんのものと、長い間続けば、それだけ基盤が強くなるということで、他の派閥は非常に警戒するわけですよね。
上山
実際に自民党には170億もの政党交付金が入ってくるということですけれども、本当に非常に大きな権力を持ってるというポストだと言えると思います。木内さん、今、政治に求められること、『アンカーの眼』でご指摘いただけますでしょうか。
木内
はい、ちょっと政治・政局の熱い話が続いてるんですけれども、ちょっと中休みですけど、まあ一歩引いた形でコロナ対策、誰が負担するのかと。そろそろ、こういう議論をしなくちゃいけないんじゃないかなと思うんですね。おそらく選挙前には追加の経済対策をやると、立憲民主党は30兆と言っていて、まあそこまでいくかどうかわかりませんけど、多分トータルでいうともう100兆ぐらいになると思うんです、コロナ対策というのは。でも、これをどうファイナンスするかというのは、全く議論されてないということで、これ誰が賄うかと言った途端に増税議論になってですね、選挙前にはみんな避けたいということで、与野党ともに避けるということだと思うんです。果たしてそれで良いのかっていう感じですよね。今のコロナの問題っていうのは、普通の景気の後退と違って、ダメージを受けてない企業とか人もいっぱいいるわけなんです。ですから、本当は今、生きてる世代の中でですね、打撃を受けてしまった人に対して、財政の資金を出して、それを余裕のある人が回していくという再配分が本当は重要ではないかなと思うので、そういう議論を本当は選挙に向けてしてほしいなと。例えば復興特別税のように、すぐに増税ではないんですけど、将来、経済が少し安定したところで、一部の人に払ってもらうみたいな、そういう財源の議論はできればこの選挙のタイミングで、私はしっかりしてもらいたいなと、国債発行だけだとどんどん将来に先送りするということなので、経済の安定的な成長にもマイナスなのではないかなと思います。
上山
選挙だからといって避けずに、そのあたりもしっかり議論をしてほしいなという風に思いますね。
木内
(議論を)避けない政党を私は支持したいかなと思います。
■解散総選挙 菅総理のシナリオは…
上山
秋にかけて総裁選、衆議院選とある中で、選挙のタイミングがいつになるのかということが非常に注目が集まっています。スケジュールを見ますと、7月4日には東京都議選があるわけですけども、23日には東京オリンピック開会式があります。その後オリンピック期間というのが続きまして、9月5日に東京パラリンピックの閉会式を迎えるわけです。ここからです。9月30日が、菅総理の自民党総裁任期満了。さらに10月21日には衆院議員の任期満了という中で、末延さんの読みでは、これ衆議員の選挙、一体いつになりそうなのか。どうなんでしょうか。
末延
まず、最初のポイントは8月の末、これが総裁選9月末の1カ月前なんです。そこでルール決めなきゃいけない。総裁選は、解散とか総選挙が優先するので、状況次第で凍結すると。
9月にパラリンピックが終わったら、直ちに臨時国会開いて、先ほど木内さんが言われたように経済が問題ですから、経済対策をぶち上げて解散というのが基本戦略でしょう。予算委員会1日ずつくらいやるかもしれませんが、それやると10月の3、10、17日、この辺りで投票、40日以内なんで。これが菅総理にとってベストシナリオなんですが、ポイントはですね、もうひとつキーワード考えてきました。「ワクチン宰相」なんです、菅さん。
菅さんは去年、GoToキャンペーンを二階さんとやって、政策の順番を間違えたわけですよ。GoToから入っちゃって、去年の秋にマスコミも含めてワクチンの話をしなきゃいけなかったのに、しなかったじゃないですか、副反応の話だけで。ところが、菅さんは実は頑固一徹。集中力がある実務家だから、アメリカに行ったときに、ファイザーとやったでしょ電話交渉。
上山
直接ですね、はい。
末延
だから、「ワクチン宰相」。一点突破、全面展開すると。誰がなんと言ってもやるんだという感じで、ワクチンを始めたから。
上山
はい。
末延
明日からは職域接種、うちの大学も東海大学もやるんですよ。そうすると、みんなワクチン打った、打ったという話しばかりになる。ワクチンとともに、この夏、オリンピックは色々あっても、乗り切っていけば、ベストシナリオは9月(解散)でいける。ただし、それから後、出てくると思いますが、本当にこの2か月、夏を乗り切れるのかという話が。変異株の話もあるし。
■解散総選挙「変数はコロナ感染」
上山
新型コロナの感染状況ということですね。
末延
そう。キーワードは要するに、「変数はコロナ感染」ということなんです、感染再拡大。その場合には、後ろにまで解散を伸ばせるように、ワクチン接種がどんどん進むから。一番伸ばすと今まで裏技と言われてたんですが、10月21日の任期満了のところ。そこで解散すると、11月28日の選挙でもいいんですよ。
これは、後で岩井先生が憲法規定の話してくれると思いますが、フリーハンドで冬の選挙まで幅を持たして、菅さんがいつ解散を打つかという形で主導権を保ちながら、ワクチンで押していくワクチン解散、ワクチン宰相。こういうことなんですよ。
上山
岩井先生に伺いたいんですけど、法的根拠とありましたけども、このパターンで行けば、衆院議員の任期満了を超えてきますよね。これは大丈夫なんですか。
岩井
公選法、公職選挙法の規制で、解散時期に通ずる国会が開いている場合、この場合には閉会の日から23日以内にやると。さらに、例えば今回の場合、21日、国会最後の日に解散をする、これから40日になりますから11月28日も可能だという形になりますよね。これは公職選挙法の31条の2というところで決められています。
上山
ということは、今の話ではこのシナリオ1もシナリオ2もあり得るという、いずれかを決めるのが、新型コロナの感染状況。
末延
変数はともかくコロナ政局、ワクチン宰相ですから。野党はもう選挙に走り出したでしょう、都議選もある。
上山
岩井先生に伺いたいんですけれども、こういった状況の中で、総理大臣それから政治に望むこと、どんなことお考えになりますか。
岩井
そうですね、今、政治が本当に活力がなくなってきてるんですよね。やはり国民に対して色んな共感を求めるような発信をしなければいけない。同じ目線でよく説明をすると、、そういうような政治であって欲しいと思いますよね。
上山
本当に木内さんがおっしゃるように耳あたりのいいことだけを言っている政治というのは、信用してはならないと思いますよね。
木内
そうですね。ここからは政局にみんな巻き込まれていくわけですけども、やはりもうちょっと引いてですね、国民のために何が必要かとなると、「政治とカネ」の問題とかですね、やはりコロナの財源を耳障りは悪いんですけども、しっかり責任を持って議論してほしいなと思います。
上山
この秋に向けてですね、東京都議選、それから総裁任期満了総裁選、それから衆議員選挙というふうにあるわけですよね。
菅原
いろいろ控えてますからね。
上山
単なるポスト争いで終わってほしくないなと思います。
末延
みんな怒ってますからね。
(2021年6月20日放送)
自民党内では、安倍前総理、麻生副総理、甘利政調会長の通称3Aと、二階幹事長との様々な綱引きが「3A」vs「2F」と取りざたされました。2021年6月20日の『BS朝日 日曜スクープ』では、元テレビ朝日政治部長のジャーナリスト、末延吉正氏がキーワード「赤坂議員宿舎」をもとに、菅総理の権力基盤を分析。秋の自民党総裁選、衆議院選挙に向けた永田町の動きを展望しました。