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感染再拡大を防ぐために… 新たな武器「下水PCR検査」
■リバウンド対策“5本の柱”
山口
緊急事態宣言が1都3県でも、きょう(3月21日)いっぱいで解除されます。多くの方々が心配するのが感染の再拡大。いわゆるリバウンドをどのように防いでいくのかということです。政府が示しました5つの対策は実現できるのでしょうか。そして監視体制強化のカギを握るのが「下水の検査」、これを詳しく、ひも解いていきたいと思います。ではゲストの方を紹介いたします。元厚生労働副大臣で自民党衆議院議員の橋本岳さんです。どうぞ宜しくお願いします。
橋本
よろしくお願いします。
山口
きょういっぱいで緊急事態宣言が解除されます。この後は日常的に感染を防ぐ社会、つまり、新型コロナに強い社会を作る必要があるのですが、菅総理は対策として「5本の柱」を掲げました。こちらの5つです。ただ気になるのは「実現できるのか」という点です。新型コロナ対策、何をすればいいのはもうわかっているんです。対策のポイントはずばり、その実現性なんです。ここに課題が見えています。
その1つが、緊急事態宣言が解除された地域で感染再拡大の兆候をとらえるモニタリング検査の拡充。総理は繁華街や駅などですでに実施している無症状者のモニタリング検査を、順次、主要な大都市で大幅に拡大し、来月には1日5000件の規模にすると目標を話しましたが、野党からはこのような質問がありました。「1日今の実績は160回なんです。あまりにも少なすぎはしませんか?こういう実態がちゃんと耳に届いているかご存じでしたか?」これに対して「今日まで1日いくらか私は承知していませんでした」 現状の検査数は知らなかったと答えました。
実際に検査数は、最新の状況で1週間でおよそ4900個を配り、実際に結果がわかっているのがおよそ1116です。そして、このような指摘もあります。上山さん。
上山
大阪府の吉村知事は、モニタリング検査にこのような指摘をしています。「陽性率が低い日本で、街を歩いている人に検査をしても意味がない。また、結果が出るのが10日から2週間後では遅すぎる」「今のままのモニタリング検査では機能しないし、やってる感が出ているだけになってしまう。飲食店の従業員の無症状者に絞るべき」と話しています。橋本さん、モニタリング検査は5本の柱で非常に重要だと思うんですけれども、これはどのように増やしていくべきなのか、このままでいいのかどうか、いかがでしょうか。
橋本
まずまだ試行のような段階で、来月に5000件を目指すなので、走り出したところだと思います。目的をきちんと意識をしておくことが大事だと思っています。あくまでもモニタリングですから、東京とか大阪という地域で継続的に見ていって、陽性率はどのように変わっているのか、それによって流行が始まってるんじゃないかということを早く見つけるというのが目的だと考えています。ですので、ある一定の数を継続的にやっていくという体制をまずちゃんと作っていくこと、そして、それをやり続けることがまず大事だと思います。
山口
そうですね。菅総理、来月には1日5000件と確かにおっしゃっているので、しっかりこれを実行していただきたいというふうに思うわけです。そしてもう1つ、変異株対策の課題。菅総理は「今後、抽出する割合を現在の10%から40%程度に引き上げて、変異株を割り出す」と話しています。陽性者に対して行う変異株の検査を増やすと話しています。しかし、増やすことが簡単ではないとされています。西村経済再生担当大臣は「検体の(ウイルス)量が少ないとできなかったりする」「誰にでもできるわけではない」と話しています。
さらに東京都の担当者も、「民間検査機関を使えば増やせるのではないか」という問いに対し、「ノウハウが違い、全部の民間検査機関ができるかと言うと、なかなか難しい。そう簡単には拡大できないかもしれない」と話しています。さらに、神戸市や新潟県の担当者は「保健所が忙しい中で検体を回収し研究所に送る作業が負担になる」「衛生研は県内に2か所。遠い地域から検体を運ぶのが大変なことも」。このように保健所から地方衛生研究所への運搬に問題があると話しています。
■「変異株の疫学的な調査が必要」
山口
橋本さん、自民党からは陽性者全員に変異株の検査をした方がいいと政府に提案したようですが、実際に拡充できるのか、どうお考えですか?
橋本
今、変異株をどうやって見つけるかというのは、普通のPCR検査で陽性か陰性かという検査に加えて、その同じ検体を国立感染研に持って行ったり、あるいは地域研に行ってゲノムの解析をするんですね。それによって一般的なものと違っているかどうか確認をするという、別の検査が必要です。そのために、運んで行かなきゃいけないとか、手間がかかるとかいうこともあって、その数があまり増えなかったということはあります。ただ、そこは、この金曜日(3月19日)ぐらいに、新しいそのPCR検査の試薬によって、それを使うと既存の変異株であれば、そのPCR検査で分かるようになるものが発売をされたと聞いています。これがきちんと普及していくことによって、その変異株を見つけるということについてのハードルは下がっていくと思っていますので、100%になるかどうかはともかく、拡大をしていくということは、これまでよりは進みやすくなるはずだと思ってます。ただ一方で、それは限界があって、試薬による検出は、既存の変異株に対してそれに応じた試薬を作ったということですので、変異というのは、いつどこで起こるか分かりませんから、これを見つけるためには、やはり今までやっていたゲノムの検査もやっていく必要はあります。そういう意味で、いかに、そうしたことを組み合わせながら、できるだけ早く速やかに、どこで変異株が始まってるのかということを見つける。それと、もう一つ大事なことは、変異株でもどんな性質があるかということをきちんと調べる必要があります。対策が変わらないのであれば同じだと考えるしかないし、もっと違った対策が要るんだといえば、そういう話にもなります。そういう意味で、きちんと疫学的な調査などをしていくということもやはり大事ですので、それを、スピードを持ってやる体制をきちんと整える必要はあると思います。
山口
既存のイギリス型・ブラジル型・南アフリカ型に対しては、そういう新しい試薬で出来るんだけど、今後、変異していく可能性があるので。
橋本
もちろん、もっと変異があるのかもしれません。
山口
木内さんはどうでしょう。これまでの5本柱が示されました。この実現性については、どのようにお考えですか。
木内
変異株対策、モニタリング検査、新しい対策は、是非やっていただきたいと思うんですが、やはり従来から言われていて、なかなか進まないのは、医療供給の体制の強化、特に病床の拡大ですね。これは1回目の緊急事態宣言から2回目の緊急事態宣言の間、随分、時間があったんですが、その間にあまり進まなかったという反省があると思うんですね。ですから次の緊急事態宣言の可能性もありますし、是非やはり次のタイミングまでですね、感染がまた増えてくるタイミングまでには、やはり増床を今度こそ、時間を無駄にしないでしっかり増やす。政府の役割もありますし、地方公共団体の役割もありますし、病院、医師、様々な方の協力が必要だと思いますが、今度こそ時間を有効に使っていただきたいなという気がしています。
山口
本当ですね。その第4波が来る前に本当にこの病床はしっかり備えて頂きたいと思います。
■下水から新型コロナウイルス検出 日本の技術“最前線”
山口
緊急事態宣言の解除後、感染再拡大の兆候を捉える監視体制に注目が集まっているんですが、その中で、下水から新型コロナウイルスを検出する方法というのが今、注目されているんです。日本の技術で新型コロナに反撃できる、その研究の最前線を取材しました。
北海道大学・水質変換工学研究室。ここでは、下水から新型コロナウイルスを検出する研究が行われています。
北海道大学 北島正章助教
これが未処理下水でこれの中のウイルスを基本的に測って、どれくらい感染者がいるかとか推定することになる。
研究を行っているのは北島正章(きたじま・まさあき)助教。新型コロナウイルスの感染が拡大した去年4月、海外の研究者と共同で下水中の新型コロナウイルスに関する世界初の総説論文を発表しました。
使うのは下水処理施設からくみ上げた処理済みのものと、処理していないもの、両方です。
北海道大学 北島正章助教
これってウイルスを濃縮するための粉の試薬が入っています。このチューブの中に下水を入れてウイルスの濃縮操作を始めます。
濃縮など特殊な処理をすることで微量なウイルスでも感知できる、高感度の検査を確立しました。
下水処理場でこの検査を行うと、流入している地域に陽性者が出たことが早い段階で察知できるのです。実験では100万人の中に1人陽性者がいれば見つけられる感度を実現したといいます。
この研究に下水を提供している札幌市。エリア全体を調べられる“下水検査”に期待を寄せています。
札幌市下水道河川局 渡邊浩基課長
「いち早く感染拡大の防止対策が打てるということで、下水から情報を得て感染防止につなげるというメリットが期待されるところですし、また下水濃度を監視することで、感染流行の収束状況、それもわかるようになれば、社会経済活動の再開だとか、そういったことの指標の1つとして活用できるのではないかというところが期待しているところです。」
■「新規感染者の報告前に下水のウイルス濃度上昇」
山口
大変、興味深い内容なんですが、ここからもうひと方ゲストの方に加わって頂きます。下水から新型コロナウイルスを見つけ出す方法を研究している、北海道大学の北島正章助教です。北島さん、どうぞ宜しくお願いします。
北島
北海道大学の北島と申します。宜しくお願いします。
上山
北島さんは、今月、ある発表をしました。去年の12月4日に採取した下水から変異株を発見したことを発表したんですね。国内で変異株の感染者が確認されたのが12月25日ですので、つまり、それよりも早く変異株があった。広がっていた可能性を示したということで、非常に話題に注目を集めました。きょうはゆっくりお話を伺って参ります。
山口
本当にこの注目されるんですが、この北島さんがどんな研究をしているのか、ご紹介いたします。まず下水検査ですが、簡単に説明しますと、下水を採取し、その下水を処理してPCR検査を行い、新型コロナウイルスを発見するというものです。新型コロナウイルスは腸管上皮細胞に感染して増殖することが示唆されていて、便として出るため下水から検出が可能ということです。
どのように活用できるかと言うと、「下水検査」を行って、仮に下水処理施設Aで陽性となったとします。そうすると、この下水処理施設Aに下水が流入している地域に陽性者がいるということがわかります。そこで、この地域で重点的にPCR検査を行うなど、対策が打てるんです。
北島さん、つまり感染者がまだ少ない段階、これから増えてくるぞという、かなり早い段階で陽性者、例えば無症状者も含めて、捉えることが可能になってくるんでしょうか?
北島
そうですね。新型コロナウイルスに感染すると、症状が出る前からウイルスの排出が始まると考えられています。症状が出始めてから新規感染者として報告されるまでにかかる時間というのも考慮しますと、新規報告感染者の数が増える前に、下水中のウイルス濃度が上昇すると考えられます。実際に感染者数が一気に増えた海外の国からは、新規報告感染者数が増加する数日前に下水中のウイルス濃度が上昇したという報告が出てきております。
■「100万人に1人感染者がいれば検出可能」
山口
北島さん、感度としては、例えば地域でどのくらいの方がいれば捉えることが出来るのか、感染者がどのくらいいれば網が掛けられるのか、この辺りはいかがですか?
北島
そうですね、我々のこれまでの分析結果からは、人口1万人当たり1人の患者がいればですね、下水からウイルスが検出できるということが分かっています。最近はさらに研究が進んでおりまして、塩野義製薬と共同で、これまでより100倍ほど感度の高い、新しい検出技術の開発に成功しました。この結果はですね、下水中のウイルス濃度がこれまでの方法でギリギリ検出できていた濃度の100分の1であっても検出できるということが確認できています。
山口
なるほど。100万人中に1人いれば検出可能ということなんですね。
北島
そうですね、理論上は検出可能です。
山口
そして、さらに、このような活用の仕方もあるということです。地域だけではなくて、例えばマンションごと、病院ごと、ホテルごとと、建物ごとに検査をして陽性者をあぶりだすこともできると。つまり、建物に陽性者がいるかどうかも、この検査で分かってくるということで、北島さん、かなり具体的に活用できる、有効性が高いと思うんですけど、いかがでしょうか?
北島
そうですね、建物からも下水が出てきますので、先ほどご紹介いただいた同じ方法を使ってですね、建物単位で感染者がいるかどうか検査することができます。建物単位の検査の場合はですね、下水処理場に比べますと下水を排出する人が限定されていますので、下水検査の結果が陽性になった場合に全員に対して、例えばPCR検査をするなどですね、感染拡大防止対策を打ちやすいという特徴があります。
上山
実際に北島さん、下水を採取してから結果が出るまで、どのくらいの時間がかかるのですか?
北島
そうですね、現在の技術では、既にその日のうちに結果を出すことは可能で、例えば朝に下水を採取して分析を始めますと、最短で夕方には結果が判明します。
上山
その日のうちに分かるということなんですね。
■海外はウイルス濃度高く普及 日本は高感度の検出技術を開発
山口
実効性も、運用の仕方もすごく可能性が高いなという検査だと思うんですが、実は、海外ではもう実用化されているんです。オランダでは、このようにマップ上に下水から検出された新型コロナのウイルス量が濃淡で示されています。このエリアで陽性者が増えている可能性がある。こういうことが可視化されています。さらに、イギリスでも去年6月から90以上の下水処理場でやっていて、今後拡大する予定。アメリカもテキサス州のヒューストンで去年5月からこの調査をやっているということです。北島さん、日本ではまだまだこれからというところだと思うんですが、海外ではかなり普及し始めているということなんですか。
北島
そうですね。海外ではすでに多くの国で実用化が進んでおりまして、中には先ほどのオランダの例のように国内のすべての下水処理場で検査を実施している。つまり下水検査の人口カバー率が100%という国もあります。この背景には、海外では日本に比べると人口当たりの感染者数が多いですので、下水中のウイルス濃度が高くて検出しやすいために、検出技術の開発に時間を要さなかったことが、海外で実用化が進んでいる理由の一つとして挙げられます。
山口
なるほど、確かに感染者多いですからね。橋本さんここまでお話伺ってどうでしょうか?
橋本
はい。まずオランダでそれだけ進んでやっていたのであれば、それで濃い所、薄い所というのが分かって、それをどう活かしたのかというのを知りたいなと個人的には思います。
山口
その辺りはどうですか、北島さん。
北島
そうですね、それについては、この情報は、政策決定の情報の1つとして活用されているということは、私の方では情報を得ております。ただ、もちろん下水だけの情報に頼るわけではなくて、その他の指標にもよりますけれども、下水の情報は判断材料の一つとして活用されているということです。
■「自動解析体制」毎日、全国の下水のゲノム解析も可能に
山口
この注目の下水検査なんですが、おととい(3月19日)、新たなプロジェクトが発表されました。それが大量検査が可能になる「自動解析体制」です。どういうことかと言うと、北海道大学と塩野義製薬が高感度の検査技術を開発。人の手では時間のかかるPCR検査とゲノム解析の前処理は、安川電機グループRBI社の汎用ヒト型ロボット「まほろ」が行い、高精度、自動化。さらに筑波大ベンチャーの「アイラック」が迅速・大規模なゲノム解析を行うということです。
これにより人手より10倍効率化。さらに新たな変異株の拡大を早期察知できる、こういう体制が整ったということです。北島さん、大規模な変異株の検査、相当期待が持てるんじゃないでしょうか。いかがですか?
北島
はい。そうですね。我々が最近、下水から変異株の検出に成功したということは、先ほどご紹介いただいた通りなんですけれども、これは人の手で実施した検査です。RBI社の汎用人型ロボット「まほろ」とiLAC社の大規模ゲノム解析技術の力を借りることで、これまでは感染者個人を対象にして、言ってみれば点的に変異株の監視をしていたものを、下水検査の利点を生かして、面的に大規模な監視が出来ることになります。
上山
大規模な監視が出来るということなんですけど、素朴な疑問として、とは言え日本全国に下水処理場ってたくさんあるわけで、どのくらいの下水処理場の数を検査できるんでしょうか?
北島
はい、全国には(比較的規模の大きなもので)数百の下水処理場がありますけれども、1カ所の下水処理場から1検体を分析すれば良いので、この自動検査技術を使いますと毎日、全国の下水処理場を対象に、ウイルス濃度だけではなくて変異株も検査する、ということも十分に現実的です。
山口
つまり毎日全国の下水処理場を調べることができるということですか?
北島
そういうことです。
山口
ということは、全国規模で、今の日本全体でできるという意味ですか?
北島
そうですね。自動検査技術の力を借りれば、1日に数百検体を処理することは現実的に可能ですので、全国の感染流行状況を下水から明らかにするというようなことは十分に可能だと考えています。
■「将来の予測ができる…非常に有効な方法」
山口
本当に画期的だと思うんですよね。この下水検査が新型コロナに強い社会の切り札になるのかどうか、自動解析の一角を担う塩野義製薬の澤田副社長にお話を聞きました。
塩野義製薬 澤田拓子副社長
「急激に比率が上がっていくような変異株が同定できると、この変異株はアラートを出さないといけないというのがすぐ分かるわけですね。それを個々にピックアップして、実際に感染者さんでその動きをきちんとフォローしていくというのは、やはり相当厳しいだろうという風に思いますので、そういう事を考えると、やはりマスでトレンドを見て将来の予測をすることが出来るという点で、(下水検査は)非常に有効な方法だという風に考えています。」
「感染の現状を正確に把握できないというのがCOVID-19の難しいところだと思います。つまり、発症しない方がいっぱいいらっしゃる。その方々が隠れた感染を広げる存在として、重要なファクターになってしまっていますので、それがどのレベルでおられるかをマスで把握できるというのは、重要だと思います。ほとんどの方がワクチン接種できたとして、その後の動きとして、あれまた感染が増えてきてる状況になると、そろそろワクチンを打ち直した方が良いのではないか。もし変異株が増えてきているのであれば、変異用のワクチンでないといけないんじゃないかということについても、情報提供が可能にはなると思います。」
■無症状の段階でも把握可能「政策に活かして」
山口
無症状者も大規模に事前に把握することができる、非常にこの可能性広がってくると思うんですが、木内さんは、この下水検査について、どうお感じになりますか?
木内
話を聞いていて本当に画期的だなと思いますね。今まではミクロの対策であり、しかも感染が出てから対策をするという、ちょっと後追いになっているわけですけども、むしろ先手を打ってマクロ的なアプローチができると。今のミクロのアプローチと組み合わせればより有効になると思いますし、政策的に、立案の時に大きな流れとかですね、日本全体の動きをもしリアルタイムで分かるのであれば、やっぱり先手を打った対策ができてくると思いますので、是非、政策に活かしてほしいなという感じがしますね。
山口
そうですね。この政策に活かすと言うと、やはり橋本さん、こういう新しい日本の技術ですよね、ロボットも組み合わせて、是非これは政治が後押しをして、もっと有効に活用して頂きたいなと思うんですが、いかがでしょうか?
橋本
はい。いくつか可能性があるなと思っていて、まずはそのエリアで例えば下水処理場ごとにチェックをするということであれば、例えば日本の1カ所で全部できる必要性は実は無くて、凄く簡単な機械でどこでも出来るというのを数百カ所あった方が、検体を運ぶ時間も惜しいわけですよね。日本1カ所だったら沖縄とか北海道から遅れちゃう。なので、そういう形で進化していってくれると、本当に日本中、かなりリアルタイムな形で分かるようになるといいというのは凄く思います。それとやはり、無症状の人から、腸から菌(ウイルス)が排出される。ダイヤモンドプリンセス号の時に、実は環境検査をやって、お手洗いの床にウイルスが検出されることが分かっているので、そういうこと、あるんだと思います。先ほど塩野義の方も言っていましたが、無症候の人が早く分かるというのは凄く嬉しいことで、例えば、高齢者施設とか医療機関でクラスターが発生しますよね。なぜ急に何十人も見つかるかと言うと、そこまで感染が広がっていたのが分からなかったからなんです。それがこの下水のチェックをしていくことで、無症候の人が広がっている段階ですぐ分かったら、早く対策打てるわけですよね。そういう使い方もできるといいなと思うので。
山口
確かに高齢者施設に使えますよね。
橋本
世田谷区のある施設の例ですけど、PCR検査全員やってみたら、15人無症候の人がいたというような例とかあるんです、だから、そういうことも下水を見ていればすぐ分かってたかもしれない、もっと早く分かっていたかもしれないというのは期待できるなと思います。
■下水検査「技術的課題は克服 全国規模での実施には…」
山口
そうですよね、そして先ほどインタビューを紹介した塩野義製薬の澤田副社長。新型コロナに強い社会に必要なこととして、こう話しました。『「ワクチン」だけで解決策になるわけではない「治療薬」も必要。さらに新たな変異が出ていないかという事が対ワクチンという点でも必要になってきますので、「新たな変異へのモニタリング」。この3つが組み合わさると、かなりCOVIDに強い社会になると思います』「ワクチン」「治療薬」「モニタリング」だと挙げました。そして今後の課題ですが、北島さんは『大きな課題であった検出精度と処理効率は克服されてきている。社会実装に向けては下水道を管理する自治体や国の協力が不可欠』としています。
本当にここから先、政治の力になると思うんですね。橋本さんいかがでしょうか?
橋本
はい。やっぱり大規模にやろうとすると、結局、誰がやるのかとか、あと物理的に検体運ぶのは結構、手間になります。そういうハードルを下げていくと、やっぱりどんどんやっていこうと言う自治体とかも増えていくし、国もやろうっていうふうになると思うので、是非そういう面での開発の進みも期待したいなと思います。
山口
なるほど。北島さんはどうですか、これからの課題も含めて、どのようなこと考えていますか?
北島
我々、技術開発を行ってきておりますけれども、技術的な課題は克服できつつあります。この下水検査を社会実装する上では、まず下水処理場から下水検体を採取する必要があるんですけれども、そのためには下水道を管理する自治体に協力を得る事が必要です。この下水検査を全国規模で実施していくにあたってはですね、国の協力も不可欠と言えます。下水検査から得られた結果を、最終的には感染拡大防止対策に繋げるということが必要ですけれども、そのためには、下水道部局だけではなくて、保健衛生部局の協力、それから連携も必要になってくると考えています。
山口
そうですね。本当にこれから様々な場所の協力、それから政治の力も必要だと思います。せっかく良い物が開発されたので、それをほんと社会実装に生かして頂きたいと思います。最後に橋本さんいかがでしょうか、一番伝えたい事いかがですか?
橋本
はい。あのやっぱり1年経って、色んな事が分かったり、色んな事ができるようになってきました。それは凄い良いことだと思いますし、ご関係の皆様に敬意と感謝を申し上げたいと思います。ただ、やはり感染対策の基本は変わらないので、いずれにしても、手洗いしっかりしてください、マスクしてくださいね、会食は気を付けてくださいね、ということは是非、引き続き申し上げていきたいと思います。
山口
はい、ということで、きょうは新しい下水検査、そして本当に大事なことですけど、手洗いとか、マスクとか、基本的なことも続けて、コロナに強い社会を作っていくことが大事だと思います。橋本さん、北島さん、どうもありがとうございました。
橋本・北島
ありがとうございました。
(2021年3月21日放送)
新型コロナの感染者が緊急事態宣言の解除後、増加傾向です。これから再拡大をどう防ぐのか。2021年3月21日『BS朝日 日曜スクープ』は、橋本岳・元厚生労働副大臣が生主演。変異株、変異ウイルスの「監視体制」を整備するために、下水から変異株を見つける「下水PCR検査」研究の最前線を特集しました。