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#140

自民党・石破茂元幹事長が生出演で語った“これからの日本”

「ポスト安倍」の有力候補、自民党・石破茂元幹事長が『BS朝日 日曜スクープ』に2020年8月23日、生出演、これからの日本のあり方を議論しました。安倍総理が退任を表明する5日前の出演です。

■「総理は日本で最も激務。ベストな体調で国政に」

山口

本日のゲストを紹介します。自民党・石破茂元幹事長です、宜しくお願いします。

石破

こんばんは、どうぞよろしくお願い致します。

山口

来年には自民党総裁選が予定されています。きょうは石破元幹事長に新型コロナ対策を含め、日本のあり方を伺いたいと思います。そしてもうお一人、元テレビ朝日政治部デスクで現在は政治ジャーナリストの細川隆三さんです。宜しくお願いします。

細川

よろしくお願いします。

山口

きょうで安倍総理は連続在任日数が2798日になり、佐藤栄作元総理に並び、歴代最長になります。上山さんお願いします。

上山

安倍総理は17日、都内の慶応大学病院で検査を受けました。総理は午前10時30分から午後にかけて7時間30分ほど病院に滞在、その日に帰宅しました。19日、安倍総理自身は「体調管理に万全を期すために、検査を受けました。これから再び仕事に復帰して頑張っていきたい」と語っています。

山口

石破さん総理の体調について、自民党内ではどういう受け止めをされているんでしょうか。

石破

それは、とにかく総理大臣というのは、世の中いろいろ大変な仕事ばっかりですが、日本で最も激務であると思いますね。肉体的にも精神的に大変な事だ、だからそれはほんとに大変な事だねと、今年に入ってほとんどお休みはとっておられないわけだし、やっぱり休むのも仕事の内というのがありますけど、一国の内閣総理大臣なんですから、それはベストな体調で国政に臨んでいただく、それも安倍総理のお仕事なので、そこはほんとにいろいろ言う人はいるかもしれないけれどきちんとお休みも取る。そして虚心坦懐、なにが国家のためか、という事を考えて頂いて、邁進して頂く。それりゃ日本の国のためにそうあるべきだと思いますよ。

山口

総理の体調というのは国の危機管理にも関わってきますから、例えば野党からは総理本人が国会で体調について説明すべきだという声も上がっていますね。これはどう思いますか。

石破

私も三十数年議員やっていますが、「私の体調はかくかくであります」と説明した総理大臣は見たことがないですよ。それを国会で聞くというのはいかがなものですか、それはあんまりいいやり方だと思いません。総理が国会にお出ましになって「私の体調かくかく」、そんなことは記者会見でもなんでもなさればいいことであって、今までの総理でそんな人は見たこともない、それはその私が小学校2年生だったけども池田勇人総理が癌で東京オリンピックが終わったらお辞めになったと思うんですよ。それはもう誰が判断するものでもないし、誰が言う事でもないし総理ご自身がご判断になる事ですが、国会の場でおっしゃるという事は、私は全然賛成しませんね。

山口

細川さんは永田町を取材していて総理の体調についてどんなふうに分析していますか。

細川

総理の健康問題というのは時には政局にもなりかねないし、外交、安全保障問題にもなりかねない。これは国家機密なんですよ。なんですけど2007年に総理が第一次政権の時に退陣された直前まで官邸キャップやっていたんですけど、その時のことを思い出すんですが、このところの総理のぶら下がりと言いますか、そういった声を聞いていますと、ちょっと力が無いのかなと、腹から下っ腹から力を入れて話している様な話し方ではないような印象は受けました、ただこの間、7時間半ですか都内の病院で検査をされて以降、少し良くなってきたのかなという印象は受けます。

■新型コロナ対策“補償と強制力”発言の真意

山口

体調に関して心配されるところではあるわけですけども、新型コロナ対策について伺います。新型コロナ対策にあたっている都道府県知事からは、特措法の改正を求める声が高まっています。

上山

今月11日、全国知事会は西村経済再生担当大臣に、事業者への休業要請に実効性をもたせるための罰則規定を特措法に設けることを要望する、緊急提言を提出しました。さらに提言では、国による補償金的な「協力金」の制度化も求めています。現行の特措法では知事による休業要請は「お願い」のレベルで指示に従わない場合は、事業者名の公表は出来ますが強制力は伴いません。この特措法の改正に関し安倍総理は「事態が収束した後には特措法がより良い仕組み、制度になるようしっかり検討していく」と述べています。石破さんは特措法の改正に対しては、先日こう述べています。「政府や自治体が行動を規制することによって、経済的な活動にダメージ」がある場合の対応として、「補償をかみ合わせながらの強制力が特措法の改正の時に必須だ」具体的にはどういうことなのか、お話しください。

石破

これは早く収束させるために特措法を改正するべきではないかという考え方も、私はあってしかるべきだと思うんですよ。総理と考え方が違うのかもしれないですけど、総理がおっしゃっておられるのは「収束した後に」とおっしゃっていますよね。全部聞いてみないと分からないんですけど、そこだけ取り出して聞くと、それは早く収束する為に特措法の改正という選択肢もあるんじゃないかと思うんです。知事会が色々な事をご提案頂いている訳ですが、それを法律的にどう組み立てるかということ、なわけですよね。つまりみんな生きて行かなければいけないですからお店屋さんにしても、あるいはライブエンターテイメントの関係の方にしても、自粛要請と言うかな、そういうのが来るこれはお願いレベルだ、だから従っても従わなくてもいいという話で、お願いレベルだから補償しませんよ。という組み立てになっているわけですよね。ざっくり言えばね。そうではなくて、これはやってはいけませんという事を言って、それによって経済的な損害を被った場合に、それを日本国憲法にいうところの財産権が制限されたというふうに考えるべきなのか、そして日本国憲法は正当な補償のもとに財産権を公共の目的の為に使うことが出来るとその趣旨があるわけですよね。これをどうやって法律的に仕組んでいくのかということは、まさしく議論しなければいかんことでしょう。法律案が出来ないと国会開いても何を審議するんだいという話になりますから、出し物が無いのに芝居をやるようなそんな話にはならんのでね。それをどう考えるかと、これはあんまり議論になっていないのかもしれないけども、いわいるCDCという、こういうような感染症に対してきちんと対応する組織、なんで台湾があんなにきちんと収束させられたのか、収束に向かうことができたのか、この前台湾の人と話して、それはCDCだと言っていました。それをどうゆう様な仕組みにするんだと厚生労働省の下に作るとなると今と何が違うのという話になりますよね。そうするとまさしく内閣官房の下につくる必要があるのではないか、それはどの様な組織あるべきなのか、そして保健所をどんどん減らしてきたわけで、それをどうやって取り戻していくかとか、組織論と行動をどう規制するか、そういう事をきちんと法律で作っていかないと、それは特措法の改正にならんし、そういう事をきちんとやった上で特措法の改正は意味のある事だと私は思います。

上山

「休業に対する補償」という風な言葉を使っていらっしゃいますけど、一方で政府の立場としては休業に対する補償というのは「世界のどの国をみても例がない」という立場ですよね。これは政府の考え方よりも石破さんの考えは、一歩踏み込んでいるということなんでしょうか。

石破

それは頂点であるところの日本国憲法との整合をどう考えるかということ。そして目指す所はどうやって一日も早く収束させるかということであって、世界に例があろうがなかろうがそっちの方が収束が早いんだ、という結論が出るとするならば、それはやるべきじゃないですか。世界に例がないからやらないと、それはあまり日本らしい言い方だと私は思わないですがね。CDCだってそうですよ、そんなものを作ってどうするんだ、みたいな事を言う人がいるけども、でも台湾がどうやってきちんとそれを収めたのか、元はアメリカなんですけどねCDCは。じゃあアメリカで、なんであんなに感染者が増えたかと言うとCDCの使い方を間違えると機能しませんよということ、でしょ。だから運用どうするのかいうことを含めて、それを議論するというのを日本の為に必要な事だと思いますよ。

山口

細川さんはどんな意見ですか。

細川

休業要請するなら補償があってしかるべきだと思うんですけども、例えば飲食店の場合は食材の生産者もいるでしょうし、お酒販売しているところはそういった卸もあるし、非常に広いですよね、観光業界もそうですよね、非常にすそ野が広い、例えば飲食店に休業要請をした場合に、いまの協力金10万とか20万とか言われていますけども、もう微々たるもので、まったくそれだったらお店をやった方がいい、その辺をすそ野が広い所もあるし、どういった補償というか、どういったイメージをされているのかお聞きしたい。

山口

石破さんこのあたり、仮に補償するとすれば、どうゆう分野なのかとか、どうゆう地域なのかとか、ある程度、限定的になってくるかと思われるですが、このあたり如何ですか。

石破

それはね、どういうダメージを被ったかっていうのは段階が違うと思うんですね。ものすごく受けている、そういう業界と、いやいやと、みんな食べるのをやめたわけじゃないですから、じゃあその飲食店さん向けに生鮮食料品は出ないでしょう、ですけどそれがスーパーからお家の中で食べる方に回っていくという事になれば、じゃあ農林水産業のダメージはどれぐらいですか。実際にお客さんが来てくれない飲食店はどうなんですか、じゃあライブエンターテイメントなんていうのはですね、今まで商店街のお祭りとか、あるいは温泉の色んな催しとかね、そういう所で歌ってCD配ってみたいな事やってらっしゃった。あるいは大道具さん、小道具さん、照明さん、音響さん、何にも仕事無くなるわけでしょ。どうしたらいいんですか。だからそれは随分ね、段階に差があるんだと思いますよ。だからそこんところの基準をどうするかが、まさしく我々与党の中で議論してしかるべきものでしょう。そして国会で議論すべきものなんでしょう。そのために我々は政調会っていうのを持っているんだし、田村さんね、元厚生大臣の、あの方がトップになってきちんと今までいろんな対策を打ってきたわけで、それを検証してみて、今までの特措法で、じゃあ今度は本当にコロナに特化した特措法を作るとしたらどうなるんだっていう議論。そのために我々はいるんじゃないですか。そのために国民からお給料をいただいているんじゃないですか。

■どうなる特措法改正 臨時国会は!?

山口

特措法を改正するとなると片山さん、臨時国会を開く必要がでてきますよね。このあたりどんなふうにお感じになりますか。

片山

その通りだと思いますね。今見ていますと、政府は、ちょっと言葉がきついかもしれませんけれど、感染症予防対策を自治体に丸投げしているんですね。本来ならば緊急事態宣言を出して、その元で初めて都道府県知事の権限が行使できるんですが、今、緊急事態宣言なくても都道府県知事が営業自粛の要請をかけられるというような、法律の誤った解釈を国が蔓延させているんですね。それは知事なんかも実は困っているんです。そういうところから特措法の改正をやって、きちんと現場で、丸投げは丸投げでいいですけれど、知事たちが自信をもって仕事できるような、そういう法整備をしてあげなきゃいけないですよね。もちろん難しい問題もあります。時間をかけなきゃいけないもの。それは並行して時間をかけるけれども、すぐやれる事はありますから、そういうものを法案として早急にまとめて、それで石破さんが言われたように1日も早く収束させるために、早く国会を開いて、順次解決していってあげるという姿勢が私は政府には必要だと思いますね。

山口

このあたりどうですか、国会をやっぱりすぐ開くべきだと、収束を早めるためには早く動いた方がいいですよね。となると、特措法を改正するのであれば臨時国会早めに開くべきじゃないかという意見があると思うんです。いかがですか。

石破

それはね、やはり内閣提案になるはずなんですよ、法律はね。そうすると法律として体をなしてないのに国会だけ開いても意味ないじゃないですか。あるいは補正予算、10兆円予備費組んでいますから、そうするとそれで相当いけるよねって事はあるんですけど、じゃあそれをどう使ったかって検証もいりますが、特措法を本当に変えるのか変えないのか、それは政治からのオーダーが無いと官僚たちが勝手に動いて勝手に法律なんか作れませんからね。そうすると、いま片山先生が言われるように、何でやらないのよっていうお声は結構、きょう出た世論調査でも7割かな、国民の7割がやるべきだってご意見なんですね。だとすれば、それの審議に耐えるような法律案を作る、それが政府の仕事、与党の仕事なのであって、何にも出すものが無いのに国会開きますなんて、そんな事は出来ないですよ。だからそこに向けて国民の7割がそれを求めているとするならば、そして憲法には衆参のいずれかの4分の1の議員の要求があったら臨時会開かなきゃいけないって書いてありますよね。ただ何日以内って書いてないからなかなか開かれることはないし、開いたら(衆議院を)解散しちゃったりするわけですけれども、だけど憲法の主旨っていうのはそうではないだろうと。国民の7割が望み、衆参の4分の1が要求して、だとするならばそれに応えるような法律案作んなきゃ。それも無いのにやるのも、それもまた無責任というものでね。そこはね、自民党の執行部よく考えていると思いますよ、私は。

山口

いずれにしても石破さんとしては、安倍総理は事態が収束した後に検討と言っていますが、それじゃあ遅いと。やるべきことは段階を踏んでやるべきだっていう事ですね。

石破

だから総理が本当に、そうおっしゃったのかどうか、ちょっと私はにわかには信じがたい所あるんですけどね。

細川

総理がね、事態が収束した後に検討って、その真意がわからないですよね。だから総理のこのメッセージ力と言うか、今、色々言われていますよね、会見を何でやらないのとか。その総理の国民への説得力と言うか、メッセージ力と言うか、それ石破さんどう思っていらっしゃいますか。

石破

これはね、私も電話かけて聞くわけにもいかないしね、ですけど一国のトップなわけですよ。そして昨日今日総理になられたわけじゃなくて、第一次政権から考えればものすごく長い間、この国を統治しトップに立ってこられたわけでね。そうすると、諸外国が皆、素晴らしいとは言わないけれど、感染者も多いし致死率も高い所が何で国民の支持を得ているかって事を考えると、政権がですね、それはやっぱり直接トップが国民の心に響くようなメッセージを出しているって事だと思うんです。今、国民が欲しているのは、そういう事じゃないだろうか。安倍さんから心に響くようなメッセージ欲しいな、そう思ってらっしゃる国民の方は存外多いと私は思いますね。

山口

大変な危機を迎えているわけですから、その時には国のリーダーの言葉は本当に重いと思うんですよね。

石破

だから健康状態を万全にして、そういうような状況が 来ると良いなって思います。

■「東京一極集中は人為的」地方分散と税制

山口

きょうは「ポスト安倍」候補の1人、自民党の石破茂元幹事長に出演頂いています。新型コロナを受けての日本社会のあり方をここから考えていきたいと思うんですね。石破元幹事長なんですが、先日講演でこういう事をお話されているんですね。「東京一極集中を是正するための税制の在り方を今考えないでどうするか。今、国策として地方に分散しないと国家が持たない」とおっしゃいました。確かにコロナで東京一極集中の危うさが露呈されましたよね。テレワークも広がってきています。時代の変わり目なのかなと感じる所もあるんですね。石破さん、どんな事をお考えですか。

石破

東京一極集中ってのはね、別に天から降ってきたものでもなければ地から湧いたものでもない訳ですよ。東京一極集中って人為的に作ったものなんですよね。江戸時代265年、江戸にいかに人が集中しないようにするか。地方に独自の経済、独自の文化、独自の教育があってね、中央集権と中央分権を上手くマッチングしたのが265年の江戸時代だったんだが、そんなことやっていると西欧列強の植民地になっちゃう、大変だと。急いで日本を強い国にしなきゃいかん、豊かな国にしなきゃいかん。習いましたよね、富国強兵、殖産興業。そのために東京一極集中ってやったわけですよね。で、新潟の人口が東京を下回ると言うか、東京が新潟の人口抜いたのが明治の終わりだと思います。どんどん進むと。太平洋戦争に敗れて一回国家は焦土と化しますが、また貧しいままにしといたら共産主義の革命が起こるかもしれない。もう一回一極集中だっていうんで、メディアから経済から文化から全部一極集中したわけですよね。人為的に作ったものでこれだけ新幹線が走り飛行機が飛び高速道路が走り、メディアが発達すればするほど一極集中が進むっていうのは国がそういう仕掛けになっているからじゃないですか、それ変えないと。食料を作ってエネルギー作って出生率が高い地方が滅んでですよ、食料は作らん、エネルギーは作らん、出生率は全国最低だ、その東京だけが残るって国家はありえないのと同時に、東京の持っている力、文化であり教育であり金融であり、そういうものが本当にいま東京にものすごく負荷がかかっているわけで、東京そのものが駄目になっちゃったらどうすんですかっていうこと。地方が東京のために何ができるか、東京が地方のため何ができるかのために、税制って政治の一丁目一番地ですからね。それ考えることは、私は必要なことだと思います。

山口

税制は具体的にどういう風に変えようというイメージですか?

石破

これは例えて言えば、税制だけが全てだとは言わないけれど、なんでどんどん東京に本社が移転するんですかね。よくわからん理由が。それはお役所が近いからだとか色んな事言う人がいるんだけど、それを地方に移転するような、そういう税制はあってしかるべきじゃないか。今度、北海道のニセコに、ルピシアさんって言うお茶の大手の販売ね、それが本社移転するわけですよ。このコロナの中、東京に置いといたって意味ないと。それで北海道に移転するってんで、号令一下そうなるわけですよ。じゃあ東京にお家もある、だけど地方でも働くことができるっていう二地域居住って、ちょっと考えるとコスト掛かるよねってことがある。家族離れ離れ嫌だよねってことがある。東京にせっかく建てたお家どうするのってことになる。じゃあそういう負担を軽減するような、そういうような税金の仕組みってあるんじゃないかな。だから新しい時代を作っていくのにふさわしい、税制だけで国が動くとは思わないけれど、片山先生なんか専門家だから、いろんな教えをいただかなければいかんのだけど、でもそれにドライブかけていかないと、どんどんどんどん加速度的に今の人口減少、高齢化、進んでいって、そしてコロナが都会を中心に蔓延したら、この国一体どうなるんですか。

山口

片山さん、今の石破さんのお話、やっぱりこのコロナの今だからこそ、地方に分散すべきじゃないか、いかがでしょうか?

片山

私は基本的には賛成です。コロナの問題で大都市の脆弱性とか危うさが露呈しましたよね。それ以外にも、もう従来から言われているのは首都直下型地震があったらどうなるのかと。日本の中枢が、こんなに諸機能が集中してるところが破壊されたらどうなるのかという問題もありますよ。だからこの首都の一極集中を是正することはとても重要なことだと思います。石破さんが言われた税制なども、企業の本社などを地方に移転する、これを後押しする税制があってもいいんじゃなか、もうその通りだと思うんです。今もその種の税制が多少はあるんです。例えば、研究部門とかを移せば多少の優遇措置はあるんですけれど、これらはほとんど微力です。ですから、やるんであればもっと大胆に、本社機能を移した時の税制上のメリットをつけるというのは必要だと思います。それから従来から、もうこれは古典的なんですが、昭和40年代から言われたのは、例えば首都を高コストにしたらどうか。例えばその首都圏だけ、その首都圏の特定の地域だけを固定資産税かそれに類するような税制である程度高コストにすると。そうすると低コストの地方に移るだろう。こういう税制が構想されたことがあるんですね。これは実現していませんけれども。国際競争の中で東京の競争力がどうなるのかという問題もありますから。そんな長期的な問題についても、また短期的な問題についても、これから税制調査会なんかで、早急に検討することは私はとても有意義だと思いますね。

山口

確かに地方には潜在力があるのでうまく分散していくっていうのは一つ大きな有効な手段じゃないかと思います。

■どう考える!?習近平国家主席の国賓来日

山口

そしてこれからの日本の大きな舵取りの一つとして大きなテーマになってくるのが米中の対立ですよね。日本の対応が問われています。上山さんお願いします。

上山

自民党外交部会は先月、習近平国家主席の国賓来日について中止を求める決議を菅官房長官に提出しました。決議には中国が香港国家安全維持法を施行したことを非難し、「中止を要請せざるを得ない」としています。石破さんはその決議に対し、「総理が国賓としての来日を要請したことは事実としてある、それをやめてくれ、とうことは、これから先どういうことになるのか、ということもよく考えねばならない」「礼儀は礼儀としてきちんと尽くさねばならない」と発言しています。石破さん、改めて習近平国家主席の国賓来日についての考えを聞かせください。

石破

安倍総理が国賓としておいでください、というふうにおっしゃってなければ話は別なんですけどね、一度そういうことをおっしゃっておられるわけですよね。だとするならば、このコロナの状況にかんがみて、それはしばらく無理だよねって言う、それが私は穏当、穏当が外交の全てだと思わないが、そしてこの香港の問題は必ず台湾にも波及することであって、我が日本の創立にとって極めて重要な事態であることも確か。そういう時にコロナだからしばらく来ないでくださいねって、それは阿吽の呼吸というもので、そういうものだと私は思っています。その間にまさしく日本はアメリカって色んな価値観を共有する国だが、あまりに遠い。中国はいろんな価値観を共有しないし利害が対立することも大きいが、あまりに近い。そこにおいて二者択一なんてありえないことであって、いかに我が国としてアジア、あるいはヨーロッパ。アメリカと中国がこういう関係になって困ったなと思っている国はいっぱいあるわけです。その時に日本の言う通りだよね、日本と一緒にやろうよっていう、そういう国を増やしていく努力って必要なことではないんだろうか。今やることは主席の訪日を延期をする、それを総理に申し入れることも、それは一つのやり方でしょ。自民党の中にもそういう方も大勢いらっしゃいますし、それは国民の支持を受けている事も承知しています。いま我が国がやるべきことは本当にアメリカ・中国が、本当はこのコロナがあるとね、一緒にやろうよ感染症対策を、ということにならなければいけないのに、非難の応酬みたいになっているじゃないですか。WHO抜けるとか抜けないとか、みんな困っているじゃないですか。台湾だって困っているじゃないですか。そういう時に皆さんこれで本当にいいと思いますかってイニシアティブを日本は取るべきじゃないかなと私は思います。

■総裁選「誰がやるのか、が先ではない」

山口

きょうは「ポスト安倍」候補に名を連ねる自民党・石破元幹事長が生出演です。

上山

こちらは7月18日、19日に行われたANNの世論調査です。次期自民党総裁に誰がいいか?という問いに対して最も多かったのは石破さんで29%、2位が安倍総理で13%、同率で小泉進次郎環境大臣となっています。その他には、河野防衛大臣、岸田政調会長、菅官房長官の名前が上がっています。そして自民党の現在の派閥別の人数です。安倍総理に近いとされる細田派が98人、麻生派が54人、岸田派47人、二階派47人に対して石破派は19人です。

山口

石破さんが作りたいというこの分散する社会、地域も豊かになるという話があると思うのですが、それを成し遂げるとすればやっぱり総理にならないと作れないと思います。今この状況ですよね?石破さん、これからどのように動いていくつもりですか?

石破

それは我が自民党が今の日本の状況をどう捉えているのか。それで内需中心の地方分散型の経済と同時に、生活保護制度が始まったのは昭和25年のことだよね。200万人以上の人が受給していたのですよね。今なんとそれと同じような人が受給しているわけですよ。それは一体何なのだと。日本の経済っていうのは個人消費が7割、8割を占めているわけです。そういう所得の低い人達の所得が上がっていかないと経済って伸びないじゃないですか。お金持ちがどんどんお金持ちになって経済良くなるわけじゃないんだよね。先ほど外交安全保障の話があった、経済の話がある、地方分散の話がある、人口減少をどう止めるか。我々が何を問題として捉え、そのためには誰がやるのっていう議論であって、誰がやるのが先にあるわけじゃないんですよ。我が自民党として、現状をどう捉え、それをどうするかっていう議論が侃々諤々かんかんがくがく党員の前で戦わされて、国会議員の前で戦わされて、誰がなっても自民党はこの道を行くんだ国家のために。きれいごとを言うようだけどそういう自民党であってほしいなって思いますね。

山口

なるほど。その上でなんですが、自民党総裁選ということを考えると、安倍総理の任期は来年9月ということになります。これは細川さんに解説して頂きたいのですが、そこに向けて今どんな所がポイントになるのでしょうか?

細川

安倍総理の任期は、総裁としての任期は来年の9月なんですけれども、任期いっぱい総裁で勤められて変わるっていうことになったら、地方票、地方の党員票を含めたフルスケールの総裁選挙になるんですけれども、仮に任期満了を待たずどこかのタイミングでもしも総理が退陣ということになると、これは国会議員両院議員総会で国会議員による投票で国会議員中心の投票で決めることになるんです。いずれにしてもその国会議員の中の投票が非常に重要になってくるんですけれども、これ見ると細田派、これは安倍総理の出身派閥で細田さんの顔だけど実際は安倍さんみたいなものです。で麻生さん。石破さんの最大のライバルになるであろう岸田さん、もしこの3派が固まると国会議員票の5割を超えるのですよ。石破さんの所はご自分の派閥は19人。これ派閥の数でいうとこういうことなのですけどね。3年前に比べて、これに出てない、実は石破さんを応援しますよとか、石破さんからしたらお仲間が増えているのですかね?

山口

そこはどうですか?

石破

どうでしょうね(笑) だからね、色んな派閥、小選挙区制度っていうのは派閥が違っても同じ自民党であれば応援しようよっていうそういう制度だったはずですよね。私全国色んな所に選挙のお手伝いに行くのだけども、何派だったら行くとか、何派だったら行かないとかやったこと一度もないですよ、同じ自民党の同志だって。もう一つは自民党危機っていうよりも国家の危機に我が党はどうあるべきなのだろうかと。だから少数派閥の方が総理総裁になったっていうことは何度か自民党の歴史の中でありましたよね。三木総裁とか、海部総裁とか。その時は派閥の利害じゃない。自民党の危機、国家の危機に自民党はどうすべきなのかっていうそういう知恵が働いたのだと思います。さあ今度はどうなんだろうっていうことはわからないし、私としてお言葉を借りればね、お仲間を増やす努力しなきゃいかんでしょう。一緒に飲んだり話したりすることも大事なことでしょう。だからそれを自分の能力・知識が足りない分を何とか補わなきゃって、いうこととそういう人達と話したり飲んだりさせて頂くことと、この両立するっていうことはなかなか難しいですけどね。やらなきゃいけないことだと思います。

細川

政局的なことで色んな動きがあるのが総裁選ですからそうなんですけれども、僕これ最大のライバルになるだろう岸田さんとの石破さんとの違い、どこが違うんですかね?岸田さんにはできなくて石破さんならできることって何なのでしょうか?

石破

それは比較してどうだこうだっていう立場にないですしね、同じ昭和32年生まれで同じ時代を生きてきましたよ。閣僚もずいぶんやった、党の役員もやった、共鳴する部分っていうのは私は多いし、岸田さんと話していて嫌な思いをしたことは一度もない。だから本当に国の状況をどう捉えるかっていうことで、その色んなことを言うことを言う人はいるのだけど、虚心坦懐に話をする。ポスト安倍とかいって色んな人の名前が出ているけども、やはり一対一で岸田さんに限らず話してみるということは、私は大事なことなのではないかなって思います。私は岸田さんに対して嫌な思いをしたことは一度もないし、公平公正な人だと思いますけどね。

■「国民に正面から向き合う」

山口

石破元幹事長にお話を伺っています。さあ石破さん日本本当にコロナで大変大きな危機にさしかかっているわけですね。今政治に求められているもの、最も大きなものは何だと思われますか?

石破

それは国民に正面から向き合うことじゃないですか。それを一番国民が求めているじゃないですか。だから今状況はどうなのか、もちろん国家機密みたいなものは言えないけれど数字だってできるだけ正直に申し上げる、良いことも悪いことも申し上げる、一緒にやりましょうよっていう、危機だからこそ一緒にやろうよっていうメッセージが政治から国民に向けて発せられれば、日本国民って必ず応えてくれると私は思いますね。

山口

なるほど。石破さんはそういうリーダーになりたい、なるっていう思いは今いかがですか?

石破

なれるかどうかはわからんが、なりたいとは思う。だから納得と共感、そうだよねっていうこと。もちろん皆が賛成する政治はありっこないですよ。反対は必ずありますよ。だけど反対ではあるけど、理解はするっていうことは大事じゃないですか。自分の考えに合わないものはあっち行けって、それじゃ一体化した政治にならないでしょ。だから分断とか対立とかそういうのを日本から解消していく。いま世界はあちこち分断とね、対立だらけだ。格差も拡大している。でもそれ日本から直していこうよっていうメッセージが国民に対しても世界に対しても発せられるようならいいなと思います。

山口

そうですね。片山さんはどうですか、今ご覧になっていて。

片山

私はやはり政府は信頼の回復が一番だと思いますね。状況をきちっと把握をして、石破さんが言われたように包み隠さず情報を出して、見通しを持って必要な手をうっていく、それを一緒に頑張りましょうと言って国民に呼びかける、そういう政府であってほしいなと思いますね。

山口

石破さん、きょうはどうもありがとうございました。また是非お越しになってください。

石破

ありがとうございました。

(2020年8月23日放送)