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天安門事件30年 米中対立の“原点”と“開戦直前”警告
■天安門事件30年 中国はどう動くのか
山口
米中貿易戦争は過熱する一方ですが、今月末に日本で開かれるG20首脳会議に向けて何らかの着地点が見つかるのでしょうか。今後の日本にも大きく関わってくるこの問題、最新情報を中心に分析していきます。ゲストの方々をご紹介していきます。まずは筑波大学名誉教授で中国分析の専門家、遠藤誉さんです。よろしくお願いします。
遠藤
よろしくお願いいたします。
山口
そして国際ジャーナリスト、春名幹男さんです。よろしくお願いします。
春名
よろしくお願いします。
山口
まずは今年の6月4日、天安門事件から30年という歳月が流れました。天安門事件とは一体どんなものだったのか確認していこうと思います。事件が発生したのは1989年の6月3日から4日にかけて、でした。きっかけは、この年の4月に中国共産党の改革派の指導者、胡耀邦元総書記が亡くなったことを受けて、追悼の学生たちが天安門広場に集結しました。そして、大規模な民主化要求に発展しました。これに対して、中国の共産党指導部は、運動を動乱と断じて戒厳令を布告。6月3日から4日にかけて軍を投入して武力で制圧しました。中国政府の発表によりますと、亡くなった方は319人だということです。遠藤さん、天安門事件から30年が経ちました。中国の民主化、どのようにご覧になっていますか?
遠藤
私も命をかけて、言論の弾圧がいつか無くなるだろうということで、中国の民主化、ずっと待ち続けたのですが、ますます言論の弾圧がひどくなっていって。1949年に中華人民共和国、現在の中国が誕生しましたね。その前の年1948年の5月から10月にかけて、私は長春にいまして、長春で食料封鎖を受けました。そこでは数十万人の死者を出しまして、私は餓死体の上で野宿して、恐怖のあまり記憶喪失になるという経験をしているんですね。そのことを記録としてドキュメンタリーとして書きまして、1984年に本を出したのですが。それを中国語に直ぐ翻訳して、中国の大陸で起きたことですから、餓死した50万人というのは日本人はほとんどいなくて、ほとんど全員が中国人ですので、中国人のための教訓としてこれを中国の大陸の人に知ってほしいと思って、中国語に翻訳して出版社を訪ね歩いたのですが、どんなことがあっても出版するということが許可されないで、30年待ちに待って待ち続けました。しかし、いよいよ2014年、私はこれ以上待つことはできないと、中国が民主化するのが先か私が死ぬのが先かということを考えれば、私が死ぬのが先だと思いました。実は、この包囲網を「卡子(チャーズ)」というのですが、ようやく台湾で出版するということが叶ったのですが、こうなったからにはもうブラックリストに載ってしまって、中国に行くということは非常に危険で、日本に迷惑をかけるといけないので渡航を控えているというような状況なんですね。
山口
そうですか。春名さんもこの天安門事件から30年、非常に思い入れがあると思います。アメリカは非常に厳しく見ていますよね?
春名
私は、天安門事件のときは、ちょうど共同通信のワシントン支局にいたんですが、もう、あれから30年経つんですけれども、この30年間、自分たちがしてきたことについて、アメリカ国内では相当、反省も出ているわけなんですね。と言いますのは、天安門事件が起きたときにアメリカ国内でも中国に対する非難が高まったんです。それで何をやったかと言うと、中国とアメリカの高官交流禁止、あるいは軍事交流の禁止などを決めたんですが、実はその翌月、7月にブッシュ大統領(H.W.ブッシュ)は密使を送っています。それは(当時)スコウクロフト大統領補佐官とイーグルバーガー国務副長官なんですが、鄧小平さんと接触させているんですよ。つまり、天安門事件にもかかわらず関係を保ちたい。さらに12月にもう一度同じ顔ぶれで密使として中国を訪問している。その後、7年後の1996年に台湾海峡危機が起きます。この時クリントン政権は、割合と強い態度に出て、空母の打撃群を2つ出しまして、中国は何もできなかった、引き下がったわけですね。しかし、それから何をしたかと言うと、アメリカは中国に対する経済的テコ入れをするわけなんですよ。アメリカの工場をどんどん中国に移転していくわけです。中国側もアメリカからの直接投資をどんどん受け入れるわけです。それで2001年に中国はWTOに加盟をして、中国は世界の工場になるんです。結果的にどうなったかと言うと、アメリカのものづくりが中国に相当移転をして、さらに技術まで移転するという形で、白人労働者の反発が高まり、トランプ政権が結局誕生する形になったわけなんですね。
遠藤
しかし、それを可能ならしめたのは日本なんですよ。1992年に天皇陛下が訪中いたしましたね。その前に1989年の9月あたりから、すでに日本は、西側諸国が経済封鎖をしようということで経済封鎖をしているのに、円借款を再開したり、とかですね。ついには1992年に天皇陛下の訪中ということを実現させることによって、日本もそういうことをやるならアメリカもやらなきゃ損だということで、全世界が中国に投資をするようになって、そして今日の中国の繁栄を招いて、2010年には中国のGDPの規模が日本を超えたという今日の状況をもたらした訳ですから。その意味では、この教訓は今も生きていて、一帯一路に協力するということによって、やはり中国に手を差し伸べるということがどんな結果をもたらすのか。言論弾圧を止めなければ日本は経済協力しないぞというようなメッセージを出せるのかと、日本政府は。それを出すことができない。そういう日本政府に対して私は合点のいかないという気持ちを持っております。
山口
このような30年間の歴史があるわけですけれども、川村さんはまさに30年前に天安門で取材をしていました。
川村
私は渦中で、その後もウォッチをしていまして。やっぱり中国のこれまでの発展の原点はこの中国の天安門事件にあると。その歴史的な経緯は今、春名さんと遠藤さんがお話しした、その実感として私も感じている。この時に何が起きたかと言うと、旧ソ連のゴルバチョフ大統領が中国に行くと。当時の中ソのある種、和解という形で、私は中東支局長から帰ってきたら既にもうビザを用意して、中国にゴルバチョフが行くので取材をしてくれと、“中国の今“という形で。中国がいかに地下都市になっているかということですね、映画館の下からずっと天安門の地下もそうなんですけど。ホテルがあったり、あるいは会議用の部屋があったり。従ってこの天安門事件のときに、6月3日の夜から4日にかけて、地方の人民大会堂とか毛沢東主席の記念館とか、そういうところに地下から全部、人民解放軍が入ってきたんです。それで一斉に夜に出てきて、それまでは威嚇射撃で一番上に向けて実弾ですけど撃っていたり、それがだんだん45度になり、私の目の前にいた清華大学の女性学生だったと思いますが、白いブラウスで黒いリボン、私の方にゆっくり倒れてきたんですね、銃声音とともに。私は女性なので、ある種、貧血を起こして倒れてきたのかなと思ったら、倒れた瞬間に真っ赤に鮮血が白いブラウスを染めて、これはもう危ないという形でカメラマンとともに一斉に「人民を守るための人民解放軍が住民に向けて一斉射撃を始めましたと。
ひとまずレポートをここで終わらせて頂きます」という形で北京飯店というホテルに戻った時、私の前の、ドイツのテレビ局やアメリカのテレビ局も、全てカメラマンが並ばされて「カメラのフィルムを抜き取れ、出せ」という形で検閲を全部しながら抜き取られていたんです。それで私は一言、カメラマンに「チェンジ」と言ったら、そのカメラマンは非常に機転が利いて、すぐにこれまで我々が撮影したテープを抜き取って、自分の下着の下に入れたんですね。それで新しいテープを入れ直し、我々の番が来て「出せ」と。私は「きちんと取材のビザを得た上で来ているんだ。どういう権利があって我々の取材テープを抜き取るんだ」という話をした時、「戒厳令なんだと。このテープをCCTV、中国中央電視台に持っていっても伝送はできない」と。「全部、他のカメラからも抜き取っているから出しなさい」と。非常に嫌だったんです、私は。取材テープはカメラマンが下着の中に入れて隠していたんですけど、実際にカメラごと取られてしまった。それで、そのカメラをきちっとシリアルナンバーも含めて帰国する時に返してくれるんでしょうね?という形で、預り証も受け取ったんですけど、結果的には出てこなくて。その後は、もうちょっと古いカメラで撮影をしたんですけども。明らかにこれは中国側にとってみれば、その後の30年も、無かったことにしているんですね。ですから、中国からの優秀な留学生、私が時折接したり、大学で講義を集中して行う時に、天安門事件のシンポジウムを行ったんですけど、「こういうことは中国では報じられていない。教科書には一切載せていないので私ども知らなかった」と。それで取材のビデオのテープを、例えばダビングしてくれないかということ言われたりするんですけども、一切私は応じないんです。あなたが中国にこれを持って帰った時に将来がどうなるのか分からないから。日本で色んな写真集とか勉強をして、自分で考えて帰国して自分の考え方を持って行ってくださいと。つまりは遠藤先生が先ほどおっしゃった、私もずっと見ていて日本が最初に経済制裁を解除したんですね。それは中国が経済発展すれば民主化していくだろうと。ですから、企業が引き上げてきたのを、きちんと経済を発展させる支援をすることによって、天安門事件であそこまで行ったんだからピークアウトがまた来るはずだ、ということだったんですけど。日本が経済制裁を解いたということであれば、西側諸国もアメリカも、それなら中国に経済的支援をしても、もう大丈夫なんだなという流れの中で、西側諸国もどんどん投資していった。それで昭和天皇が行けなかった中国に当時の天皇皇后両陛下が行くことによって、日中の中では歴史的なある種の転換点を生み出したということがこの30年間。しかし、共産党が一番中心にあるということが・・・。やっぱり我々が一番見逃していたのは経済が発展したから民主化人道的な部分が回復していくっていうことではなかった。共産党が強いから今の体制が維持できたということだろうと思うんです。共産党ありきの経済発展だったんじゃないか。そこにボタンの掛け違いが未だにあると思いますね。
■中ロ首脳会談 対米で“結束”確認
山口
米中貿易戦争は激しくなる一方なんですけれども、こうした中、中国の習近平国家主席がロシアを訪ました。
大木
5日、モスクワで中国の習近平国家主席とプーチン大統領が首脳会談。そして、共同声明が出されました。共同声明では、国家の安全を口実にハイテク製品の輸出を不必要に制限することに反対すると明記。さらに、トランプ政権によるイラン核合意離脱、INF全廃条約の破棄、宇宙軍の創設計画などを両国首脳が批判し、アメリカに対する共闘姿勢を鮮明にしました。
山口
春名さん、米中の対立が激しくなる中で、中ロがこのように接近している、思惑が合致してしまっている、この現状をどのように分析されますか?
春名
今回は、非常に歴史的な中ロ首脳会談だったと思います。つまり、同時にノルマンディーの上陸作戦75周年ということで、アメリカとヨーロッパの首脳が会っているわけなんです。それに対抗するような形で中ロの首脳が、新たな21世紀の同盟じゃないかとアメリカのメディアが書くほどの形で、過去になかったレベルの、高いレベルの友好を印象づけるような形になった。やはり、経済もあまり日本では触れられてないんですけれども、経済人が中国から1000人が同行しているんですね。それと、やはり、中ロ首脳会談で、例えば人民元とルーブルを貿易の決済通貨にするということも合意しました。あるいは、ファーウェイの5Gの技術開発もロシアでも行うということも合意しました。さらに、その二人が非常に賞賛したのは、中ロの貿易が往復で去年25%増えた、1000億ドルを超えた、11兆円です。非常に中ロの関係が21世紀になって新たな段階に達したということを印象づけたと思いますね。
山口
米中の狭間の中で中ロの首脳会談が行われまして、非常に蜜月関係になってきているということなんですが、遠藤さんはこの中ロ首脳会談どんなふうに分析されていますか?
遠藤
そうですね、この蜜月の度合いというのが未だかつてないほど非常に熱くなっているということは言えるのですが、私が注目したのは会談後ですね。プーチンさんが日ロの平和条約に関して突然言い始めまして、あれは難しいということを言ったわけですね。何でこのタイミングでプーチンさんがそのことを言い出したかと言いますと、実は、習近平さんの一帯一路構想、これは実は北極圏までを頭の中で描いているんですね。そうすると、北海道と北方領土が繋がってしまうと、非常に中国としては、一帯一路で北極圏まで行くというのが都合が悪くなる。だからプーチンさんに後ろから色々な操作をして、こういう経済援助もする、これもする、あれもすると言って、甘い言葉をかけて、絶対に北方四島、北方領土を日本に返還してはならないということを強く言い続けているわけですよ。従って、私は前々から習近平政権になったら最後、北方領土が戻ってくるということはないと考えるべきだということをずっと言い続けている。
山口
今、まさに遠藤さんからお話があったのですが、北極圏への中国の野望があるわけですけれども、その北極圏に関しまして、これはアメリカの国防総省なのですが、新たなこの戦略文書を発表しました。北極圏に関する戦略文書、6日、発表されたばかりです。中国は国際ルールや規範を損ねかねない方法で北極圏への関与を試みているのではないかというふうに警告を発しています。川村さん、このあたりどのように分析されますか?
川村
やはり警告を発している、その通りだと思いますね。アメリカと中国で、ある意味、これまでも言われてきたように、今、G2と言いますか、経済圏を含めて二分化していくと。それはどちらかが上に立つのかどちらが下なのかっていうことは言えませんけれど、中国は中国でやはりアジアの盟主として、なおかつ、その日本との距離も考えながら、こういうふうな対応しているんだと思うんですね。だから、日本はどちらかというと、米中のこれから狭間の中で、どういうふうに外交を取り仕切っていくのか、というのが大きな課題だと思いますけどね。
■「人民日報」が掲載 “開戦直前”の警告
山口
先月29日、中国共産党の機関紙、人民日報がかつて戦争の前に実際に使った警告の言葉を掲載しています。大木さんお願いします。
大木
はい、それがこちらになります。『アメリカは中国の反撃能力を甘く見るな」という見出しの論評の中での言葉です。日本語に訳しますと「我々が警告しなかったとは言わせない」という意味の言葉を載せたんです。遠藤さん、やはりこの共産党の機関紙である人民日報がこの言葉を載せた意味というのは大きいように感じるのですが、いかがしょうか?
遠藤
おっしゃる通りですね。何と言っても中国共産党が支配している国家ですから、その機関紙である人民日報が言ったということは、習近平さんがそのように決断を出したということでして、これは「勿謂言之不預(ヴーウェイ ・イェン・ズー・ブー・ユー)」って言うのですが、「我々が警告しなかったということなかれ」、つまり「我々が警告しなかったとは言わせないぞ」ということですね。実を言いますと、中国とインドの国境紛争があった、その前にも、それから中越戦争の前にも、この言葉を使っているんです。従って、この言葉を使うと、その後2ヶ月ぐらいすると実際に武力戦争が起きた、これまではですね。だから、今回は武力戦争ではなく決意のほどを表したものではありましょうけれども、「我々は絶対に引く気はないぞ!」という本気度を表現したというふうに考えて良いかと思います。
大木
遠藤さんにご解説いただきましたように、この言葉、過去、戦争前に使われていたんです。もう一度振り返ってみましょう。1962年9月22日付の人民日報にこの言葉が載ります。そしてその1ヶ月後です。10月20日から中国とインドの間で実際に中印国境紛争が起こりました。ヒマラヤ山中の国境を巡って、中国とインドの対立がダライラマ14世のインドへの亡命で激化し、紛争に至ったとされています。そしてもう一つ、1978年12月25日の人民日報にまたこの警告が載ります。そして翌年の2月17日から中越戦争が起こりました。1979年1月にベトナムがカンボジアに侵攻。カンボジアのポルポト政権を支援していた中国が懲罰を理由に参戦したのです。
山口
遠藤さん、実際に今回、中国がこういう過去の戦争の前に使った言葉をこのタイミングで使ってきた。これは、具体的に何を意図するものなのか、どのようにお考えになりますか?
遠藤
これは、あくまでも米中の貿易戦争、あるいはハイテク戦争に対してでございまして。一つはですね、レアアースの輸出を禁止あるいは制限するということを言っているわけですね。5月20日から習近平さんがシグナルを出して、5月の28日29日と盛んにこのレアアースを制限すると、輸出をしないと、アメリカに向かって言っているのですが、それが本気だよと、本当にそれをやるつもりだということが一つ。それからもう一つですね、米中貿易摩擦に関する中国の立場という白書が出たんですが、この白書にも書いてある通り、「信頼できない企業」のリスト。これを、ファーウェイに対して出したのと同じように、こちらもそれを出してやるぞ!ということで、対抗してやりますよということを言っているのですが、これも本気でやりますよということの、二つのことに対する意思表示だと。
山口
本気でやりますよと言ったら、レアアースの輸出制限もやりますし、この「信用できない企業」リストも本気度を出しているということですね。
遠藤
その通りです。
山口
これはそもそもアメリカがエンティティリスト、ブラックリストを出しましたよね?それへの対抗手段となるのですか?
春名
そうですね。それでアメリカの企業はどこがやられるのかというので、今アメリカのメディアでも言われているのはアップルが対象になるのではないかと。アップルは中国でのビジネスはあまりうまくいってなくて、2018年には中国でのシェアが10%くらいあったと言われているのですけど、今は7%に落ちているんですよね。そういうことで、アップルが全くファーウェイと同じような仕打ちを受けると大変なことになるということなんだろうと思いますね。
山口
遠藤さん、仮にアップルがこの「信用できない企業」リストに入れられてしまうと、相当な影響が出てきますよね?
遠藤
相当な影響が出てきますね。何故かと言いますとアップルの製品というのはご存知のように中国の大陸にある工場で作っているんですね。あのフォックスコンが作っていますので、それを締め出すということになれば、一体どこに生産工場を持っていけばいいのかということから始まって、それから、アップル製品の中国における販売台数のパーセンテージが既に下がっている状況下で、さらに中国から締め出されるということになれば、アメリカにとっては5Gの戦争において非常に不利になる。5Gっていうのは今アップルがクアルコムから半導体を購入して作ろうとしているわけですね、そこに切り替えたわけですね。それに対して一方ではファーウェイが自分自身で半導体メーカーのハイシリコンを持ちながら5G製品を作ろうとしている。従って、アップルが対抗していけるかどうかということが非常にトランプさんにとっては大きな問題なのに、そのアップルが締め出される、このブラックリストの中に入れられてしまうと、非常にアメリカにとっては痛いことになるだろうと。あとフェデックスですよね。フェデックスがファーウェイ宛の荷物を深圳にあるファーウェイに送らないでアメリカに送ったと。4個も荷物を送ってしまったことで、そこから始まったというのがありますからフェデックスは必ずこのリストに入るでしょうね。
山口
仮に本当に中国がやってくるとなれば、相当影響大きいと思うんですが?
川村
もし仮に日本がアメリカと共同戦線で中国にそういう対応してくれば、日本にだって今、レアアース60%が来ているわけですから、その影響も出てくるだろうということですから。ファーウェイやアップルの自分たちの技術がいかに守られていくかということが国レベルに発展していくことになればこれは簡単に収まらないですよね。
遠藤
ハイテク製品というのは全部レアアースを使って作られていますので、アメリカでのハイテク製品も作れなくなる。それから武器ですね。武器はもう圧倒的にこのレアアースがどんなことがあっても必要ですので、これが作れなくなる。
川村
日本も今度購入するという形で入ってきている最新鋭のステルス戦闘機F35にも中国製のレアアースが使われているわけですから。
春名
アメリカは、レアアースは実は資源としてはあるんですよ。しかし、環境を汚すので工場の稼働を止めているんですね。再開するのにやはり相当時間がかかると思います。
■米国防総省「中国共産党の指導のもと」と批判
山口
米中の対立が激しくなる一方、アメリカも国防総省が新たな発表をしました。その中での中国批判が注目を集めています。大木さんお願いします。
大木
今回、アメリカ国防総省が発表したのは、インド太平洋戦略に関する報告書で、「地域のすべての国にとっての長期的な平和と繁栄の促進を支える」と宣言しています。その中の一節です。まずはこちら、「中国共産党の指導のもと中国は他の国を抑圧する軍事近代化を行い、影響をもたらし略奪的経済学により(インド太平洋)地域を再編しようとしている」。さらにこちらです。「中国の人々は自由市場 正義 そして法の支配を熱望しているが中国共産党の指導のもと中国は秩序の価値と原則を侵害しその利益を広げることで国際システムに害を及ぼしていると」としているのです春名さん、「中国共産党の指導のもと」という表現を使用している、アメリカ側の意図というのは、何があるのでしょうか?
春名
トランプ政権になってから、国家安全保障戦略というものを出しました。それと国防戦略も出したんです。アジア太平洋地域では、どのような戦略をとるのかというのでインド太平洋戦略の報告書の発表が待たれていたんですよ。ちょうどシャングリラ・ダイアローグがシンガポールでありましたね。それに合わせて、シャナハン国防長官代行が演説をして、この内容を少し引用したんですが、その中で、中国というのはこれまでうまくアメリカとやってきたけれども、実際のところ悪いのは中国共産主義だと。どう見ても、将来的には、最終的にはレジームチェンジだと。つまり共産主義の打倒というものをアメリカとしては考えているということを示唆しているわけなんですね。非常に重要だと思います。
山口
遠藤さんはどうでしょうか、アメリカ側は「中国共産党のもと」と、「共産党」を強調してきていますよね。
遠藤
そうですね。社会主義体制という中国共産党による一党支配体制、或いは、国家資本主義ですね。そういったものを何としてでも崩そうという気持ちはよくわかりますし、私もそうしてくださればすごくありがたいなと思うんですけれども、但し、実情はかなり違っておりまして、先ほど出ていました2番目の「中国の人々は自由市場 正義 法の支配を熱望しているが」とありますが、これは過去の話でしょう。今そんな人はほとんどいませんよ。それとどちらかと言えば、アメリカが一国主義で保護主義だということで中国の国民は一致団結していて、中国こそがグローバル経済を行おうと、進めようとしているんだということで、中国は燃えていますので、特にファーウェイは民営の企業ですから、一民間企業が、国家全体の国有企業があんなに強烈にあるのに、それをはるかに上回ってファーウェイが独走していることに対して、「民営企業頑張れ」という気持ちがものすごく強いわけなんですね、中国の一般の庶民は。その民営企業をアメリカが抑圧しようとしていると、打撃を与えようとしているということに対して、全体に一致団結したものがありまして、これは非常に残念なことだと思うんですが、アメリカがファーウェイを非難することによって、逆にファーウェイと中国政府が強烈に結び付き、しかも、民衆が民営企業を応援するという形になっていて、アンチアメリカという、朝鮮戦争の時のですね、反米運動みたいなものが盛り上がってきている。そういう歌も出てきているというぐらいですね、逆の方向に行っているので、これは少しファンタジーではないかなというふうに思いますね。
山口
ご指摘のように、アメリカが共産党を名指しして批判するわけですけれども、皮肉な事に中国国内では、対アメリカということでまとまってきてしまっているということで、川村さん非常に難しいですね。
川村
改めて私、やっぱり30年前の天安門広場の取材がある種の原点として捉えるならば、あの時、中国共産党指導部のもとには、鄧小平さんは学生を動乱と決めつけて軍事力でもって排除しようとした。実際に多くのですね、中国政府は319人と言っていますけれども、私は現場で見た数から言っても少なくてもやっぱり1500人から2000人は亡くなっていると思うんですね。それが成功体験として、今の中国にあるということなんですよ。つまり、中国共産党の国家管理指導がそれ以降ずっと維持されてきている。したがって、天安門の動乱を鎮圧したのは、そのことによって今の繁栄がもたらされたという一種の成功体験で、西側諸国や我々が思っているような、普遍的な価値観というものが中国において芽生えてくれるだろう、発展していくんだろうっていうのは、もしかすると読みが甘かったらのかもしれない。そういうことが現状に繋がってきているんじゃないかと思います。
■月末にG20首脳会議 “議長国”日本は
山口
いよいよ今月の末にG20首脳会議が開かれまして、トランプさん習近平さんも大阪に来ます。一体どうなるのか。遠藤さんはどんなことを今お考えですか?
遠藤
米中首脳会談があるのかどうかということが一番私の関心事でございまして、これまで中国側はそれに対してはノーコメントと言ってきたにも関わらず、習近平さんがプーチンさんのいる前で、サンクトペテルブルグのフォーラムで「トランプさんは自分の友達である」と。こういう言葉を言うのは、米中貿易に関して一言も今まで意思表示をしたことないです。彼自身は一言も言ったことがないのに、そういうことを言って、仲違いはしたくないと、トランプさんもきっとそう思っていると思うということを言ったということがすごく注目点かなと思います。
春名
今のトランプ政権というのはイデオロギー的に考えると、政府が二つあるんですよ。つまり保守強硬派のイデオロギーであるジョン・ボルトン補佐官、彼が今は前面に出てきている。トランプさんは強硬派の主張がどんどん通っていけば自分が出てきて選挙前にディールをすると。しかし、今回のG20の後だとディールも、というふうにトランプさんは示唆していますので、そうなると今回のG20はまだ激突の時期かなと、安倍さんにとっては非常に厳しいような、まとめ上げるのは厳しいようなサミットになると思いますね。
山口
米中首脳会談はあると思いますか?
春名
米中首脳会談は一応やるんじゃないでしょうかね、トランプさんがやると言っていますのでね。
山口
川村さんいかがでしょう。
川村
私も、トランプ大統領自身がホスト国の安倍総理の心境を推し量ってやれることは協力して、米中の首脳会談もあっても私はおかしくないと思うんですね。むしろ日本の方が先日、参議院選挙の公約に外交を前面に出したわけです。強い外交で、という形で、そのことが本当に成功と言えるのかどうか。イラン外交から含めてG20まで繋がっていく。
山口
大阪でのG20で米中首脳会談はあるのか。日本はその狭間でどんな戦略を持って臨むのか大変注目されるところです。今日は皆さんどうもありがとうございました。
(2019年6月9日放送)
天安門事件から30年を迎えました。2019年6月9日のBS朝日『日曜スクープ』は、現在の米中対立の“原点”と専門家が指摘する天安門事件、そして、米中対立の最新情報をお伝えしました。中国共産党の機関紙「人民日報」は、かつて戦争前に使った警告の言葉を掲載しています。