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韓国・文在寅政権での脱北者たちの苦境
■北朝鮮レストラン女性従業員12人“集団脱北”その後
去年、3度にわたり行われた、歴史的な南北首脳会談。
しかしその後、北朝鮮が文政権を批判。ミサイルを発射するなど南北関係は急激に冷え込んでいます。
このように関係が悪化する以前、南北融和ムードが高まったときでも、北朝鮮が韓国に突き付けてきた問題があります。脱北した北朝鮮レストランの女性従業員12人の処遇です。
2016年4月7日マレーシアにある韓国大使館に北朝鮮の男性1人と女性12人が亡命を求め逃げ込みました。
韓国統一省の報道官
2016年4月8日同じ食堂で働いていた従業員がいっぺんに脱北し、入国したのは今回が初めてです。
彼女たちは中国・寧波(ねいは)にある北朝鮮レストランの従業員で、男性はその支配人。
12人の女性従業員は1人が37歳であとの11人は20代でした。
北朝鮮が外貨を獲得するためのレストランで歌や踊りを披露していたという女性たち。外国語が話すことができ、海外に住むことを許されたいわば“国に選ばれた女性たち”です。
そんな彼女たちの「自発的な亡命」だという韓国の発表に北朝鮮は反発。韓国の国家情報院がだまして脱北させた韓国政府による「事実上の拉致」だと主張したのです。
■北朝鮮は「韓国当局による拉致」と主張
最年少の22歳の従業員の両親は北朝鮮のテレビに出演。
女性従業員の父親
「私たちの娘は自分の意思による脱北だと言われていますがだったらなぜ、私たち親の前に堂々と出さないのか」
「私たちの愛しい娘の話が聞きたいです」
同じレストランで働いていた女性たちは海外メディアの前で当時の様子を説明しました。
脱北しなかった同僚の女性
「お昼くらいに私たちのレストランの裏に車をつけて新しいレストランの方に移動して奉仕しなければならないと言って彼女たちを車に乗せ始めました」
「その時、何かおかしいと気が付いて車に乗っていない人たちのところにいって早くに逃げなさいと知らせました」
そして、首謀者については…
脱北しなかった同僚の女性
「私は偶然、食堂の支配人が車を持ってきた人たちの中の一人に近づいて『国家情報院のチーム長』と呼んだのを目撃しました」
「こいつは私たちが延吉(えんきつ)にいるときから食堂によくきて、支配人と色々企んでいた奴です」
韓国の国家情報院と支配人が画策し12人をだまして韓国へ亡命させたというのです。
■「南北の閣僚会議で取り上げられた」
私たちは彼女たちを支援する、韓国の弁護士を訪ねました。
民主社会のための弁護士会 チャン・ギョンウク弁護士
「(韓国側が)情報機関の指示によって、総選挙を控えた時期に女性たちをだましてマレーシアにある韓国大使館の前まで連れていきました」
「その時にしぶっている彼女たちに対して、韓国のドラマなどを見ていただろうと脅迫して大使館に無理やり連れていったといいます」
12人のうち少なくとも5人は「脱北は自分の意思ではなかった」と話しているというのです。
北朝鮮は送還するよう要求しています。北朝鮮にいる家族も同じ考えで、12人の女性たちを迅速に故郷に送還せよ、と。そして拉致に加担した韓国の情報機関と支配人の処罰を、求めています。
これに対して、当時の朴槿恵政権は「自由意志による脱北」と説明。
2017年文在寅政権になっても「12人は自由意志による脱北」という立場を維持しています。
12人の脱北からおよそ2年後、文在寅大統領と金正恩委員長による歴史的な南北会談が実現しました。
友好ムードの中12人の女性従業員が南北の難しい議題となっていたといいます。
民主社会のための弁護士会 チャン・ギョンウク弁護士
「この問題が閣僚会談で、北朝鮮側からすでに話が出ていたということは聞きました」
「非転向長期囚や、平壌市民の問題とかの話が出てきたが、文在寅政権はまだ条件が整っておらず、後に延ばそうと非公開交渉で理解を求めたんだと思います」
南北融和を推し進めていた文在寅大統領は金正恩委員長と友好ムードが高まる中12人の送還を強く求められていたといいます。
しかしその対応は、文在寅大統領にとって難しいものだったといいます。
■「文在寅政権が送還できない理由は・・・」
民主社会のための弁護士会 チャン・ギョンウク弁護士
「韓国ではどんなに大統領を支持する人たちであっても北朝鮮に謝罪をしなければいけないことは受け入れられないと思います」
「もし仮に韓国が拉致をしたと真相を究明したら、韓国自体が拉致テロ国家のレッテルを貼られかねないです。そうなると、韓国国民全体が文在寅政権を攻撃するかもしれません」
そんな文在寅大統領の状況を見透かすように南北首脳会談から1か月後、北朝鮮の労働新聞にある記事が掲載されました。
「女性従業員の拉致事件をどのように処理するかを見みながら、板門店宣言での約束を履行するか否かを考える」
その2か月後にも「文在寅政権の女性従業員に対する態度は南北関係の改善意思を見る試金石だ」
するとその10日後、韓国の国家人権委員会が12人の女性従業員の脱北が、本当に自由意志だったのか調査を行うと発表したのです。
しかし人権委員会をめぐっては、保守系議員が猛反発。「12人を送還しようとしている」「人権委員は北朝鮮の機関か」と批判が相次ぎました。
南北融和を掲げる、文在寅大統領にとって、12人の女性従業員の問題も、大きな課題となって、立ちふさがっています。
今年9月には、韓国の国家人権委員会が、12人の女性従業員の集団脱北に関する調査結果を陳情者に通知しました。人権委員会は「脱北の過程で韓国政府の違法・不当な介入があったとする主張は、客観的な証拠を確認できないとして棄却」「一部の従業員が支配人の懐柔と脅迫によって入国を決めた蓋然(がいぜん)性は排除できない」としています。
民主社会のための弁護士会 チャン・ギョンウク弁護士
「やらないのではなくてできないのだと思いますもちろんやろうと思えば、ケソンの連絡事務所など、北朝鮮との対話できる可能性はいくらでもあります。しかし、今の状況でやろうとすると、政権が倒れる可能性があります」
「文在寅大統領の意思と力量が足りないのではないか、官僚や自分を支持する世論を説得する力がないのだと思います。」
■脱北者たちの人権活動が後退
韓国の文在寅政権では、南北融和を重視する一方で、北朝鮮に批判的な人権団体の活動が後退していると伝えられています。現地を取材しました。
■「風船を飛ばしたのは4月が最後」
ソウルから車でおよそ1時間。私たちはある男性を訪ねました。
イ・ミンボクさん。1995年に北朝鮮から韓国へ亡命した、脱北者です。
イ・ミンボクさんは脱北後北朝鮮の国民に向け、北朝鮮政府を批判するビラを風船に括り付け、飛ばす活動を続けてきました。
北朝鮮国民に真実を知ってもらうため、15年以上続けてきた活動に今、異変が起きていました。
脱北者 李民馥(イ・ミンボク)さん
「これが風船につけるビラです」
ビラには北朝鮮の体制批判などがぎっしり書かれています。
しかし倉庫の中には、袋が山積みで放置されていました。その理由とは…
脱北者 李民馥(イ・ミンボク)さん
「最後に飛ばしたのは去年の4月5日です」
「4月10日にも飛ばそうとしたのですが、警察に止められました」
イ・ミンボクさんもこれまでのように活動ができなくなったといいます。
イ・ミンボクさんの家の周辺をよく見ると…のどかな風景と不釣り合いな防犯カメラがいたるところに。
さらに取材をしていると、すぐに刑事が現れました。離れた場所に移動しても…別の刑事が。
刑事は警護していると説明していましたがイ・ミンボクさんによると、活動を見張る目的も兼ねているといいます。
脱北者 李民馥(イ・ミンボク)さん
「法治国家、自由民主主義国家ではありえない話だと思います」
「昔、一時的に南北会談が行われているときは、一時的にやめることはあっても、これはまったく表現の自由、宗教宣伝の自由で、これを悪党のような政権の機嫌伺いをやっているなんて、韓国政府のレベルが低いと思います」
■「資金が尽きて閉鎖を覚悟した」
これまで北朝鮮から韓国に渡った脱北者はおよそ3万3千人。その多くが、北朝鮮政府に不満を持ち、命がけで逃げてきた人たちです。
しかし、そんな脱北者たちの団体が文在寅政権下で存続の危機にさらされているというのです。
北朝鮮に向け、自由や民主主義を紹介するラジオ放送をしている自由北朝鮮放送の金聖玟ミン(キム・ソンミン)代表。アメリカ・ブッシュ大統領(当時)と面会し日本の拉致被害者家族とも連携し活動を続けてきた彼も文在寅政権で活動の危機に面しているといいます。
自由北朝鮮放送 金聖玟ミン(キム・ソンミン)代表
「私たちは政府が毎年行う企画公募事業に応募してきました」
「脱北者関連、北朝鮮人権問題に関連して応募、それで選ばれるとその資金をもらって活動を行いました」
「北朝鮮の人権問題に対して、毎年109億ウォンが充てられていました」
「それを文政権では9割以上カットしてしまったのです」
「私たちも政府が企画を募集することがなくなったので、資金が尽きてしまい、このままだと閉鎖するしかないと覚悟していました」
「幸い、去年10月、アメリカの国防総省の支援を受けられることになり、続けられましたが、それが無ければたぶん閉鎖していたでしょう」
こうした文在寅政権の姿勢に海外の団体も注目していました。
北朝鮮の人権問題に取り組んできたアメリカ・ディフェンスフォーラム財団のスザンヌ・ショルティ代表も危機感を抱いていました。
米国ディフェンスフォーラム財団 スザンヌ・ショルティ代表
「現在、私がこれまで見た中で北朝鮮の人権擁護運動にとって、最悪な時だと言えます」
「私がこの仕事を23年間してきましたが、こんなに悪い時期はありませんでした」
「脱北者同志会、こちらは全ての脱北者団体を束ねる団体ですが、左派政権であれ右派政権であれ、90年代に開始して以来、この団体には資金が提供されてきました」
「しかし、初めて、文政権により完全にこの予算がカットされました」
■文在寅政権の南北融和に異論
1992年に脱北後、ジャーナリストになった姜哲煥(カン・チョルファン)氏。
文在寅大統領の南北融和の進め方に、大きな問題があると言います。
脱北者 ジャーナリスト 姜哲煥(カン・チョルファン)氏
「韓国政府は今、北朝鮮の人権に関する講演を嫌がっていて、やらせていません」
「たとえば、民主平和統一諮問会議という、大統領直接の機関があるんです」
「これは全国組織の統一団体なんですけど、ここでも僕のような北に関する講師が除外され、 今は北朝鮮の人権の話はいっさいやっていません」
「その代わり、北朝鮮との交流平和という偽の平和の話ばかりするようになりました」
現在ある問題を避け、未来の明るい話で語られる南北融和。
元在イギリス北朝鮮公使の太永浩(テ・ヨンホ)氏はその原因が、韓国の政治の世界にあると感じていました
元在イギリス北朝鮮公使 太永浩(テ・ヨンホ)氏
「韓国の政界で人権問題というのは、韓国の人権状況改善問題は進歩派や左翼のテーマになっていて、北朝鮮の人権問題は保守や右翼のテーマになっている」
「人権という固有の普遍的な性格を離れ、政治のフレームになっている」
「そのため、韓国の場合、進歩派や左翼で過去人権活動をした政治家などが多いが、韓国人の人権のために活動していた人権活動家たちが北朝鮮の人権問題からも目をそらしてはいけないはずだ」
「しかし、彼らは北朝鮮の人権問題が出ると目を閉じて口を閉じる」
「そのため、この北朝鮮の人権問題を普遍的な目線で韓国では見ることをせず、政治のフレームに閉じ込められている。それが一番大きな悲劇だ」
南北融和を重視する韓国・文在寅政権で、北朝鮮から逃れてきた脱北者たちの苦境が伝えられています。2019年12月8日の『BS朝日 日曜スクープ』は、韓国で現地ロケした、脱北者たちの現状を特集しました。