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韓国・文在寅政権が掲げる「親日残滓の清算」現地取材
■「親日人名辞典」に朴正煕元大統領も
韓国の法相に就任した曺国(チョ・グク)氏を巡る疑惑で9月14日、検察は親族の男性の身柄を拘束しました。
疑惑に迫る捜査の手…。
リスクを負ってまで曺国(チョ・グク)氏を法相に任命した文在寅大統領。
文在寅大統領(9月9日)
「私を補佐し、私とともに「権力機関の改革」にまい進して成果を見せたチョ・グク長官にその仕上げを任せようというのが抜擢の理由です。」
李明博政権や朴槿恵政権が検察を使い、対抗勢力を弾圧してきたと考えている文在寅大統領。
「検察改革」は9年に及んだ保守政権の「清算」として絶対に譲ることができないのです。
そんな文在寅大統領がもう一つ、強いこだわりを見せているものがあります。
文在寅大統領(3月1日)
「親日残滓(ざんし)の清算はあまりに長く先送りされた宿題だ。」
「親日は反省すべきであり、独立運動は礼遇されなければならないという価値を定めることだ。」
「親日残滓(ざんし)の清算」
親日とは植民地時代、日本に協力した韓国人のこと。
戦後、責任を追及されることがほとんどなかったとしてこの親日派を文在寅政権は今、一掃しようとしているのです。
その実態はどのようなものなのか韓国へと向かいました。
訪れたのはソウル市内にある民族問題研究所。
ここでは誰が親日派なのか調査を行い、その結果を「親日人名辞典」としてまとめました。
親日派と認定され、収録されたのは実に4390人。
植民地時代に課長に抜擢された者。日本軍に志願した者。
親日派とされた人物の名前や顔写真が載っているのです。
「親日人名辞典」の中にはこんな人物も…朴正煕(パク・チョンヒ)元大統領。
1963年に大統領に就任し、日韓請求権協定を締結。
「漢江の奇跡」と呼ばれる経済成長をさせた人物で、朴槿恵前大統領の父親です。
その朴正煕元大統領は植民地時代、日本軍に志願したことなどから親日派として収録されているのです。
親日人名事典を編纂した民族問題研究所 パク・スヒョン事務局長
「過酷な植民地支配になったのはもちろん日本の責任はありますが、看過できないのは日本の植民地支配ができるように手助けをした一部韓国人の積極的な協力があったということです。彼らにも責任があると考えています。」
植民地支配に協力した、いわば「韓国の裏切り者」。
しかし戦後、彼らが処罰されることはなかったといいます。
民族問題研究所 パク・スヒョン事務局長
「親日清算が直後に行われていたらこのような問題は起きなかったと思います。でもそうはなりませんでした。日本が抜けた場所に独裁勢力が入ったわけですがその独裁勢力の元となったのが親日派でした。」
独裁政権を経て、むしろ親日勢力が韓国の支配勢力として権力を握り、のことで親日清算ができなかったとしています。
■“親日派”の石碑を・・・ 現地取材
74年前にできなかった「親日派の清算」それを文在寅大統領が今、行おうとしているのです。
しかし一体、どのように親日派を清算しているのでしょうか?
韓国で6番目に人口が多い、南部の町・光州市。
公園を訪れると、国や町の発展に貢献した人々の石碑が立ち並んでいました。
しかしその一角…3つだけ根元から倒されている石碑がありました。
3つは、親日派とされる人物のもの。
左端の石碑の前に設置された説明には「日帝 国権侵奪協力者」ユン・ウンリョルと書かれています。
ユン・ウンリョル氏は最高裁判所の裁判長などを務めた地域の名士。
しかし植民地時代、日本から男爵の爵位が授けられたことなどから「親日派」と認定され、8月8日、功績を否定するように石碑が倒されたのです。
真ん中の石碑はイ・グンホ氏という陸軍副将などを歴任した軍人のもの。
日韓併合後、男爵の爵位を受け取ったことなどから「親日派」と認定されたのです。
親日派を称えた石碑、これが親日残滓なのです。
3つの石碑は、撤去されることなくまるで見せしめのように倒された状態で置かれていました。
これを行ったのは光州市。
光州市では去年、石碑など市内に「親日残滓」がどのくらいあるのか全数調査を実施。
今年に入り、撤去などの措置を行っているのです。
全数調査を行った、光州教育大学のキム・ドクジン教授は、親日派に関わるものが数多く残っていると言います。
「対象は3つありまして第1に反民族的な行為をした人を称える、石碑などの施設2番目に植民地時代に設置された施設です。そして3番目が、韓国が独立した後に、日本の影響のもとに作られた施設物です。」
■教育現場でも“親日派”排除
親日残滓の清算は、教育の現場にも及んでいます。
私立の中高一貫校、光徳中学・高等学校。
校舎の1階には民主化運動を紹介する資料館が設置されるなど民族教育に力を入れた学校です。
しかし今年1月、意外な事実が明らかになりました。
校歌を作った音楽家が親日派だと判明したのです。
2008年から理事長を務めるシン・フンスさんは…
「とても驚いて戸惑いました特にそういう人たちが作った歌を学生たちに教えてきたということに対して罪の意識も感じたので早く変えようと思いました。」
親日派とされる金聖泰(キム・ソンテ)氏が作った、以前の校歌の歌詞はそのままにして、金聖泰(キム・ソンテ)氏が作ったメロディだけ変更したのです。
光州市では石碑などの施設とともに小学校から大学まで親日派が作った校歌の変更が積極的に行われているのです。
しかし、韓国の国歌、愛国歌。作曲した安益泰(アン・イクテ)氏は親日派として親日人名辞典に収録されている人物なのです。
校歌を変えるなら、国歌はどうするのか?
親日残滓の清算には大きな壁もあるのです。
光徳中学・高等学校 シン・フンス理事長
「想像以上に韓国の社会には親日残滓が残っていて私自身もそれを感じています。日本の物を買わないといっても、放送関係は日本製品がないと放送できない、それは事実ですよね。そういうことからしても、気づかないところに日本の残滓というのは残っているんです。」
シン理事長は学校の花が菊だったのを日本的として韓国らしいムグンファへと変更。
さらにエンブレムも、旭日旗に似ているという理由で新たなものへと変更しました。
しかし今、学校で新たに「親日残滓」と指摘されているものがあります。
それは、カイヅカイブキという木。
韓国の学校によくみられる木ですが植民地時代に植えられたという理由で、伐採を求める声が高まっているのです。
木を切ることが、戦後の親日派の清算につながるのでしょうか?
全数調査を行った光州教育大学 キム・ドクジン教授
「そこは不安もあります。木には何の罪はない、だけど意図はあります。その木を選んだ目的や意図はあるのです。木の種類を、なぜその木を選択したか。それが侵略と関係があるからなんです。」
■偉人たちも親日残滓!?新たな分断の恐れは・・・
終戦から74年たって行われている、親日派の清算。
あの親日人名辞典には様々な分野で韓国の発展に貢献した歴史的な人物の名前も…
女性教育の充実に貢献した、梨花(りか)女子大の初代総長・金活蘭(キム・ファルラン)氏。
韓国近代文学の父と呼ばれる作家・李光洙(イ・グァンス)氏。
舞踊家の崔承喜(チェ・スンヒ)氏は「半島の舞姫」と呼ばれ絶大な人気を誇った人物です。
韓国トップクラスの大学・高麗大学(コリョ)の創立者・金性洙(キム・ソンス)氏も親日派として去年、勲章が剥奪されました。
収録された親日派の子孫が批判されるケースも報じられています。
これは新たな分断を生み出さないのでしょうか。
文在寅大統領の狙いはどこにあるのでしょうか。
親日人名辞典を編纂した民族問題研究所のパク・スヒョン事務局長は、「断罪する目的ではなく歴史的な資料」と話していました。
さらに「子孫にまで批判が及ぶ連座制は防がないといけない」とあくまで歴史的な資料として責任を明確にするためのものとしています。
韓国の文在寅大統領が曺国(チョ・グク)氏の法相任命を強行する一方で、韓国全土で行われる親日派の清算。親日派の記念碑を倒し、関係する校歌や道路名まで変えられています。2019年9月8日のBS朝日『日曜スクープ』は、その狙いはどこにあるのか、現地取材しました。