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独自入手!!北朝鮮「国家経済発展5カ年戦略」全文
■実情示す数値を盛り込んだ「5カ年戦略」
山口
拉致問題を抱えている日本が今後の交渉の突破口を見出す上で重要となるのが北朝鮮内部の実情です。しかし、金正恩体制の根幹ともいえる経済の実態は、謎に包まれていました。きょうは、独自に入手しました内部文書を元に、知られざる北朝鮮経済の実情、そして、金正恩委員長が今後どう動くのか、ひも解いていきたいと思います。では、ゲストを紹介します。北朝鮮の動向を労働新聞や朝鮮中央テレビの報道から分析している日本大学准教授、川口智彦さんです。よろしくお願い致します。
川口
よろしくお願いします。
山口
そしてもう一方です。きょうは韓国からご出演頂きます。脱北者で北朝鮮の政治・経済などを分析している作家の金柱聖(キム・ジュソン)さんです。どうぞよろしくお願い致します。
金
どうぞよろしくお願いします。
山口
金柱聖さんは、日本生まれの在日朝鮮人。70年代の半ばに帰国事業で北朝鮮へわたり、29年間平壌で暮らした後、脱北。北朝鮮での生活の経験と合わせて、きょうはお話を伺います。こちらが、今回、番組が独自入手した2016年から2020年、つまりこの年末までの『国家経済発展5カ年戦略』の全文で、分厚いです。2016年5月に金正恩委員長が語ったことで、その存在が明らかになった5カ年戦略」。これまで具体的な目標や数値が分かっていなかったのですが、この内部文書には詳しく書かれています。
この内部文書がどういうものか。「はじめに」ではこう書かれています。「国家経済発展戦略は我が党の社会主義経済強国建設構想を実現するにおいて、現時点で最も重要な問題であるエネルギー問題の基本的な解決、食糧問題の解決、金属工業の活性化、知識経済型強国建設の跳躍台を設けて、経済発展の速い速度とバランスを保つのに貢献するため立てたものである」と、つまり経済のみならず、国家戦略の骨子とも受け取れます。
川口さんには事前に分析していただいたのですが、この文書どうご覧になっていますか?
川口
「はじめに」の部分だけであれば、北朝鮮が公開している報道によく出てくる文書なんですけど、これを読んでいくと、その具体的な数値とか、しかも、普通の北朝鮮報道では何%増えた、つまり現時点がいくつだとかはわからずに、何%増えたというものばかり出てくるんですけど、これは現時点がいくつで、そこから減ったとか増えたとか、そういうことが出ているのが一つですね。もう一つは、北朝鮮の経済が好調だった70年代の中盤から80年代と、2014年を比較しながらですね、全体として経済状況がその頃より悪くなっているという正直なというか、そういう内容が書かれていて、一つは驚きました。さらに、この種の文書は概して偽物とかガセが多いんですね。私も少しうがった見方をしながら読み進んだんですけど、読んでいったら、これです。
6軸の交流電気機関車に関する記述があったんですが、2カ所か3カ所ぐらいあったと思うんですけど、実は私はこの文書を読ませて頂く前に10月20日の労働新聞でこういう電気機関車ができたという報道を目にしております。まあすごいものができたんだなという印象でした。ところがですね、その内部文書なるものを読んでいたら、このことが書かれていて、やはり目標にしていたものを北朝鮮が作り上げていったんだ。ただこの電車に関していえば、自力で完全に走っているという映像は今のところ公開されていません。走っているような風景は出ているんですけどね。なので、もしかしたらこの戦略に合わせるために外側だけ作ったという可能性もあるんですけど、この5カ年計画というのですかね、戦略を一つ一つ着実に積み重ねようとしている北朝鮮の姿勢はわかります。
■“生産のピークは1980年代”
山口
なかなか外に出てこない具体的な数値、実像が見えてくる部分もあると思うんですが、まずはですね『国家経済発展5カ年戦略』と北朝鮮の動き、この流れを見ていきたいと思います。上山さんです。
上山
この「国家経済発展5カ年戦略」が示されたのは2016年5月6日、36年ぶりに行われた朝鮮労働党大会でした。金正恩委員長が「国家経済発展5カ年戦略遂行期間に党の新たな並進路線を掲げ、エネルギー問題を解決しながら、人民経済先行部門、基礎工業部門を成長軌道に乗せ、農業と軽工業生産を増やし、人民生活を決定的に向上させなければならない」と、核開発と経済発展の「並進路線」を進める上での課題と解決策を示すものとして登場しました。
2016年からの北朝鮮の動きを見ていきます。1月に2013年以来となる核実験を実行。9月にもこの年2度の目の核実験を行いました。2017年に入っても7月に初のICBM「火星14」を発射。9月には6度目となる核実験を行い、11月にはさらに改良されたICBM「火星15」を発射します。2016年、17年、北朝鮮情勢は非常に緊張が高まっていました。しかし、2018年に入ると一転して対話路線に転じます。韓国・平昌オリンピックへの選手派遣、南北首脳会談、そして米朝首脳会談へと流れていきます。この「強行から対話」に転じた5年間を串刺すよう存在したのが「国家経済発展5カ年戦略」です。2017年、2018年の「新年の辞」で金正恩委員長は「5カ年戦略」の遂行を訴えています。2018年4月に「並進路線」の勝利宣言と、今後は経済建設に総力を集中することを示しました。2019年の「新年の辞」でも「5カ年戦略」は触れられています。それが今年8月19日の朝鮮労働党中央委員会総会で「計画された国家経済の成長目標は著しく未達成」として、この5カ年計画がいわば失敗したことを認めたのです。
金柱聖さん、北朝鮮のこの5年の動きと5カ年戦略をどうご覧になっていますか?
金
まず通常から言うと、北朝鮮という国は党が牛耳っているという国なんです。それでこの5カ年計画というのは、つまり5年なんですけれど、この戦略を果たさないと8次党大会が行われないというような形になっているんです。だから7次党大会が開かれた後、この5カ年の間に何とかしてでもこの戦略を果たさないと8次党大会が行えない。だからやっぱりちょっと切羽詰まるというか、色んな意味で動きが激しかったんですね。ところが、結局できなかったので、これをできないと素直に認めている、そういう面も以前、金日成、金正日時代とは少し変わっているんじゃないかなと思いますし、ただ特徴と言えるのは、以前は国家計画、計画だったのですよ。ところが今回は戦略という形に変わっている。だから、党の『国家経済計画』じゃなくて、党の『国家経済戦略』なんです。戦略というのは、いつでも変更可能という、臨機応変の、そういった意味があると思うので、結局は8次党大会を開く前の、8次党大会の前までに、結局はやろうと必死に頑張ったけれどもできなかったと。この5年は私が見ていると何らかの変化はありましたけども、結局は、5カ年計画は口先だけで終わったんじゃないかという風にいえますね。
■1980年代に北朝鮮で生活して…
山口
ここからは具体的にこの内部文書の中身を見ていきます。この文書に書かれているのは「現状と目標」です。特に「現状分析」については、外部に発信する情報とは違い、厳しい状況を包み隠さず、反省の言葉まで書かれているのが特徴です。北朝鮮の全体の経済についてこう書いています。「我が国の国内総生産額は1980年代までは成長していたが1990年代に入ってからは大幅減となった」。さらに「国内総生産額は2002年~2014年の間に年平均105.7%に成長した。しかし最高生産年である1980年に比べるとまだ低いレベルにある」と1980年のような成長が出来ていないとしているんです。この文書では「最高の時」との比較もでてくるんですが、このように様々な品目で70年代から80年代が生産量のピークだったとしています。
きょうのゲストの金柱聖さんは、まさに70年代の半ばから2000年代まで北朝鮮で生活をされてきたわけですが、89年前後はピークだったという数値がここに記されているわけですが、実際に現地にいて、実感としてはいかがですか?
金
やはりその30年そこそこ北に住んでいましたけど、その30年のうちに一番、北で楽な時期がいつだったかっていうと、やはりまさしく80年代、89年度までのこの10年間だったと思えるんです。その当時はご存じの通り、日本との、日朝関係が良かったじゃないですか。色んな在日の方たちが短期訪問団とか、色々そういったお金の出口が多かったし、国内的にも当時の電力問題なんかを見ると、やはり北朝鮮の主な電力源といえる火力発電所以外にも、中朝国境地域にある、これも昔、建てたという水力発電所なんかも結構変わっていたところもあり、あの時期だけは北朝鮮で電力が余ってはなかったけども、それなりに、今のような停電はなかったわけなのですよね。それに石炭の需要自体も、当時はすでに中国の90年代のようにバンバンバンバン輸出をしてない時だったので、やはり80年代という時はピークだと思いますし、もう一つは何かというと、80年代に金正日総書記が結構、建設ブームを起こしているんです。平壌に色んな建物を作りまして、結局はその当時はいわゆる文化・経済部門でもまだ苦労はしてない時だったんじゃないかと思います。
山口
この5カ年戦略なのですけれども、こうした具体的な目標が書かれています。「国内総生産を年平均8%成長させ、20年には14年実績の1.6倍にする」。GDPを毎年8%成長させたいということなんですが、実際は2017年、2018年とマイナス成長になってしまっているわけなんです。
木内さん、この毎年8%成長を目指すとしていたのですが、かなり強気な目標だったといえますよね。いかがですか?
木内
新興国の平均の成長率は5~6%ぐらいだと思うので、新興国という分類の中でも8%っていうのはかなり例外的に高いということですね。それは、すごく生産性が上がっているとか、人口がすごく爆発的に増えているとかですね、そういう状況でないと、なかなか安定的に8%っていうのは、達成は難しい。実際は、色んなインフラが老朽化しているということですし、経済制裁もある、貿易も十分にはできないということを考えると、おそらく0%とかマイナス成長というのがトレンドでもおかしくない経済なのかなと思います。
■“食料供給の正常化ができていない”
山口
北朝鮮が「金正恩体制」を維持していく中で、重要なのが食料問題です。「厳しい」という情報はありますが、どのくらい厳しいのか、具体的にはわかっていませんでした。内部文書には「食料事情」について、詳しく書かれています。上山さん。
上山
国民の食料を支える穀類について「穀類に対する需要に生産が間に合わなく、住民の食料供給の正常化ができていない」と厳しい状況を赤裸々につづっています。さらに「1979年に657万6000tだったのに比べて2014年には614万tで93.4%の水準である」と、穀類の生産量も1979年がピークで、現在減少しているとしています。さらに「農地面積も減っている」として1979年180万町だったのが、2014年は177万町に減少、1町は3000坪ということです。農地の減少について文書では「干潟の開墾で農地を増やしているが、水害と様々な要因で減少している」としています。他の食料についても、過去最高の生産だった年と比較したデータがあって、2014年は肉が71%、卵が50%、食用油は6%まで落ちて減ってしまったと。そして食料問題をどう解決するか、このように目標が書かれています。「主体(チュチェ)農法通りの科学技術を用いた農作物で、穀物の生産量を2020年には800万トン、ひいては900万~1000万トンにする」「科学技術を用いた農作業に尽力し、町歩当たりの穀物の生産量を稲作地帯では8トン以上、中間地帯と山間地帯では6トン以上にする」「肉は25万トン、水産物150万トンが目標」。このように具体的な目標を掲げています。
川口さん、金正恩委員長が食料事情を改善するため、何かを変えるような、新しい試みは北朝鮮メディアで報じていましたか?
川口
金委員長の農業部門での現地指導などを見ていますとね、やはり副食物、例えば肉だとか魚それから果物、野菜ですね、こういった物の部門を指導することが多くなっているんです。これはあくまでも私の見立てなんですけど、おそらく金正恩時代に入ってからですね、カロリーベースでの食料は確保できる状況になって、そして、人民の食卓を豊かにするために、こういったものを積極的に開発してですね、人民に供給しようという姿は金委員長の動きからは見て取れます。
山口
この穀類を年間800万t生産するという目標。この「国家経済発展5カ年戦略」は8月に事実上断念されましたが、その8月から9月にかけてこのようなことがありました。4つの台風が北朝鮮に上陸し大きな被害をもたらしたとされています。金正恩委員長が視察する様子も労働新聞などで報じられましたが、被害がかなり深刻である可能性があります。
こちら、東京大学生産技術研究所の竹内渉教授が衛星からのレーダーで植え付け面積と収穫面積を比べたところ、こちら白いところが農地の面積を示していますが、2020年6月と8月で比較すると白いところが減っているのがわかります。竹内教授によりますと、植え付けをしたけども稲が十分生長しなかった割合が25%程度あったと推定できるということです。8月に農地が浸水しているような様子がレーダーで捉えられていて、その影響で収穫できなかったのではないかとしています。つまり今年、農作物が深刻なダメージを受けているということです。金柱聖さん、
■「今年冬は厳しい、米が高騰」「農業は言及せず」
山口
この冬、北朝鮮の食糧事情はかなり厳しくなるのではないでしょうか?
金
実際に向こうからチラチラと伝わってくる情報によると、北朝鮮では一番厳しい時期は冬なんですね。この12月から始まって明くる年の3月までどうやって生き延びるか。生き延びるという表現はちょっとなんですけど、この寒さと冬の時にこの穀物がなければ、結構厳しい冬なんです、毎年。ちょっと付け足したいのは、先ほども出ましたけど、1970年代に657万t生産したんですけど、その時は国家供給(配給)が正常化されている時なんですね。ところが、2014年には614万tなんだけれども、その時にはすでに北朝鮮の国家供給というのは止まって30年、20年近くたっていると。だからこれだけ見ても、この数字自体が偽り、非現実的な数字ではないかと思えるんです、これを僕は言いたいんですね。だから似ているような生産量ならば、なんで70年代の時の、人民たちに対する食料供給の水準しかないのかということを言いたい。そして冬、最近の話によると、今年は水害に制裁にコロナ、3重苦のために、穀物の、特にお米なんですけど、お米の価格が高騰しました。中朝国境沿いの地域から聞こえてくる話によると、平均、お米1キロ北朝鮮のお金で4500ウォンなんですね。参考として1ドルが8000ウォンだと考えて下さればいいと思います。その4500ウォンがいきなり1万、2万と上がったらしいんですよ。こういった異常なインフレを当局が抑えている。党の方で、市場で4500ウォン以上で売ると当局が無償で押収しますと、お触れを出して、急遽高騰する価格を食い止めたという話も流れてきています。それから、今回、水害被災地ではやっぱり餓死者が出ているという噂も流れております。そんな状況なので、この冬はかなり厳しいと思えるし、毎年、北朝鮮の人たちは冬には食料の半分を白菜で賄っている。キムチなんです。その野菜すらも今年はそんなにないと聞こえてきますので、とりあえず今の状況では、結構つらい冬を越さなければいけないなと思います。
山口
なるほど、川口さんも最近気になったことがあったそうですね?
川口
北朝鮮のテレビを見ていると「80日戦闘」に関する番組をやっていて、18日に朝鮮中央テレビで「80日戦闘の日々を振り返り」こういう番組が放送されました。その中では工業部門、セメント、工作機械、製糸、糸ですね、これの部門で国家経済発展5ヵ年戦略を遂行したと言っておりました。ところが一方で、コンバインなどが動いている様子は見せてはいたんですけども、農業部門での成果について具体的な言及はなかった。もちろん「80日戦闘」の時期は、すでに農業はもう収穫が終わっている時期ですから何もできないわけなんですけども、今年に関しては、やはり農業部門が自然災害で振るわなかったのではないかということが伺えました。
■「“脱中国”日本にとって交渉カード」
山口
北朝鮮のこの内部文書、「国家経済発展戦略」なんですが、食料やエネルギー以外にも、重工業や軽工業などあらゆる分野について書かれているのですが、このような言葉がありました。「2014年国別の貿易額の構成を見ると、中国が71.6%、ロシア4.2%(その中、極東地域1%),ドイツ0.8%で中国との貿易が絶対的な割合を占めている」。そして、合弁会社の項目でも「中国一辺倒から脱することができていない」と問題視しているんです。さらに「対外貿易を活性化する」という項目でも「国の対外貿易の方向を中国一辺倒から脱し、ロシアや東南アジア、中近東をはじめとする世界の国々や地域に拡大する」。やはり、中国一辺倒から脱出したいと書かれています。ただ、川口さん、一方で去年の北朝鮮の貿易というのは対中国が95%を占めていると聞いております。やっぱり制裁もある、水害もある、中国に助けを求めるしかないという実態があるのか、このあたりいかがですか?
川口
現実的にはですね、やはり中国が北朝鮮を一番必要としている国になるわけですから、お互いに、もたれ合いやすいところはあります。ただやはり、金正恩時代の初めのころは中朝関係あまり良くなかったですから、そういう経験からして、またお父さんの時代、おじいさんの時代はソ連と中国を天秤にかけて、うまいことやってきたので、そういう中でやはり中国一辺倒にならないように、というようなことを言っているのではないかと思います。
山口
そういう目標あるんだけど、なかなかうまくいかないと。
川口
現実が許さないということです。
山口
木内さんは、この北朝鮮、中国依存から脱却しようしているわけですが、なかなか,実態が伴わない、このあたりいかがでしょうか?
木内
貿易面で言うと脱中国依存。これは一種の悲願かなという風には思います。北朝鮮の製品を中国に輸出すると、相当、安く買いたたかれるという話も聞きまして、さらに中国からの製品が入ってくることで北朝鮮の産業が育たない。産業の高度化が妨げられる。そういう面もやっぱりあると思うんですよね、それからすると、いろんな国と貿易を分散してやっていきたいという願いがあってですね、これこそは日本としては、その北朝鮮側と交渉していくための切り札、カードになっていくのではないのかと思っています。
■バイデン政権発足へ 北朝鮮“沈黙”の意味
山口
そして、アメリカとの関係でも考えてみたいんですが、いよいよ来月の20日、バイデン新政権が誕生するという流れですが、金正恩委員長はこのバイデン新政権について具体的な発言をまだしていないんですよね。これはまず、金柱聖さんから伺いたいんですが、どうでしょうか。このバイデン政権が発足する前後、どのように北朝鮮が出てくるのか、もしくは挑発的な行動があるのか、どのように見ますか?
金
私の個人的な考えなんですけど、まず北朝鮮のシナリオは2通りではないかと思います。アメリカ大統領の就任式前に党大会を開くか、就任式が終わった後に党大会を開くか、この2つのシナリオなんですけど、今のところを見ると、就任式の前に党大会を開いて、アメリカに対する、バイデン新政権に対する北朝鮮の立場を示すのではないかと思います。その後に、大統領就任式でバイデン氏の発言によって威嚇する、ミサイルを打つなり行動に出るか、でなければ大統領就任式のバイデンの発言を聞いた後に党大会を開き、それによって今後の政策を変えていくのかでないのかなと思いますけど、個人的に言うと、この2つのうち、やっぱり就任式前に党大会を開いて、まずは自分たちの考えを先に示すのではないかなと思います。バイデン氏の発言によってはミサイルを打つか、違ったやり方で威嚇をするのではないのかなと僕は思っています。
山口
川口さんはアメリカ、バイデン政権に対して金正恩委員長どう出るかいかがでしょうか?
川口
1月にはですね、2つの大きな行事が北朝鮮では予定されています。上旬に第8回党大会を開く、そして下旬には最高人民会議を開くと、言っているわけですね。そうすると、バイデン大統領の就任式を間に挟んでということになると思うんですけど、2つの大きな会議がありますから、その中で対米戦略を、何かバイデン大統領の発言を受けて出してくるのでなないかと思います。ですから、実際に北朝鮮が行動に出るとなると、例えばミサイル発射などやるのであれば、2月の金正日総書記誕生日前後かなという風に見ておりますけど、ただその時に必ずやるということでもないかもしれません。もう少し、アメリカの動きを見極める可能性はあると思います。
■北朝鮮にどう臨むか!?日本の戦略
山口
10月に番組に出演しました、拉致被害者の蓮池薫さんは日朝交渉についてこのように話していました。「金正恩委員長は5カ年戦略を達成できず国民に謝罪までしている。次の5カ年の経済政策が失敗したら、自身の将来に大きく関わってくると思う。日本は重要な役割を果たせると北朝鮮にすり込むことが大切。日本は北朝鮮が交渉に応じるのを待つだけでなく、拉致解決の重要性と合わせて、北朝鮮に対し積極的にメッセージを送っていくことが必要」。金柱聖さんは今、どう動くべきか、いかがですか?
金
北朝鮮に関しては、今は何もしない方がいいんじゃないのかなと思いますし、まずはコロナ対策の方に一生懸命頑張ってほしいと個人的には思っています。ただ、今ですね、北朝鮮の外務省のサイトには結構、日本をなじっている文が結構出ているんですね。ということは、北朝鮮は早くも反応を示している。日本側に関して、いわゆる日本の前の総理のこともそうだし、今の総理のこともそうだし、何だかんだ、何だかんだ言っているんですね。それを見ると、やはり北朝鮮は日本、対日関係に関しては全然、無関心ではないという風に思いますので、今はまず、アメリカとの北朝鮮の問題がどう出るかを見た後に日本は動くべきかと、私は思っています。
山口
川口さんはこのあたり、いかがでしょうか?
川口
今、金さんが言われたように、北朝鮮は日本の特に敵基地攻撃能力、あれについて、随分、辛辣な批難をしています。じゃあ日本が何をやるべきかということなんですけど、日本は今、現状はですね、核とミサイル、つまり米朝関係にすべてが結びついていますから、日本独自の動きはなかなか難しい。ただ、米朝関係が動いたときに迅速に対応できるような体制を、日本国内のみならず米国との間で十分に調整を取っておくということが必要だと思います。
山口
最後に木内さんいかがでしょうか?
木内
やっぱり日本は拉致問題を抱えているので、ずっと待っているわけにもいかないと思うんですよね、バイデン政権は戦略的忍耐かもしれませんけど、日本は何らかの形で交渉していくという姿勢が重要だと思うし、(北朝鮮は)脱中国を狙っているわけですから、そこはカードになるのかなという感じがします。
(2020年12月20日放送)
日本人拉致問題解決の突破口を見出すためには、北朝鮮の実情を把握しなくてはなりません。『BS朝日 日曜スクープ』は、金正恩委員長が未達成を認めた、2016年からの『国家経済発展5カ年戦略』全文を独自入手し、2020年12月20日の放送で特集しました。1980年代がピークのまま経済発展から取り残された、北朝鮮の窮状が浮かび上がってきます。