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#147

蓮池薫さん「首脳会談、待つだけでなく…」拉致問題解決の訴え 

横田滋さん、有本嘉代子さん、拉致被害者家族の死去が相次ぐ中、蓮池薫さんは「日本の意思を北朝鮮が見ている。今が最も大事な時期」と改めて拉致問題解決を訴えています。2020年10月18日『BS朝日 日曜スクープ』で蓮池薫さんは、菅総理が表明した「無条件での首脳会談」に賛同しつつ、「提案して、応じてくるのを待つだけでなく、首脳会談にどうやって持ち込むか、知恵を絞らなくてはならない時期に来ている」と指摘しました。

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蓮池薫さん「北朝鮮に事前に…」拉致解決へ提言
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帰国17年 蓮池薫さんと今年も考える!!拉致問題の今
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蓮池薫さんと考える!!拉致問題解決の突破口

■「北が見ている。今が最も大事な時期」

山口

北朝鮮による拉致被害者の帰国を実現させるために今、何が必要なんでしょうか。蓮池薫さんをゲストにお迎えして考えていきたいと思います。一昨年は私が、新潟県柏崎市にお邪魔をしました。そして去年は、蓮池さんにこちらのスタジオにお越しいただきましてお話を伺いました。

今年は新型コロナ対策ということで新潟県内からのリモートでのご出演となります。蓮池さんどうぞよろしくお願い致します。

蓮池

よろしくお願いします。

上山

蓮池さんは1978年に北朝鮮に拉致されまして2002年に帰国しました。現在は新潟産業大学で教鞭をとるかたわら、拉致問題解決を呼びかける執筆や講演活動を続けていらっしゃいます。

山口

そしてスタジオには、もう一方です。北朝鮮政治がご専門の慶應義塾大学准教授、礒﨑敦仁さんです。どうぞよろしくお願い致します。

礒﨑

お願い致します。

山口

拉致被害者帰国のためにまさに全身全霊を注いで活動されてきました横田滋さん、有本嘉代子さんが残念ながら今年、お亡くなりになりました。そして蓮池さんは、拉致問題の解決への思いをこのように語っているんです。「日本政府、国民の拉致解決への意思を北朝鮮は見ている。今が最も大事な時期だ」と。蓮池さん、北朝鮮に対してやはり、日本全体の意思を明確に示すことが今こそ、重要になっているということなんでしょうか。

蓮池

はい、そう思います。まず親の世代の方々が次々に亡くなられていると、北朝鮮はこれで拉致問題は鎮まっていくんじゃないかという期待を持つ可能性が高いです。また、コロナ等で日本でも救出運動等が行えないような状況もあります。こういった中で北朝鮮に改めて、強い日本政府と国民の意思を見せることがやはり非常に重要な問題なのかなと思いますね。

上山

そういった思いもあるから蓮池さん、講演活動をなさったり、取材対応などもしていらっしゃるわけですね。日本全体として一丸となるんだということを北朝鮮に見せるとことがやはり今が最も大事だということなんでしょうか。

蓮池

そうですね。現在親の世代で生存されてる方2人になってしまいました。その方々が御子息に会えるようにすることが、拉致問題でも非常に大きな、核心的な問題かと思います。そういう非常に時間が切迫していると、そういう事情を考えた場合においても重要な時期かなと、そういう風に思います。

■軍事パレードでの演説「計算された演出」

山口

本当に私たち一人一人がしっかりと関心を持って見てるんだぞという意思表示が大事だということになるわけです。きょうは北朝鮮の現状、そして拉致問題の解決の2つのテーマを考えていきたいと思います。まずは北朝鮮の現状についてです。現在、北朝鮮は、新型コロナ、水害、国連の経済制裁という3つの困難に直面しているといいます。

上山

そういった中、北朝鮮は朝鮮労働党の創建75年を迎え、大規模な軍事パレードを異例の夜間に行いました。金正恩委員長は演説で「わが人民のあまりにも熱い信頼を受けるだけで、ただの一度も満足に応えることができず、本当に面目ありません。私はこの国を導いていく重責を担っていますが、まだ努力と真心が足りず、我が人民は生活上の困難を脱することが出来ずにいます」涙をこらえるような様子で語りました。

蓮池さんは、金正恩委員長が国民に対して「面目ありません」と、国民に謝罪したとも受け取れる発言をしたことを、どのようにご覧になりましたか?

蓮池

その部分だけ見ると、そのように受け取れるわけですけども、私は、非常に計算された演出だったんじゃないかなと。演説の全体を見ますと、新しい金正恩の時代、新しい金正恩の挑戦というものを誇示する。そういう一つのイベントだったのではないかと。韓国でもそういう見方がありますけど、私もそう思います。つまり、経済的に苦しい状況にはありますけども、演説の中では、すぐそのあとには、自画自賛するような内容、コロナの対策であったり、軍事力の強化であったり、それをすかさず入れておりますし、また、5年間の経済政策失敗について謝罪はしていますけども、それにも関わらず、国民は私についてきてくれたという話をしているんです。こういう状況で求心力を強めようとしているというのが1点。もうひとつがですね、この演説の中で、先代である金正日の世代について、その功績を一切口にすることはなかったんですね。まさに自分の時代が来たんだということを誇示する場面にしたと。そして前の先代と私はスタイルが違うんだという、そういうところも見せつけたんじゃないかなと、そういう風に見ております。

山口

そうすると金正恩委員長が、やっぱり一歩踏み込んで自分の姿を見せていることだと思われますが、それに対して北朝鮮の国民は、そういう新しいリーダー像をどう捉えていると思いますか。

蓮池

国民全体といっても色々な考え方があり、私はもう分化してるんじゃないかなと思うんですね。いわゆる今の経済状況、生活等に非常に不満を持っているんですね。自分の経済活動等、色々制限がある。そういうことからして、今の体制に不満を持っている人もいる一方で、今の体制に対する信念というか、そういったものが非常に強い、そういう階層もまだ少なくはないかと思います。一般的にこういう謝罪という場面を見れば、その時の感情としてですね、感動したり、ついていこうと思ったりするかもしれませんけども、やはり本来、不満のある人はある程度一定の時間が経つと、冷静になって見ればですね、やはり今の状態はおかしいんじゃないかと。そういう風に分化されいるのかなと思います。

山口

ということは、あのこの夜の先日のパレードの時に、国民が歓喜するような映像が流れましたが、それはあくまでも表向きで色々な考えの方がいるということですね。

蓮池

そうですね。群集心理といいますか、周りが「わぁー」って言って感激をしたり、興奮しますと、自然にそのようになる場合があります。しかし、現実の生活に戻ってみた時にどう思うかというのも問題じゃないかなと考えます。

山口

礒﨑さんはここまでの金正恩委員長の演説について蓮池さんの分析があったんですが、礒﨑さんは、どうご覧になってますか。

礒﨑

国民におもねるような発言、「感謝する」「ありがたい」といった発言が12回出てくるわけですね。こういった傾向は、金正恩委員長の一貫した演説への傾向として見られるんですけども、今回は特にそれが強かった。つまり、金正恩委員長は、人民に対しては低姿勢を演出するわけですが、一方で幹部たちに対しては非常に厳しい。こういうやり方をとってきているように思います。いずれにしましても、今回、経済がうまくいっていないことは、対外的な要因ですね、つまり、経済制裁にコロナに水害という対外的な要因、環境要因で説明ができるので、謝るというのは、金委員長としてはやりやすい状況であったようには思います。

■軍事パレード 夜間に実施した意味

上山

今回、軍事パレードについて気になったのが、深夜に行われたということだと思うんですよね。蓮池さん、北朝鮮では電力不足に悩んでいると聞きました。今回は異例の夜間の軍事パレードでした。非常に電力を使用すると思うのですが、どのようにご覧になりましたか。

蓮池

電力に関しては、昼間はいろいろな国防・企業所等で生産をするということで、そのときは電力を分散させて使っていました。だから、ある工場が時間割で休んで、その間に違う他の工場で生産をすると。夜ですと、そういう活動がほとんどないわけですから、この広場に電力を集中させるということは、思っているよりは可能なのかな。かえって電力を集中させやすい時間帯ではあるのかなというふうに思います。

山口

1977年11月、横田めぐみさんが北朝鮮に拉致されて今年で43年になります。拉致問題解決の突破口はどこにあるのか。蓮池薫さんは、北朝鮮のある異変に注目しています。引き続き、お話を伺います。先日行われた軍事パレードなんですが、従来よりも大型化されました、新型のICBM、大陸間弾道ミサイルや、新型SLBM、潜水艦発射弾道ミサイルが登場しました。

上山

木内さんは、軍事パレードや金正恩委員長の発言についてどのようにご覧になりましたか?

木内

発言については、すでに蓮池さんがご説明のように、いろんな演出と狙いがあるんじゃないかと思います。ただ、国民の生活が非常に困窮していて、追い詰められているということは確かなんだろうと思います。そこに対して、日本からの支援がなんらかの拉致問題解決の切り札にならないかと、これは後に続く話になると思いますが、そういうことも感じられます。一方で、軍事パレードでは巨大なICBMが出てきて、引き続き核開発は前進させているということなんですが、これ自体が経済を悪化させるわけですね。ある推計だと、昨年北朝鮮が、軍事全体ではなくて核開発だけに使ったお金というのは6億ドルくらいということで、GDP経済規模でいうと3%半ば以上ということですから、相当なお金を使ってですね、これも国民の生活をかなり圧迫させているわけですね。そういった意味では、3つの困難、3重苦とおっしゃいましたけど、実は4重苦になっているということで、国民の生活を心配して涙を流しながら、一方で核開発は進めるという、若干矛盾しているところがあるわけですけども、背景には、核を持ってないと、アメリカとちゃんと交渉できない、あるいは体制維持できないという考えがあるわけなので、そこの考え方を変える必要はある。簡単ではないんですけど、そこを変えないと核問題と拉致問題、なかなか解決に向かって大きく動けないということだと思いますので、もちろん北朝鮮はアメリカの方に向いているわけですけども、日本が間に立って、北朝鮮の、こういった核によって守るという考えをなんとしても変えるようなことができないかなと感じております。

■蓮池薫さんが注目する金委員長視察の画像

山口

北朝鮮は8月末から9月にかけて3つの台風が直撃し甚大な被害が出ています。

上山

蓮池さんが特に注目している画像があるというんですね。それがこちらなんです。金正恩委員長が台風の被害にあった被災地を視察しているシーンを捉えたものですが、蓮池さんは、この画像から北朝鮮の食糧事情が見えてくると指摘しています。どういうことですか?

蓮池

私も1990年代の頭、前半によく見てショックを受けたというか、非常に悲しい思いになったことなんですけども、稲の稲穂があまりにも小さくて直立しているんですね。稲というのはこの時期に黄色くなれば当然、穂先を垂れるわけですけども、真っすぐ立ってその田んぼの地べたが見えるほどになっていると。もちろん、これは水害を受けたとは言いますが、黄色くなってこの時期になれば、それなりに稲穂が大きくなっていなければならないんですけども、このままになったとすると、平年の生産高の半分以下くらいに落ちているんじゃないかなというふうに思われるわけです。ここがですね、穀倉地帯であるからなおさらそういう気が致します。

上山

つまり、これを収穫したところで、ほとんど食糧にならない、半分くらいしか食糧にならないんじゃないかということですよね。これ北朝鮮の方々そういった状況でどうやって生きていくというか、何を食べていく冬をしのぐことになるんでしょうか。

蓮池

私が当時聞いた話では、食糧難になると配給も少なくなる、ほとんど無くなるわけですから、あるだけの食糧、例えば普段の3分の1なり半分でもあればですね、それを他の草だとか色んなものを混ぜておかゆにして、腹を満たすと。どんどん栄養を失って痩せてはいきますけども、そうやって生活を維持してたというのが、私が覚えている92年、93年あたりで、その後大飢饉が訪れたということです。

山口

金正恩委員長は今年8月、2016年に打ち出しました経済発展5カ年計画が達成できないことを事実上認めたんですね。未達成を認めるというのは異例ということなんです。さらに今月5日の朝鮮労働党政治局会議では、来年1月の党大会に向けて、国民を総動員して経済建設などにあたる「80日戦闘」に取り組むことを決めました。蓮池さん、北朝鮮が自力で経済を立て直すということが難しいのか、それともまだできるのか、ここはどうお考えになりますか。

蓮池

完全に自力で、というのは、全く考えられないと思うんですね。彼らの言う「自力更生」というのは、あくまでも中国との関係を維持しつつ、制裁の中でもそれをくぐって中国から色んな物資が入ってくる、支援が入ってくる。それを自力と言っているんだと思います。ただ、その「自力」という、中国の支援の下でやっていくというのは、現状維持、若干の成長はあり得るとは思いますけれども、今、国民が求めているような生活向上と言ったら、やはり、そういう状況では達成できない。やはり国際社会との経済協力、さらには中国も、制裁が解除されない限り大規模な援助できないと。そういう中で、非核化、または非核化を進めるのは、国際社会、アメリカとの関係改善、そういう方向に行かざるを得ないのかなと。来年の頭にある党大会、で新しい5カ年計画が出てくるかと思うんですが、その「自力更生」でこの5年間失敗したわけですので、新たな5カ年計画においては、ただただ、今までの「自力更生」の経済立て直しというのは、彼らも無理がある、限界があると考えてるんじゃないかなと、そういう風に思います。

■「次の5か年計画、失敗したら、金委員長の将来に・・・」

山口

北朝鮮は「自力更生」が非常に難しくなっている、という分析だったんですが、ということは、北朝鮮がそれだけ弱っているということですよね。ここは、拉致問題がある日本としては、そこを打開していく、1つのチャンスなのではないかと思うんですが、そこはどうお考えになりますか。

蓮池

まさにそう思います。当面は食糧難であったり、コロナ対策等の問題で、国際社会の援助を極力、今、避けている状況ではありますけども、いつまでもそういう強気なことは言っていられないんじゃないかと思います。もう1点はですね、当面のそういう危機を克服するだけじゃなくてですね、次の5年間は、謝罪までしてるわけですから、次の5年間の経済政策が失敗したら、これは金正恩委員長の将来に大きく関わってくると思うんですね。ですので、これを成功させるためには、日本が非常に重要な役割をしてくれるだろう、または、それを期待したいという、そういう事をすり込んでいけばですね、日本という位置づけを、なんて言いますか、関係改善に進むだろうし、その過程で日本が強く求めてる拉致問題についても応じるしかないと、いう状況になってくるんだと思います、すりこんで。

山口

蓮池さんね、そうなりますと、仮に北朝鮮が日本に頼ってくるとすれば、日本に何を求めてくるという風に思われますか。

蓮池

やはり彼らは国交正常化、そして過去の清算、更には日本からも借款とか技術援助とかそういったものを求めることになるかと思うんですね。だけどそれはですね、あくまでも米朝関係が進んで非核化が進む中での話であって、私の考えでは、当面すぐそういう状況に1年、2年ではなかなかそういう所にいかない可能性の方が高いかなと思うので、その前段階において、何とか拉致問題の突破口を開いていって欲しいなと、そういう風に考えております。

上山

米朝関係があってそこに日本もあるという難しい状況の中ですけれども、礒﨑さんはどういう風にご覧になっていますか。

礒﨑

北朝鮮が非核化に対して進まないと経済制裁も解除されない、という米朝関係の構造的な問題があります。しかも、米朝関係が最優先であって、その後に他の国との問題が出てくると北朝鮮は考えている。しかも、韓国の文在寅政権は、北朝鮮に援助したくてしたくてしょうがないわけですよね。ですから援助してくれるところが日本よりもさらに近いところにある中で、どうやって日本が入っていくかのは、なかなか難しいのですが、タイミング待ってるわけにはいかないので、どんなタイミングであってもチャンスとして掴んでかないといけないですね。

■「帰った人がいるとわかった以上は・・・」

山口

拉致問題の解決に向けてですね、日本がどう取り組むべきなのか、蓮池薫さんから色々お話を伺っていきたいと思うんです。政府が北朝鮮による拉致被害者として認定したのは17人なんですけれども、このうち蓮池さんを含む5人の方は既に帰国を果たしています。しかし、残りの12人については帰国ができていないままです。

蓮池さん、今、取り残されている拉致被害者の方々はどんな思いで今を暮らしてらっしゃると思いますか。

蓮池

私が向こうにいるときは、私はその時、北朝鮮が拉致を認める認めないまでも我々の存在を表に出して日本との交渉のカードにするようなことは考えられなかったわけです。ですので、帰れるという事を忘れて現状に生きていくしかないと、割り切って暮らしていたのかなと。それでやってきたのかなと思うんですが、我々5人が一時帰国、その後永住帰国したわけですけども、そういうニュースは間違いなく伝わっております。それはもう帰れるんだと、帰った人がいるんだということが分かった以上は、もう割り切ることなんてできないわけですし、なんとか帰りたいという思いがどんどん募る一方で、それが今は非常に苦痛として、日々の生活の中で押しつぶされそうな思いで暮らしているのではないかなと危惧しております。

山口

やっぱりそう考えますと、本当にスピードが大事だということになってくると思うのですよね。安倍政権に続いて、菅総理大臣も拉致問題を最重要課題としたのですが、まさにスピードが求められているのです。

上山

改めて今年の6月5日、北朝鮮に拉致された横田めぐみさんの救出に生涯を捧げた父・滋さん亡くなりました。87歳でした。そして2月には有本恵子さんの母・嘉代子さんが亡くなりました。94歳でした。いまだ帰国していない、政府が認定している拉致被害者家族の親世代でご存命なのがめぐみさんのお母さん早起江さん84歳と有本明弘さん92歳、このお二人だけになっているのです。

山口

蓮池さんは、横田滋さん、有本嘉代子さんが亡くなられたことをどのように受け止めてらっしゃるのでしょうか?

蓮池

それは本当に胸の痛いことで、拉致問題、日本政府にとってもそうですけども、取り返しのつかない事実として残ってしまった。これをもう元に戻すことはできないわけです。ただ亡くなられても、やはり今、北朝鮮で苦しんでいるであろう娘さんたちが無事日本に帰ってくることを願いながら逝かれたのではないかなと。ご遺志ですので、我々がそれを受け継いで、何とか日本に取り戻すという思いをですね、新たにしております。

■横田めぐみさん 帰国への思い

山口

蓮池さんは、北朝鮮にいらっしゃる時に横田めぐみさんと同じ地区で7年ほど暮らしていたことがあるとおっしゃっていました。これはめぐみさんの色々なお姿を見ていらっしゃったと思うのですけれども、その様子というのは滋さんには色々お話をされたのでしょうか?

蓮池

はい、しております。ご家族の方々に。

山口

めぐみさんのお話を蓮池さんがされた時の滋さんの様子はどうだったのですか?

蓮池

向こうで家族を作って、そして娘さんを産んで幸せに過ごしているようなお話については、ホッとされるような優しい顔で笑顔を見せてくださいましたが、少し病気があったり、というようなお話をする時には、本当に心配そうなお顔で、話す方も非常に気を遣ったというか、そういう本当にお父さんとしての表情を見ることができました。

上山

蓮池さんご自身は横田めぐみさんについて、最も印象に残っていることといえばどんなことなのでしょうか?

蓮池

非常に聡明な方ですね、韓国語がですね、向こうでは朝鮮語ですけれども、ご主人は韓国人、拉致被害者ですけれども、彼が言うには、完璧にネイティブな発音、もちろん日本語も両方完璧にやっていたということが印象深いのと、もう一つはですね、翻訳等もやりますので、日本の検閲、チェックを受けたものではありますけれども、そういったものを見る中で、日本については色々な写真を切り抜いて、ノートに几帳面に貼っていたのを思い出します。つまり、日本に対する非常に強い思い、帰国したい思いが非常に強い、それが表に出ていたなと。その二つが今でも本当に強い印象として残っております。

上山

ですから、おそらく今も日本に帰るぞ、帰りたいという思いをもって、めぐみさんは北朝鮮で暮らしていらっしゃるっていうことですよね?

蓮池

その思いだけで今、耐えているのではないかなというふうに思われます。

■無条件で首脳会談「提案しても、待つだけでなく・・・」

山口

政府の拉致問題対策本部は、16日、動画投稿サイト「YouTube」に公式チャンネルを開設しました。その中で菅総理は「私自身、金正恩委員長と条件を付けずに会って、拉致問題解決のために、活路を切り開いていきたいと考えています。日本政府としては日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、国交正常化を目指すものであり、この方針に変わりはありません」と語りました。蓮池さんはこの菅総理の対応、どうご覧になっていますか?

蓮池

条件は付けずに、首脳会談を行うという提案には賛成です。ただですね、提案して、そして、向こうが応じてくるのを待つということでは、今までの経緯からして、なかなか実現しないのではないのかなと。いかにして、その交渉、首脳会談に持ち込むか、そこに今、知恵を絞らなきゃならない時期が来ているのかなというのが1点とですね、それと先ほども申し上げましたが、3点セット、核・ミサイル・拉致。これは最終的な合意として、国交正常化にいくという話で、これも賛成と言いますか、支持をするのですけれども、ただ、米朝が一体これからどうなるかという、非常に時間がかかるんじゃないかなというところから、この流れ全体のステップを踏んでいくということでは、あまりにも残された方々に酷なんじゃないかなと。その前に何か手立てを打ってですね、拉致問題解決に繋げていく、そういう新たな展開を作っていって頂きたいなという思いが非常に最近、強いです。

山口

そうですね、何とか突破口を開かなくてはいけないわけなんですが、木内さんから蓮池さんにいかがでしょうか?

木内

日本だからこそ、これが北朝鮮の心を揺さぶって拉致問題の解決につながるという、ピンポイントで何が本当に、北朝鮮としては日本に望むものなのかというのをですね、繰り返しなんですけども、もしお考えあれば教えて頂きたい。

蓮池

中国に対しても、あまりにも依存するということは北朝鮮は望んでないのではないかと。いわゆる東北四番目の省に、つまり四番目の、四省の1つになるという話もありますけども、そういう意味では、あまり中国に従属するような形をこれ以上深めたくない。一方、韓国というのもお互い体制競争をしてきた国で、吸収するかされるかという、非常に熾烈な政治的な対立があります。今後ですね、経済が、支援が拡大していけばいくほどですね、そういう政治的なデメリットというのを感じざるを得なくなる。そういう意味では日本は無色、色がない支援となりえると思います。それから北朝鮮の真偽を知るという意味では、かなり日本政府も情報を集めていると思います。ただ私がもう一つ期待したいのはですね、やはり今、北朝鮮に対して圧倒的影響力、それから情報等々を握っているのは中国だと思うんです。中国は米中関係の対立の中で、日本との関係改善に秋波を送ってきております。ですので、日本もそういうものをしたたかに利用する。これは、もう中国に一辺倒という話ではなくですね、アメリカとの関係を維持しつつも中国との関係を利用しつつ、日本の国益を満たしていくという、解決していくという、そういうしたたかな外交が今、求められるんじゃないかなというふうに思います。

山口

そのあたり、この後の動きが本当に日本にとって大事になってくるわけですけども、蓮池さん、この拉致問題の解決に向けまして、今、一番大事なこと、改めて教えていただけますか

蓮池

日本からの積極的な仕掛け、仕掛けという言葉が悪いなら、日本からどんどん積極的に北にメッセージを送っていくということが必要だと思います。もう一点は政府、国民を含め拉致問題解決がなければ日朝の関係改善はないという、強い姿勢を強く伝えていくと。この二点が今何よりも求められているんではないかと思っております。

(2020年9月18日放送)

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