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前総理&最高顧問が語った消費税10%引き上げ
■引き上げ表明はギリギリのタイミング
山口
ここからですね、ゲストの方々に沢山この消費税のことを伺っていきたいんですが、まずその前に今回の消費税10%への増税につきまして、大木さんから簡単に説明してもらいたいと思います。宜しくお願いします。
大木
今回の消費税10%への増税、まずはこちらから見ていきましょう。そもそもは、2012年に当時の政権与党、民主党と自民党と公明党で合意されたもので、消費税を2014年の4月に8%、そして、2015年の10月に10%に増税することで合意しました。この8%へ増税というのは予定通り2014年の4月に行われましたが、2015年の10月、これ10%に上げると約束をしていたんですが、こちら、1年延期されました。この時の理由、経済が成長軌道に戻っていないという理由が挙げられました。1年半延期されまして、2017年4月に10%へ増税される予定だったんですが、さらに2年半の延期です。この時の理由は、経済状況を挙げていました。そして今回です。こちらは増税が表明されたわけなんですが、2度、合計4年延長した末の決断ということになりました。その理由ですが、安倍総理はこんな風に話しています。「今こそ少子高齢化という国難に正面から取り組まなければならない。全世代型の社会保障制度へと大きく転換し、同時に財政健全化も確実に進めていくんだ」と今回の日程確定について話しました。そして今回の2%の増税で税収は約5兆6千億円増えると試算されているんです。その使い道が重要だと思うんですが、主に3つといわれています。まず借金返済です。借金の減額に2.8兆円程度。さらに幼稚園・保育園の無償化など、子育て世代への投資というところで1.7兆円、さらに社会保障の充実に1.1兆円ということになっています。
山口
まずですね、自民党の野田毅さん是非伺いたいんですけれども、今、大木さんからありましたように、2回延期されました。トータル4年延期されたんですけども、このタイミングでの10%の増税、ここはどう捉えていらっしゃいますでしょうか?
野田毅
もうギリギリこれ以上は延ばせないという事情が1つですね。それからタイミングからいえば、今回その環境として、実に色んな指標を見てもですね、今しかないでしょうというタイミングでもあると。元々はもっと早くからちゃんと上げても良かったと思うんですけどね。それから何よりですね、消費税が上がるということになれば、それに備えて色んな事業者がですね、1年くらい前からね、色んな準備作業に入るんですよ。それに伴って、どういうような商品開発をするのか、全く同じものを2%だけ上げることはまずないでしょう。あるいは、その中身を変えるとかね、色んな生産ラインから色んなこと、全部影響するわけ。だから、できるだけ早くアナウンスをして、早くそれに備えてもらうってことが一番望ましいわけですね。だからそういう意味で、ギリギリこのタイミング、ということで、これ以上遅らせると、準備が間に合わないということが背景にあると思います。
山口
そして、前の総理の野田佳彦さんにもぜひ伺いたいんですが、野田佳彦さんはまさにこの消費税10%の生みの親でもあるわけですよね。総理大臣当時、三党合意をされました。このタイミング、2回延期しての、4年遅れでの増税ってことが決まったわけですが、野田佳彦さんはこのタイミング、どう捉えていらっしゃいますか?
野田佳彦
いや、本来ならばもっと早く法律通りに実施をしておかなければいけなかったはずだと思います。4年も遅れたということによって財政健全化の道筋というのが相当見えなくなってしまったんですよね。本来ならば、2020年までにプライマリーバランスの黒字化という、要は、入ってくる税収の範囲で政策経費を賄って、新たな借金をしないという目標がありましたけれども、2025年まで送ったわけです。そのことも含めて、今こそ少子高齢化という国難に正面から取り組まなければならないって言っているけど、今こそじゃなくて、今こそはずっと前からあったんです。私はこれを延ばしすぎてきていると思いますし、まだですよ、まだ来年上がるかどうか私はですね、半信半疑です。3度目の正直だという人もいるけれど、2度あることは3度あるということもあります。選挙の前にまた世界経済のリスクなどと言って、たとえば、こんな準備をしているわけですから今度はやるだろうと思っているけれども、このテーマを争点にまた先延ばしをするということは過去やってきているわけですから、私は、油断はできないと思っています。
山口
確かに、過去2回そういうふうに増税を延期しました。リーマンショック級の経済危機があれば延期するというのは菅官房長官も先日おっしゃっていたんですが、野田佳彦さんとしては、まだまだ分からないぞと?
野田佳彦
わかりませんね。実際、米中の貿易戦争、こういうものがどういう影響出てくるかなど、かつて延期したときよりも、世界経済のリスクが高まる蓋然性が私はあると思いますので、そういうことを理由にまたなんか腰折れするのではないのかなという気持ちは、私は強く思っています。
山口
そうですか。そして小黒さんにもぜひ伺いたいんですが、小黒さんはこのタイミングでの増税、どういうふうにお考えになっていますか?
小黒
私も財政健全化を考えると、少しタイミングとしては、もう少し早くやって頂きたかったと。ただ、来年の夏に選挙がありますし、それから2020年にオリンピックがあるという環境を考えると、野田先生もおっしゃる通りですね、今このタイミングでやらないと、じゃあ、いつやるのか、というような状況だということだと思います。それから、あと景気循環を考えると、実は2011年11月っていうのは底だったんですけど、大体3年ぐらいのサイクルで拡張期になって少し横ばいになってまた拡張期っていう形だったんです。そうすると、6年足しますと、ちょうど2019年くらいが少し拡張期のピークかちょっと前くらいになる。ただ、オリンピックがありますので、ここで上げるっていうのが非常に良いタイミングだと思います。
山口
経済の循環から考えてもタイミング的に今だということですね?
小黒
ここでやらなかったら、いつやるのかというようなタイミングだと。
山口
それは確かに、野田毅さんと意見が一致するわけですが、野田毅さんにお伺いしたいのですけども、増税するというのは一般の方々も私も含めてですけど、当然お金を取られることになるわけですから、直感的には嫌だなっていう声があると思うんです。当然、政治家の皆さんは、それぞれの地元の有権者の声があって選ばれているわけですから、例えば自民党の中で、ここで増税されると結構困るんだよなっていう先生方はいなかったでしょうか?
野田毅
個人的に聞けば大変だと思うんでしょうね。やっぱり有権者にどうご理解を頂くかということで苦労する人もある。しかしですね、しっかりと責任を持って説明していけば、ですね、私は、単に増税だから票が減るというだけではないと。やっぱり将来に対する安心感、それから多くの国民の皆様も、自分さえよければ良いということばっかりの人ではないと思いますね。ですから、そういうことは相当変わってきている、将来に対する不安を乗り越えて行くためにも。現象的にはですね、物価の上昇なんですよ、あらゆるサービス、物の値段が2%上がりますというふうな。ですから、事柄から言えば、インフレの時にですね、そりゃあ景気が良いのかもしれませんよ、だけどインフレで物価上昇で苦しんでいる時に、その上にさらに消費税を上げてですよ、さらなるインフレということは、とてもじゃないが、現実的には自殺行為だと。逆にですね、ある程度物価が落ち着いているということは極めて大事なことなので。やっぱり国民の生活はですね、増税ばっかり言うからなんか大変だなってことになるんだけど、2%上がるんだという説明にする。そのことによってですね、社会保障に対する将来不安が多少なりとも改善されるという、大事な大事なステップを踏んでいくんだということでご理解を頂くということだと思いますがね。
山口
たしかに国民の方々・多くの方々は、確かに増税は嫌なんだけども、それがもし将来の安心感につながるのであれば、そこを明確に示してもらえるのであれば、仕方のないことなのかな、必要なのかなと思う方も多いとは思うんですよね。川村さんは、この1年前に安倍総理が閣議決定で増税の方針を示した、これはどうお感じになっていますか。
川村
これはまだ、正式に増税が決まったわけじゃないんですけれども、これまで2度、参議院、衆議院、選挙・政治という壁の中でいわば先送りをしてきた。したがって今回は先送りはできないんですよ、そのためには1年前から準備をしていかないと、また先送りをするのではないかという懸念をですね、払拭するという意味での決意表明をしたということもありますけれども、一方ではやっぱり政治の世界と景気という2つの壁がありますから、いわば実際にどうなるかっていうのは政治の世界、一寸先は闇ですから。来年以降また景気が悪化したという判断をすればですね、それは前回の時を思い出しても、伊勢志摩サミットの時に日本の景気はこんなに悪い、世界にも悪い影響を与えているという数字を示して。しかし〝これはおかしいんじゃない?リーマンショック並みではないでしょ〟って、まあ私が聞いたところではイギリスやドイツそれぞれの主張は、〝これは国内政治に対する、利用されるデータではないか〟ってことも言った人までいるんですね。
山口
川村さんがおっしゃっているのは前回の延期の時の話?
川村
そうです。ですから、そういうことが起きないということ、ある程度やっぱりきちんと示したということではですね、来年の参議院選挙の時に、わかりませんけども、これで衆参の同時選挙はないですよということをある程度示しているのかなと。しかし、解散と公定歩合は、総理大臣は別に嘘をついてもいいっていう、まあ極論いえばそういうことですから、何が起こるかわかりませんけれども、一応前回に比べたらきちっと準備をしてください、こういうことだと思いますけどもね。
■どうなる!?増税分の使い道
山口
ここからは消費増税の使い道について考えていきたいと思います。5.6兆円分が増税されるわけですが、それが一体どういうふうに使われるのか。当初は、4.5兆円は借金の返済に使って、社会保障の充実が1.1兆円ということになっていたんです。ただこれが、去年ですね、安倍総理が表明しました。借金の返済が半分になりました。新しく入ってきたのが子育て世代への投資などが1.7兆円。社会保障の充実は変わっておりません。つまり、借金の返済がググッと半分まで減ったということになるわけです。小黒さんはこの増税分の使い道、今どんなふうに捉えていらっしゃいますか?
小黒
メリット・デメリットあるんですけども、一つは今現役世代は3人に1人が非正規なんですよね、ちょうど1997年くらいに金融危機があって、今だいたい40歳くらいになっている、子供がいるわけです。その人たちはやっぱり結構かなり大学の進学とかですね、高校とか、そういった面でいろいろ困っている面があるので、そこについてケアをしなきゃいけないってことは事実としてあるんですよね。ただ、先ほどフリップの方も出ましたけれども、4.5兆円の借金の返済をする予定だったものが、1.7兆円減るわけです。これは財政の健全化、それから今後社会保障をちゃんと立て直していくというところを見ても結構大きな問題を絡んでいる可能性があって、できれば社会保障の長期的な姿と長期的な財源、これをセットで示した上で、今回のものが出てくるというものであるべきだったんじゃないかなと、私は思っております。
山口
確かに社会保障がどうなるのか、そこの道筋をもっと見たいですよね。
小黒
実は政権が出している、内閣府の経済財政の中長期予算というのがありますが、プライマリーバランスはかなり高成長シナリオであれば、2025年ぐらいにプラスになるんです。ですけれども、財政赤字の軌道を見ますと、高成長シナリオでも実は2023、25年ぐらいをピークにしてですね、財政赤字が拡大していくという推計になっていますので、財政については全く楽観視できないと、そういう状況になるという中で今回、こういう決定がれているということをよく認識すべきかなと思います。
山口
野田毅さんは同じ自民党の中なんですよね、今回のこの使い道の変更についてはおそらくおっしゃりたいことたくさんあると思うんですが、どんなことを感じていらっしゃいますか?
野田毅
うーん、まぁと当初の方針より、子育て世代で1.7兆円ですか、この額と使い道の中身をもうちょっと吟味する必要があると思いますが、必ずしも悪いことではないと思います。それはですね、もともとですね、当初4.5兆円の借金返済がもっと早く消費税の引き上げが行われていれば、この4.5兆円の借金はもっと減っていたんですよ。つまり、消費税の引き上げが遅れれば遅れるほど、この借金の返済、次に消費税を上げる時にその使い道として出てくる借金の額は増えていくという、そういう計算になるんです。ですから、ここでいきなり4.5兆円全部、借金の返済に充てるということになれば、そのことによるデフレ効果とか・・・。だけど社会保障の充実は、たとえば年金の支給にしても一応ルールにのっといてやっていますから、じわじわじわじわ増えていくわけで、いますぐお金があるからどんと増やせばいいという話ではないと。あるいは医療費にしても介護にしても増えていく。だから、ある程度それに合わせて消費税の引き上げを、ある程度ステップを踏んでやっていかななきゃいけないんです。だから社会保障の給付がずっと増えているのに消費税の財源が上がらないから、借金がずっと増えるという構図になってしまっている、というのが今日。そういう点で当面の経済の状況を考えれば、ある程度子育て世代に対する投資ができるようにしようということは悪いことじゃない。ただ中身が少子化対策という、これは法律上、野田内閣でおつくり頂いた消費税法の中に消費税の使い道として法律で決めているわけです。それは基本的には年金とかあるいは医療とか介護と。その他に少子化対策の政策に充てられるための経費。これの4番目の柱として、実は盛り込んだわけ。ですから今回この使い道が消費税法に書いてある少子化対策の施策に役に立つか、そのための施策だということで説明できるということでなければ、何でもかんでもいいんだということで使うということはできません。そういう意味でのその歯止めの中でやっていくことであれば、私は必ずしも全部否定するような話ではないだろうと思っております。
山口
野田佳彦前総理はこの使い道の転換についてはどんなことをお感じになっていらっしゃいますか?
野田佳彦
まず、当初の配分は借金の返済の方が比重が大きいんですよね。後から考えると、今回10%あげるかどうかわかりませんが、いずれまた、とてもこのままでは足りるわけではないわけですから、引き上げを随時やっていく際には、消費税は上がったと、その分、社会保障のこういう分野は目に見えてよくなったねと、何か実感ができるようにしていかないと、負担と受益の相関関係がもう少しわかるようにするためには、社会保障の充実の部分などを拡充する必要はあるのかもしれないとは思ってはいました。ただ、その思いと、今の配分、借金の返済、2,8兆円ということがいいのかどうかは、野田先生おっしゃったように、少子化対策で配分を少し増やすということは、私はこれもいわゆる高齢世代だけではなくて、現役世代の後押しも社会保障で必要だと思いますから、その手当をすることは大事だと思いますが、ただ配分の問題は冒頭、プライマリーバランスの黒字化を申し上げましたけれど、財政再建という大きな道筋をちゃんと持っているかどうかなんですよ。例えば、今さっきプライマリーバランスと言いましたけれど、公的債務残高対GDP費というのは世界の財政を比較するうえで大事な指標じゃないですか。終戦時の日本というのは、これ約200%なんですよ。それはゼロ戦作ったり、戦艦ヤマト作ったり、それは戦費調達にお金使ったからだと思います。今年度、その公的債務残高対GDP費が多分240%ぐらいになるんじゃないですか。戦車いっぱい作ったり、戦艦ヤマトいっぱい作ったりしている時代じゃないんですよ、今。でもこれ、ほとんど社会保障が今伸びてこうなってきている、という状況を目の当たりにしながら、せめてこれ以上血が流れないようにするためのプライマリーバランス黒字化という止血さえできないでいるということは、これは本当に大きな国難につながりかねないと思います。その計算をしながら配分を決めるんだったらいいんだけど、その精緻な議論は決して行われてきてはいないんじゃないかというふうに思います。
山口
野党が今回のこの増税についてどういう風な反応を示しているのか見ていきたいんですね。まず立憲民主党です。こちら枝野代表ですが、「消費不況から脱却できていない状況で消費税を上げれば経済に打撃」。共産党の志位委員長は「消費税は所得の少ない人に重くのしかかる悪税。今の経済情勢の下での増税は全くの論外」と。野田佳彦さん、枝野さんはもともと一緒にやっていらっしゃった、民主党時代の仲間です。特にこの立憲民主党は増税に反対と明確に出しているわけですが、これはどんなふうにご覧になりますか?
野田佳彦
だんだん絶滅危惧種になってきたかなと、わたくしの方がですね。そう思いますけれども、ただ、政党間での協議とかはまだよくやっていませんので、国会の議論もまだ行われていませんから、やはり、さっき申し上げた危機感については共有できると私は思いますので。一方で、経済のことを考えてのご発言だと思いますから、そこでどうやって折り合っていくかというふうに思います。
■残念ながら一体改革の精神が相当後退
山口
ここからは消費増税の目的とされている社会保障が一体どうなっているのか、大変重要なところです。
大木
増え続けている社会保障給付費ですが、今年2018年度は121兆3千億円にも及んでいるんです。これは2008年からの10年間、わずか10年間で27兆円も増えているんです。その内訳というのは年金、医療、介護、子育てですが、こちらグラフご覧いただいても、年金と医療というのが大きな割合を占めているのがわかります。この社会保障給付費は税金だけじゃないんです。みなさんからの保険料と税金でまかなわれている。しかし、給付するお金というのが右肩上がりで増え続けているのに対して、保険料というのは20年ぐらい前からでしょうか、ずっと横ばいになっているんです。やはりここには少子高齢化の影響というのが色濃く出ています。この隙間というのがどんどんどんどん大きくなっているのですが、ここを何で埋めるかというと、やはり税金ということになってしまいます。
こうした増大する社会保障費に消費税の増税を充てるわけなんですが、今回の消費税による税収、先ほどもお伝えしたように増える分は5.6兆円と試算されています。しかしです、ここから今、議論されている軽減税率によってマイナス1兆円となりますので実質残るのは4.6兆円ということになるんです。さらに地方への分配や、借金の返済に充てますので深刻な社会保障費、どれだけ補てんできるのかというのは未知数な部分があるんです。
山口
これは小黒さんが特に専門になるのでお伺いしたいんですけど、まずこの社会保障費の財源なんですけど、相当厳しいと考えたほうがいいですね。
小黒
厳しい状況です。政治家の先生方が非常に苦労されていますけれども、先ほどフリップでもありましたけれども、社会保障給付費は10年間で27兆円伸びているんですね。ほぼ直線的に伸びています。そうしますと1年間で大体平均しますと、2.7兆円なんですけれども、これ実は消費税1%を引き上げて手に入る税収と同じぐらい。先ほどもう1枚フリップがありましたけれども、保険料が大体70兆円ぐらいで。税があそこでは46.9兆円と書いておりますが、実はよく新聞で12月ぐらいに出てくる一般会計、国の予算が編成されましたっていうやつは、だいたい社会保障費過去最大で30兆円ぐらいというのが出てくるんです。でも実121兆円で、保険料の足りない部分を国と地方が埋めているんですけれども、問題は実はあれ、税じゃないということなんですよ。借金で賄った分も入れて、どうにかしのいでいると。それで今、GDP費で見た借金の残高が240%ぐらいになりそうだというような形になっています。非常に厳しい状況だというのが今のこの社会保障の姿だと。
山口
ここに出ているのは一般会計だけなんですけれども、それを取って見ても社会保障費は33%以上を占めている。大変な状況なわけなんですよね。野田佳彦さんも当然、社会保障について財源が大変厳しいということが分かった上での世論の反発があったうえでの増税を決められたわけですが、その厳しさについてはどんな認識を持っていらっしゃいますか?
野田佳彦
国民が1番不安に思っている分野というのが社会保障分野なんです。老後ですね、医療・年金・介護。最近の若い世代、現役世代は子育ての不安じゃないですか。不安を思っている分野をしっかりとサポートしていくために、財源を充てていくと。それに消費税を充てていくというのを決めたのが、社会保障の充実と安定と財政の健全化を目指した、一体改革の精神ですので、国民が一番不安に思っている分野を破たんさせないために財政的な手当てをするということを国民の皆様にしっかりとご理解を頂かなければいけないだろうと。誰かがやっぱり負担をしなきゃいけないわけですから、今、足りない部分は将来の世代のポケットに手を突っ込んで、お金を借りて、賄うというやり方が常態化しているわけですね。でも、今さえよければいいと、ずっとそんなことが続けられるわけではないですから。将来の世代が弱者にならないようにするためには社会保障の分野で保険料は上げるのか、じゃあ税の分野でどこを上げたらいいのかという議論をちゃんとやっていかなければいけないと。そのまさにきっかけになる議論を三党合意ではできたんだろうと思います。ただ残念ながらその精神は今、相当後退してしまったなと思います。
山口
確かに4年間の延期というのはあって、野田佳彦さんから見ればその精神が後退したと思います。ただいろんな議論があった上で、いずれにしても増税するぞという意思表示のところまでは来たわけですよね。野田毅さんは、この社会保障が大変厳しい中で、じゃあどうやってそれを賄っていけばいいのか、それは消費税しかないのか、そのあたりはどうお考えになりますか?
野田毅
消費税しかないと思います。社会保険料と消費税、この2つが社会保障を安定させる最大の要素です。考えてみたら、社会保険料というのは大体、直接税と一緒なんですよ、所得税やなんかと一緒ですよね、給料から天引きされて。だから消費税も消費にかかわる社会保険料と思えば、腹が立つのも半分ぐらいになるだろうと。いずれにしても両方でやらないと。特に、なぜ消費税がいいのかといえば、年金にしても医療にしても、景気変動と関係ないんですよ。だから社会保障の給付というのは非常に景気変動に強い財源を、安定財源がどうしても必要なんだ。だから所得税にしても景気変動でゴロゴロ変わる。社会保険料収入もですね、景気が悪ければ収入が落ち込むんですよ。それに対して社会保障給付というのは極めて安定性が大事な費目ですよ。
その安定財源は他に何がありますかと言われて答えられる人はいないはずです。だから逆に我々は、平成11年度(1999年度)予算から、国に入った消費税はその全額を他に回さないで老人医療、年金、それから介護、これ以外にはびた一文回しませんということをすでに平成11年度予算からスタートしたんです。目的税化をしたんです。野田総理の時にそれに加えて少子化を一つ入れたと、こういう状況。だから、その頃はこんな大きな借金は貯まっていなかった。だけど、その後、消費税引き上げだけが先延ばしている。だから本当は小泉さんの時に消費税10%になっていれば、今こんな大きな借金はないんですよ。現実問題。だから延ばせば延ばすほどそういう社会保障の安定財源がないわけだ。だから今、上げてもかなりの部分がその間の借金、つまり本来の財源がないのにやっちゃった給付をじゃあどうするんですかと。この消費税以外に安定財源あるでしょうか、ということはですね、給付の中身ももちろんあるんだけど、ワンセットでしょうね。
山口
川村さんはいかがですか?
川村
それはやっぱり国民の側も税金は安い方がいいというか、それがまず一番意識としてあって、なおかつ低所得者に厚くと、自分なりにどの政党がそのことを一番実効性のある政策として訴えているかというのが常にやっぱり選挙、政治の壁に立ちはだかってきていて、小泉純一郎元総理の時には自分が政権をとっている間は消費税を上げないと、はっきり言ったわけですね。そのあとの野田前総理と、当時の自民党谷垣総裁および公明党の山口代表との間での三党合意の原点がもうすでに私は立ち消えになっているのではないかとの感すら持っているわけです。その当時の三党合意の原点に戻って、きちんとした消費税のいわば制度設計をもう一度汲み直さなきゃいけないのかな、という感じもするんですけど、野田前総理はそのへんいかがでしょうか?
野田佳彦
あの三党合意に深くかかわった責任ある立場ですから、私は、与党も野党も社会保障という一番お金のかかる分野をしっかり持続可能性のあるものにするために、国民の皆様の負担は本当にね、あのつらいかもしれないけどお願いをして、将来に対する安心を確保しようというのが一体改革の精神で、本当の精神は、そのことを政争の具にしないということだったんです。消費税を上げてもいいですか?って言ったら、だめですよという人がもちろん多いんですよ。だから与党と責任ある立場の野党第一党がこのことについてはね、政争の具にしないと、争点にしないということをあの魂としていたはずなんですが、残念ながらその後ですね、私、1回、安倍総理と財務金融委員会で、20分しか時間なかったんですけど、討論したことがあるんです。三党合意はもう死んだんじゃないですか?と。それは政争の具にしたからですと申し上げたんです。そしたら総理はなんて答えたかというと、私は政争の具にはしていません、と。選挙の争点にはしました、と言いましたね。選挙こそ最大の政争の具じゃないですか。それが残念ながらあの、もう1回与党と野党とでこの社会保障の分野、負担にかかわる分野、しっかり建設的な議論をしていこうと空気を本当に払しょくしてしまったというふうに思います。罪深いと思いますね。
■解散を決断した“瞬間”
山口
野田前総理と言えばですね、今の安倍総理とのやりとりの中でいろんなこともありました。思えば2012年の11月、党首討論がありました。あの場所で結局あの10%に上げるという話と同時に解散という流れにもなったわけですが、一回ここでどんなやりとりがあったのかそこを見ていきたいと思います。
2012年11月14日 党首討論
野田「定数削減は来年の通常国会で必ずやり遂げる。それまでの間は議員歳費を削減する。国民の皆様に消費税を引き上げるという御負担をお願いしている以上、定数削減をする道筋をつくらなければなりません」「ぜひ国民の前で約束してください」
安倍「私たちの選挙公約において、定数の削減と選挙制度の改正を行っていく、こう約束をしています。今この場で、そのことをしっかりとやっていく、約束しますよ」
野田「後ろにもう区切りをつけて結論を出そう。16日に解散をします。やりましょう、だから」
安倍「今、総理、16日に選挙をする、それは約束ですね。約束ですね。よろしいんですね。よろしいんですね」
山口
ここで野田前総理に是非伺いたかったんですけど、これ14日の党首討論ですよね、16日に道筋がつくんだったら解散しますよと、とういうことはあの場でおっしゃいました。これは、いつ、それ思ったんですか?あの場ですか?もう16日って思っていたんですか?
野田佳彦
あの場での討論の結果を踏まえてやろうと思っていました。いや、頭には入っていましたよ、それは。そこまで約束するならば、近いうちに解散と言っていましたから、具体的に言わなければいけないだろうと。その回答を出すということは、安倍総裁が当時の安倍総裁がしっかり回答してくれる、という前提条件に立っていましたが、さっきの瞬間で、約束しますよとおっしゃったので、ならばと。思った。
山口
その瞬間で切り返したと?
野田佳彦
はい。これ、言葉だけでは、TVの中継入っていましたけど言葉だけでは危ない、と思ったんで、これ公党間で、覚書も交わしたんです。あの後に。だけどですよ、だんだん、あれ見てると腹がたってきましたけど、定数削減はね、そのあと私が3年くらいたったあと予算委員会でようやく質問したとき、10削減までやっと行ったんです。実際の実施は2020年以降ですよ、Too little、Too late なんです。加えて、最近は参議院の方で定数6増じゃないですか。
山口
そこなんですよね。
野田佳彦
これはね、私ね、本当消費税の話をやりにくくしてしまったのは、定数削減で作られる財源というのは消費税の引き上げ分と比べれば全然違うんです、数字は、数字としては。だけども、やはり永田町にいる人間として覚悟示すという意味で定数削減と言っているわけで、それさえ守らないで負担だけお願いするのはいけないということから、ああいう党首討論になっているんですけども。残念ながら守られてないし、今度は逸脱しましたよ、6増なんてね、衆と参で違うとはいえ。
山口
消費増税を国民の皆さんにお願いするからには、政治の側も身を切る改革をするんだという姿勢を示してほしかった。ということだと思うんですね。当然、これ今遅いとおっしゃいましたが、確かに衆議院においては定数削減はされました。ただ、参議院が今年の夏に「6」増えたってのは、ちょっとやっぱり違和感もつ方も多いと思うんです。これ野田毅さん、自民党の中にいてどうですか?
野田毅
いや、いろいろ内心忸怩たるものがありますよ。それはみんなありますよ。最大のネックはですね、最高裁の判決は定数問題ではないんです、1票の格差是正が最優先。1票の格差の問題がなければ、かなりやりやすいんです。作業が、このへん区割りがどうとか。ですから比例区の削減は比較的やりやすい側面はあるんだけど、この定数の話になるとまず1票の格差がね一番苦しんでいます。ですから、ここのところどうするかと。やっぱり、アメリカなんかでもですね、やっぱり憲法上、各州の割り当てが決まっています。日本の場合ない。都道府県という言葉さえ憲法にはないんですから。ですから、そういう中でね、1票の格差をどういうふうに割り振りするか、各党間あるいは自民党もそうです。党内でもまとめるのにものすごく苦労しているということが現実にある。いい悪いは横に置いといて現実を言えばそういうことです。
山口
そういうところあると思います。ただ、ただですよ、野田佳彦前総理が安倍当時の総裁とああいうふうに約束したわけですよね。それが結果としてですよ、結果だけ見るとその約束と違うことになっていると見る国民の方も多いと思うんです。
野田毅
うん、でしょうね。
山口
それはねやっぱりこれから増税するぞっていうときに、そういうのが見えると、やっぱりこれがっかりしちゃう有権者も多いと思うんですよね。そこはいかがですか?
野田毅
だからここが難しいところです。じゃあ今からそっちのほう優先するのか、また、消費税の話がまた先延ばしになる。その要因に使われてしまう。という現実がある。それはそれとして引き続き、定数是正なり、削減の問題、1票の格差是正の問題は、これと消費税の話とはできるだけ1セットにしないで何かできないんでしょうか、ということは僕は常々思っています。
■軽減税率の是非
山口
では次のテーマに行きたいんですが、軽減税率について考えていきたいんですね。この増税に合わせて軽減税率が今度導入されます。家計の負担を減らす、経済の悪影響を減らすということなんですが、軽減税率、ざっと、簡単にみなさんご存知の方多いと思うんですけども、この10%になるところが、こういう飲食料品、それから新聞も入っています。こうしたものが8%になるよ、という話なんですけども、野田毅さんは、軽減税率はそもそもあんまり評価していないんじゃないですか?
野田毅
あの、そうですね。やっぱ難しいですね。現実にその事業を行わされる方については、非常に煩瑣な作業を不可避ですね、避けられない。それから現場でも、どれが軽減税率の対象かどうかということの判断が消費者も混乱する要素がたくさんあります。ですからもっと簡素な形がいいですね、というのは個人的にはあります。ただ現実の政治論の中でですね、低所得者対策というのは、これは配慮する必要があると。ですから全部10なら10でいいんですけど、低所得者に対してどう配慮するか。こういう点で野田総理の方はいわゆる給付付き税率控除という主張をしておられるし、公明党のみなさんが軽減税率という主張であったと。で、当時中心におりました自民党の私も責任者の1人としてですね、これどっちもちょっと違うんじゃないかと、いうことがあって。若干そこは多少先延ばして、結論を先延ばしにしてですね、当面は4,000億ぐらいですかね?簡素な給付措置ということで所得差対策をやるということで消費税法を一緒にまとめたと。その後まあこういうことになったんですが、私は今、率直に言って、日本型の低所得者対策、軽減税率的な感じのですね、それは今でも個人としては持っていますけど、私がそこに行く前に、やっぱり軽減税率はやるんだという政治的な判断の方が優先したのだと、まあ結果としてご承知のようなことで、はい。
山口
野田毅さんの個人的な思いとは違う方向にいってしまったという、野田佳彦さんは軽減税率にはおっしゃりたいことはあるんですよね?
野田佳彦
やっぱり本質的にですよ、本質的に逆進性対策として、低所得者対策として有効性はない、と思います。やるんだったら先ほど野田先生がおっしゃった給付付き税額控除のほうが、まさに弱者のためにサーチライトを当てた、的を絞った政策だと思いますが、よく比較検討されてなかったと思います。加えてです、これはもう私個人の意見ですが、10%までは軽減税率も給付付き税額控除も私はやらずに、簡素な給付制度の拡充で良かったんじゃないかと。その先までの、その先の展望をして、大きな議論をやるべきだったと思いますね、どっちがいいのかも含めて。それがないままに、ということは、私はいかがなものかと、私はそういう気持ちがあります。
山口
専門の小黒さんにもぜひ伺いたいんですが、軽減税率を入れる、ひとつの理由として、経済があの調子が悪くなっちゃう、腰折れしてしまうというのを防ぐ目的もあると思います。そこのあたり2%上げるにあたって軽減税率を入れたこと、どう分析されますか?
小黒
今回、税収増4.6兆円、実質となると。本来であれば5.6兆円入る予定だった。その分、軽減税率されることによって経済ショックが和らぐということはあるんだと思います。ただ、やはりまずこの軽減税率が複雑ですから、かなり民間の活動を攪乱させるという効果と、それから一番大きな長期的な見通しの関係でさきほども社会保障の伸びがあると申しましたが、1年間で2.7兆円です。それが意味するのは、もし社会保障をきちっとコントロールしなければ、毎年消費税を1%ずつ上げるような話が必要となってくる話です。ですけれども、今回軽減税率を入れるということになると、やはり所得が高い人も低い人も軽減を受けるという形になりますので、かなり減収の幅が大きくなるということで、本来であれば、たとえば消費税25%ぐらいまで上げれば財政が安定化して、社会保障も安定化するという見通しであったものがもう少し高い一段ハードルが上がってしまうということで。やはり、きちっと財源を使い道として的を絞ったような対策というものをしたほうが本来であれば良かったんじゃないかなと、普通の経済学者の見方だと思います。
川村
山口さんね、一点われわれもマスコミにいるってことで言うと、やっぱり平等性、公平性って観点から言うと、先日の私の出版社の編集長と話していたら、なぜ新聞だけが8%に据え置かれて、しかもですよ、購読していない、例えば駅売りで駅やコンビニエンスストアで新聞を買うときは10%になるわけですよね。そういう理屈ってものをマスコミやメディアはきちっと言ってくれと。やっぱり一冊、一冊、夏目漱石全集を読み終わったら次の全集を買うという人は、これは教養、文化における軽減税率は適用されてもいいじゃないかと。新聞は教養、文化と言っているんだからと、こうゆう理論があって、そこんとこはメディア全体としても考えていかないと、些末なことではなくてですね、国民の多くが納得するかどうかってことからすると、若干私はこの制度設計は矛盾があるなと思いますよ。
野田佳彦
おっしゃる通りですね。まったくその通りで食料品と同時に新聞がそうでしょ。だから軽減税率の是非を語る際の、批判的な検討がメディア少なかったと思いますね。率直に言って、ステークホルダーなっていましたから。素晴らしいご指摘だと思います。
山口
そこはね、本当に聖域なくわれわれ言うことは、しっかり言っていかないと、やっぱり良くないと思います。
川村
いろんな新聞がありますけど、自宅で買っていればいい、購読ということは、駅で買っても読むわけですからみんな一律平等にしないといけないと思いますよ。私はあえて自分がメディアの中にいる立場としても新聞の連中とも話しますけど。
■無駄撲滅と財源確保は合わせて
山口
番組に随分、視聴者の方からFAXが来ています。大木さんお願いします。
大木
この時間までに150通を超えるご意見いただきました。まずこの消費税増税10%の賛成のご意見をご紹介致しましょう。「消費税10%賛成です。社会保障制度を考えれば少子高齢化時代ですので反対することは考えられません。ただ、10%はキリがよく計算しやすいので大賛成ですが今まで通り一律でお願いしたいと思います。面倒なことはやめてほしいです。高齢化時代なのでわかりやすく簡単がなによりです」というご意見さらに別の方です。「私は自民道を支持してきた者ですが、消費税は早く10%に上げるべきだと思っています。夫婦二人ともに国民年金のみの収入ですが、それでも将来、若い世代、日本の事を考えれば財源は消費税以外ありません。国民年金のみの生活で苦しいですが消費税は早く上げて借金を若い世代に残さないでほしいと思います」60代の女性の方からいただきました。いただいたご意見の中で、こういった賛成の意見もあったんですが、実は9割がこの消費税増税反対というご意見だったんです。反対意見もご紹介させて頂きます。50代男性の方のご意見です。「消費税を上げるのは必要だと思います。でも国民に負担を求めるなら国会議員も身を切ってほしい。現実は身を切るどころか、参議院の数を増やしたなんておかしい。財政健全化するなら消費税をあてにしないで、まずは身を切ってほしい」というご意見。続いても40代男性の方です。「増税絶対反対です。削れるところは削りきって、それでも財政成り立たないところがあるなら仕方がないところはあると思いますがそこに関しての説明がなさすぎると思います。国民に消費増税を負担してもらうなら、しっかりと説明をするべきだと思います」というご意見。さらに、「お金がなくなっても老後を施設に無料で入る保証があれば、今あるお金が使えるようになるので景気はよくなるはずだ」というご意見ありました。野田毅さんにお伺いしたいんですが、先ほど野田前総理のお話にもありました、やっぱり将来への安心感というのが非常に大切で、このあたりを含めて国民への説明責任、説明不足というのがあるのかなと感じたんですが、いかがでしょうか?
野田毅
何が無駄かということは、人によってまったく違っていると。ですからその無駄論争、これで無駄撲滅終わったと、これ、なくならないんですよ、無駄はね、見方によってね。一番私たちがつらいのはですね、まず無駄を失くそうって、これはこれでやる必要があります、徹底してね。問題は、高齢社会だけは、これ1年1年みんな高齢化していくわけで、待ってくれないんですよ。だから無駄撲滅まで消費税を上げないでおこうっていうのはいいんだけど、いやその間は税収が上がらないんなら、社会保障の給付も待っていいですかというわけにはいかない。社会保障の給付が増えていく、それに合わせてですね、安定財源を確保しておかないと、どうにもならないことはみんなわかっているので。だから、目的税。使い道を限定すると。だから消費税の使い道は一切ほかには使わないと。国会議員の財源はもちろんのことですよ。防衛費であったりね、公共事業、その他、現に今もそうなっているわけです。だから、一応、切り離しをして、そして無駄を失くそうということは常に必要なことです。時代によって大事な仕事もあれば、いらなくなった仕事もあるしですね。国会議員の今の数の話もありますが、それには、それに先立って同時にですね、じゃあ一票の格差どうするかという、これはこれで与野党・自民党だけで決めるわけにはいきません。だからそういうことは、少し時間がかかりますが、そこはちょっと切り分けて是非お願いをしたいということですね。
山口
野田前総理にお伺いしたかったんですが、野田前総理は2009年、演説だったと思うんですが、その増税する前にシロアリを退治すべきだということをおっしゃっていたと思うんです。ただ、そのあとやっぱり増税すべきだということになりましたよね。これ、政権をとって実際に中を見て、何かが野田さんの中で変わったのか、これはどうだったんですか?
野田佳彦
日本の財政の厳しさから考えると、シロアリ退治もしっかりやんなきゃいけない。同時に、国民の皆さんに負担をお願いをするほうも、これもやらなければいけない。財政の再建というのは、入るほうを増やすことと、出るほうを削ることじゃないですか。両方やっていかなければだめだということです。どっちかやってからどっちかというやり方では、どっちもやんなければいけないと。
山口
今FAXがあったように、まず無駄を失くせと皆さん思うわけですよ。実はそれは難しかった?
野田佳彦
いや難しいじゃなくて、やり続けないといけないんですよ。これからもやらなければいけない。ただ、その歳出改革の努力が見えないし、定数も参議院で増やすような状況であるから、私は今、世論は、私の政権の時よりも厳しくなってると思います。あの三党合意の時にですね、そりゃ皆さん負担は嫌だけどもだけどしょうがないねという感じになったんですよ。社会保障も穴を埋めていくんだということで、半々くらいだった賛成と反対が。今9対1でしょ。それは消費税という問題に現政権が正面から向き合ってこなかった、その怠慢の表れだと私は思っております。
川村
一方で、やっぱり国民感情からすると、国家公務員の年金は、我々サラリーマンと違って大変優遇されていると。共済年金にしても、あるいは政治家もまた年金を復活するというようなことに対して、やはり公僕である。本来は国民に奉仕する、そういう職業の人が逆にどちらかというと優遇されているんじゃないかというのが、ある種、国民の感情なのかなとも思いますよね。
■歴代政権と消費税の呪縛
大木
先ほどこのスタジオでも、野田前総理が半信半疑だとおっしゃっていた、この消費税10%への増税、また先送りされるのではないかという声があるんです。増税前の壁と言われているのが、こちらなんです。2019年、来年6~7月、夏に行われる参院選なんですね。実はこの消費税の導入や増税というのはこれまで多くの政権を崩壊させてきました。まず、振り返っていきましょう。1978年です。消費税の前身となる一般消費税を閣議決定したのがこの方でした、大平正芳総理大臣。その後導入を断念したんですが、翌年参院選で自民党は大敗しまして、その翌年の選挙中に大平総理は病死されました。そして、そのあと3%の消費税を導入したのがこの方です、竹下登総理大臣。消費税3パーセントが導入された1989年4月1日、竹下総理は、消費税導入を果せず病死してしまった、大平総理の墓前の前で消費税の実施を報告していますそんな竹下総理自身も内閣支持率が低迷し辞任に追い込まれます。ここにはリクルート事件などの影響もありました。さらに5%への増税の際は2人辛酸をなめた総理がいました。一人は増税を決めたこの方、村山富市総理大臣。導入を決めますと、翌年の参院選で惨敗し、その後辞任に追い込まれます。そして、もう一人がこちらの方です、橋本龍太郎総理大臣。消費税5%が施行されますと参院選で惨敗し、こちらも辞任しました。さらに8%の増税というのは、きょうスタジオにいらっしゃいます、野田佳彦総理大臣が決断されました。このときは民主党政権時代です。その後、解散総選挙で惨敗し政権を失うことになってしまいます。このように、消費税増税というのは、政権にとって非常に危険な決断となってきているわけです。その一方で先ほどスタジオでも話が出ましたが、消費税と距離を置いて人気を集めた総理がいます。まずこの方です、小泉純一郎総理。何を言ったかといいますと、私の任期中は消費税を上げないと明言したんです。さらにもう一人いました。この方もです、鳩山由紀夫総理。何を表明したかといいますと4年間は消費税を上げないと、マニフェストに書き、総選挙でここでは政権交代を果たしています。
山口
こうやって見てきますと、時々の政権が消費税と向き合うのですが、その政権を維持するのがいかに難しくなるのか、どれほど消費税というのが大変なテーマだということがわかるんですよね。是非この、野田毅さんのお伺いしたいのですが、野田毅さんは1972年、昭和47年に初当選してから、これ一回生のときから税調に入っていらっしゃった。46年間も政界にいらっしゃる。いろんな時々の政権の消費税増税、どんなことがあったのか、見ていらっしゃったと思うんです。いかがですか?
野田毅
やはり最初は大平さんの一般消費税の事ですね。あの頃オイルショックの後は、本当に西側世界は大変な状況。それがランブイエ・サミット(第1回先進国首脳会議1975年)ということになった。東西冷戦の極めて厳しい状況下で、西側が本当にのた打ち回った。その中で日本も比較的ドイツと並んで傷が浅かったので、あえて減税政策をやったと。これが三木内閣で、大平・大蔵大臣なんです。ですから、一刻も早く自分の責任があるうちに赤字財政を失くさなければいかんということが、その後の一般消費税ということに繋がったと。僕らもそこで2年生になっていましたけど、自民党としてヨーロッパに付加価値税調査だって言い出して、それが元で、これをやるように言ったんですが、残念だけども途中で大平さん引っ込めたんです。引っ込めたけど負けちゃったと。しかし、そのことが元で亡くなった。それが、この人がもっと元気でおってくれたらなっていうのは今でも思いますね、いろんな意味で。それから後は竹下さん、この方も、あえて自分は腹を決めて、本当にこの人は立派な方だったと思いますね。ただ残念なのは、さっきちょっと言いましたけど、小泉さんがですね、分かってたはずなんだけどね、自分の間上げないって言い切っちゃったから。だから、後で別の方から聞いた話だけど、上げなきゃいけないから俺は辞めたと、いうことをおっしゃった話があったんですよね。そういった点では公約は守った方。ちょっと残念ではあった。本当はその時に一番人気にある人がやっている時に、このことを説得してお話すべきだった。彼はもともとそういう点は分かっていたと思うんです。
川村
もともと大蔵委員会、長かったですからね。
野田毅
分かっていたけど彼は郵政民営化を優先しちゃったと、政治家の選択だった。そのころから、だんだん社会保障が借金でカバーすることに少し慣れすぎてしまったということがあるねというのは残念でしたね。野田総理の場合は、むしろ消費税が元ではなくて、別の用があってなかなかご苦労されたんじゃないかと。
山口
ぜひ野田総理にお伺いしたいんです。この8%、10%上げる、まさに生みの親でいらっしゃいます。野田さんがあの時決断してこの道筋が開かれたわけですが、一方であの時の行動がきっかけで民主党が崩壊した、政権も失ったわけですよね。これ本当に政治家って大変な仕事だなって思うんですが、今どんな事を思ってらっしゃいますか?
野田佳彦
私はですね、消費税の呪縛という文字が大きく書かれていますけども、その呪縛という言葉に終止符を打ちたかったんですよね。歴代の政権が苦労して、そして政治生命をかけて、そして、まさに政治生命のみならず命まで失われた大先輩もいらっしゃるわけで。そんなことやったら日本の財政立ち行かないと思いましたから、だから、与野党で責任を持ち合うという三党合意にしたんです。そして、これからはネクストエレクションよりもネクストジェネレーションと、次の選挙よりも次の世代を考えて、お互いに頑張っていこうじゃないかという関係に持っていきたいと思っていた。だけども、残念ながらその苦難の歴史はまた続いていると、残念ながら思います。早く、こういう呪縛という言葉が消えるようにしなければいけないと思いますね。
山口
やっぱり実際に消費税を上げる決断をまさにしたわけですけども、どうなんですか、あまりにも反動が大きいというか反発が大きいというか、まさに民主党という一つの政権が崩壊しちゃったわけですよね。
野田佳彦
それは今、野田毅先生からおっしゃりましたけども、消費税が引き上げると決めたから民主党政権が負けたとは私は思いません。あの3年3か月の業績投票の結果でバラバラ感であるとか、いろんな問題を含めて、私の時は選挙しているから。最終的には私の責任ですけども、消費税だけの問題では決してないと思います。
山口
確認ですけども、その消費税増税を決断した、でも民主党政権が崩壊したでもあの時の決断は後悔はしていないですよね。
野田佳彦
これはやらなければいけなかったことで、私は政権というのは、一内閣、一仕事と言われていますけれども、やりきることで、特に先送りをしないで、嫌なテーマでも立ち向かっていく政権でありたいと思います。今、小泉政権の話でました、あるいは今の安倍政権。私は長きをもって貴しとせず、であります。長ければいいって問題じゃなくて、長い間先送りをするっていうのは逆に罪ですから。
川村
私はその時もずっと取材をしていて、あえて一言言わせていただくと、あの三党合意のときにやっぱり谷垣さんも大蔵大臣や財務大臣経験して、はっきり言って歩調が合ったわけですね、ある種の、三党の間で。それで署名をされたということで言えば、谷垣前総裁のときにきちんと解散総選挙をやることによって、国民の信任もある意味ではお互いの政党合意の中で、その代表同士が山口さんも含めてこれで行こうと、国民に信を問うということができなかったのかなっていう気持ちはいまだにありますけどね。
野田佳彦
まったくその通りなんですね。あのカウンターパートが谷垣先生で、谷垣先生とはケミストリーあって、財政を憂う気持ちはまったく共有でしたし、谷垣先生サポートする野田毅さん他、かみ合った議論ができたんです。党派を超えて。本来ならばそのことを思って、谷垣総裁との勝負で、我々たぶん負けたと思いますけども、やるべきだったと思うんですが、残念ながら、法案成立したその日に竹島上陸があったんです、韓国のトップが。そして、その後にまた尖閣の問題が起こって、外交案件が起こったがゆえに、その時の政治空白が作れませんでした。タイミングを失しました。
山口
本当はあのタイミングですと、谷垣さんとの間で。
野田佳彦
自民党総裁選の始まる前に、信を問うというのは、私はひとつのやり方だったと思いますよ。
野田毅
まったくそうね。8月末にやっていれば、今はものすごく違った世の中になっていると思いますよ。
山口
それがその後、自民党総裁選で安倍さんが選ばれた、また変わってきたということだと思うんですが、もう一つだけ野田毅さんにお伺いしたいのですが、来年の夏に参議院選が迫ってますよね。増税をした上での参議院選、そして、その前には統一地方選がありますが選挙への影響って、やっぱり考えられるんじゃないでしょうか。
野田毅
消費税の問題だけを特化して影響がどうかというのは、ちょっと違うと思う、だってまだ増税なってないんですよ、10月ですから、むしろ皆、10月に上がるという事を前提として、あらゆるビジネスというか、あらゆる事業者の皆さんは、それに備えて準備万端、進めてきているから、間際になってもういっぺんまた変えるよって言ったら、全部、色んなね、レジから全部やり直さなければいけません。ですから、かえって私は混乱することになるだろう、だから、あまり消費税の引き上げの時期が参議院選挙があるから延びるというような議論、あんまり皆が言わない方がいいと。もうこれは決まってんだと、ほんとはもっと早くからこの問題は淡々として、8から10にするということは3党合意いろいろあるけど、3党合意に基づいてやっている事なんですから、その事をしっかり受けて、ここまで来たらあとは淡々とやる以外にないと、つまり選択肢はないと、私は思っています。よほどのことがあってもそれしかない。
川村
今の安倍さんの覚悟、その前提としては、今度の参議院選挙は、安倍総理は三選ですから、これが最後の選挙になるわけですね。なおかつ6年前の参議院選挙で自民党はかなり大勝をしているわけです。だから多少かなり議席を減らしたとしても、過半数の政治体制には影響は無いだろうという事で、自分がこの時にやるしかないという判断があるんではないかというのが我々一般的なメディアの見方です、衆参同日選挙もだからないと、それをやったらやっぱり、え?って事ですよね。
野田毅
仮にですよ、議席を減ることをみんなが当然視してみんな、しゃべっていますよね、この前が、6年前が沢山ありすぎたから。だけど、議席を自民党が減らしたとしても、消費税が上がったから減らしたな、という事は言わないで欲しい。まったく別の話で、減るものは減るんですから、これはちょっと消費税の話と選挙、少し離さないと。結び付けたい人はまたこれね、材料にして次の消費税の話にね、使いますから。
■社会保障と税からは逃れられない
山口
小黒さんは財務省の出身でらっしゃってまさに税の専門家で、これまでの歴史も色んな見方で感じていることがいっぱいあると思うんです、今までの政権と税の向き合い方どんなこと、今、感じていますか。
小黒
税はやっぱり国家の根幹ですし、他人の懐に手を突っ込んで取っていくというものなので、非常に重たいものなわけですよね。ですから、これをどうしていくか慎重にやらなければいけないというのは確かにその通りなんですけど、やはり今の内閣でもですね、2040年の社会保障の見通しというものを出しましたけども、これは今GDP比で大体21.5%とぐらい120兆円ぐらいですね、これが2040年にはGDP比で大体24%ぐらいになると。要は2.5%ぐらい膨らむのですが、GDP今大体550兆円ですから、それに2.5%掛けると大体10数兆円ぐらい。消費税換算するとやっぱり6%、5%ぐらい必要だという話になるわけです。ですので、長期的なことを考えるとやっぱり、これ、やらざるを負えないと。どの政権に代わってもですね、社会保障と税をやるということから逃れられないということで、やはりキチッとやって頂くってことが重要かなと。加えて言えば、特に若い中堅世代の政治家方の先生方は、やっぱりこの財政の問題についても危機感持っている方が増えてきている部分もあるんだと、肌感覚として。ですので、そういう意味で環境も少し変わってきているということじゃないかなと思います。
山口
本当に大事な消費税これどうするかということなんですが、安倍総理がTVカメラの前でご自身が語った場面、こちらです。
安倍総理 10月16日 総理官邸
Q.消費増税への対策はどのようにお考えでしょうか?
(※安倍総理 立ち去ろうとしたが、戻ってくる)
「それについてはまさに対策を、万全を期すために昨日、閣議決定を行いました。先に引き上げた3%引き上げた際の経験を生かしていきたいと、こう考えています」
山口
ぶら下がりで去り際に声を掛けられて戻ってきて、しゃべったということですが、ひょっとしたら選挙前にまた先送りするんじゃないかっていうふうに見る方もいると思うんですが、これは自民党の中にいても、まさに、税の事を一番詳しい野田毅さんは、どう分析されていますか?
野田毅
今は、当たり前じゃないですか。上げることは法律で決めているんです。法律で決めていることをやらないから、延期する時は言うんです。今回は決めた事をやるだけですから、決めたことをやる上で、その際に心がけなければならない関連対策をやりますと、いうことですから。引き上げることは法律で決めていることですから。ひょっとしてまた延ばすんじゃないかと、そんな議論は早く卒業して、もう上げるんだという事が決まったと。
山口
是非、野田前総理にもう一回確認したいんですが、これまでの経緯なんですけど2014年の11月に一回目の延期がありました。その後に解散しています。自民党は大勝しています、2016年6月に再延期で、その3週間後に参議院が選公示されてこの選挙でも大勝しました、先ほど野田前総理は2度あることは3度あるという事もおっしゃっていたかと思うんですが、実際どんなふうに感じていますか?
野田佳彦
普通は、これは選挙の争点にしてはいけない事じゃないですか、増税しようと思って来たけども経済が心配だから先送りしてもいいですかって政権与党が言えば、そうなのって国民そう思いますよ。じゃあ野党は何としても増税しろ、なんて言えるわけ、ないじゃないですか。そんなことを2回やって勝ったわけでしょ。その勝ちに味をしめていることが私は心配なんですよ。解散という伝家の宝刀を、そういうやり方でするという事は、私は許されることではないと思っているんですね。で2回やったわけです。3回目は無いのかと、法律で定まっているから粛々とやると野田先生はおっしゃいましたけども、ハイそうですかと私はなかなか言えませんね、過去2回あるもんで。
山口
やっぱり法律で決まっているかと言っても、それだけの負担を皆さん強いなければならないわけで…。
野田佳彦
負担をお願いするというのは、何度も何度も何度も機会がある度になぜそうするのかということを説明するのが私はトップの責任だと思いますね。消費税なんか一番そうですよ、これこそ向き合ってキチッと説明しなければいけないのに、仮に消費税を上げるとしても、私はバラマキな景気対策をやることによって、本末転倒の事をやって誤魔化すんじゃないかと。
山口
小黒さんは、先ほど、人のポケットに手を突っ込むというか、人の財布に手を突っ込んで頂くんだと、そのぐらい消費税をもらうってことは重いことなんだとおっしゃいましたけども、いかがですか、視聴者の方から厳しい言葉があるわけですよ、増税やっぱり嫌だよと、その前にやること一杯あるだろうというお話がありました、小黒さんはこの段階でもう一回再延期があるのか、そんな事をやっている場合じゃなくて早く上げなきゃいけないのか、今どんなふうに安倍総理の説明も含めて、お感じになっていますか?
小黒
私は総理がどう考えているかといのはわかりませんけども、やはり希望として、ですね、これはもう、延期する可能性があるか無いかということについては、可能性はあるんだと思うんですよ、ある程度。だけども、それは、菅官房長官も言われていましたけども、ホントにリーマンショック級のですね、ショックが有った場合ですとか、そういった場合についてはやはり、何が何でも上げるというのは絶対無いと、やってはいけないことだと思います。ですけども、私、総理に期待したいのは、これだけ社会保障、財政の問題、非常に厳しい中で、これ、もう一回先送りするのかと、次先送りしたら何が起こるかと言えば、オリンピックの後ですよね。オリンピックの後は当然景気が後退している可能性がありますから、そこで上げるって言うのは非常に難しいと私は思います。少なくとも、総理はそのことについては、わかっていらっしゃると思いますから、その意味ではやはり、今回上げるという可能性の方が私は高いんじゃないかなと。そこまで3回先送りされるほど、この消費税と財政の問題について、軽く考えられているような政治家でいらっしゃる事は無いというふうに私は思っています。
川村
疑心暗鬼になるのは、前回の消費税先送りの時もリーマンショック並み、非常に景気が落ち込んできているという、それで選挙に入ったという意味では、選挙の壁ということを今後どういうふうに捉えているっていうのが、今の段階ではまだわかりませんよね、なお且つ解釈ですから。これで今やったら景気がさらに落ち込む、景気が落ち込んで国民に迷惑がかけていいのかっていう、その辺の政治的な解釈を生む余地がこれまでの経過からあるってことは踏まえとかないといけないと思いますよ。
山口
ここで視聴者の方々からドンドンFAXが来ているんですね、大木さん紹介してください。
大木
賛否両論沢山のご意見頂いていますが、賛成の中にも非常に条件付きというものも目立っています。ご紹介しましょう。「消費税の増税については北欧の国々は20%まで上げても国民は反対せず納得している。なぜならば政治家の質の違いだと思う、北欧の政治家は、税金の使い道を国民に見える形にして、ゆりかごから墓場まで社会保障をきちんと担保している。日本の政治家は、借金の返済、社会保障の充実のためだと言いながら政争の具にして選挙のたびに増税を禁句にしてしまう。弱者対応や社会保障の充実を実現するなら私は消費税10%は賛成します」というご意見いただいています。そして、やはり反対のご意見多く聞かれました、その中でもこういったご意見目立っていました。「現状の景気で消費税を10%に上げれば景気がますます悪くなり、いま以上に消費が落ち込むと思います、私は消費税を上げるのではなく5%に引き下げ消費の喚起を促して景気を上昇させる方が良いと思います」。さらに、こんなご意見「消費税増税に反対です、税収については景気を良くして税収を増やすのが常套だと思います。増税により景気が悪化し、かえって税収が下がり、悪循環になると思います」というご意見。このあたりから皆さん景気への影響というのを心配する声が多く聞かれたんですが、ここは専門家の小黒さんに伺いたいんです、前回は3%増税されました、今回は2%実際に専門家からご覧になってどの程度、日本の景気への影響というのは出てきそうなんでしょうか?
小黒
長く見るとですね、実は難しい話になりますが、本来ある成長率がありますよね、例えば3%.2%とか今は大体1%弱ぐらいなんですけども。実は前回も、その前も97年の時も89年の時も大体1%増税すると0.7%ぐらいもしくは0.8%ぐらい成長率を引き下げると、一瞬ですね年率で言うと、そのぐらいのショックはあるんです。ですけども、その後どうなっているかというと、実は大体、元あった経済のトレンド線に戻るというような現象になっていまして、確かに一時的に痛みは、走るんですが、問題は、長期的な財源として消費税をどう考えるかということが一つと、それからもう一つ重要なことは、実は経済成長率は政権が力を入れて成長戦略を色々やっているんですけども、どんどん下がって行っているんですね。昔は4%ぐらいありましたけども、いまや1%ぐらいしかない。今後何が起こるかと言うと、地方はこれから2010年から2050年で人口が半分になるわけです、それから同時に高齢者もですね、75歳以上は2500万人ぐらい2050年頃ぐらいになります、今は100人のうち3人が実は生活保護なんですね、65歳以上の方々で。これは、実は線形で伸びていまして、今のままでのトレンドで行きますと、2050年ぐらいには100人のうち6人ぐらいになるんです。そういうような状況になるとですね、もうこれ経済的に財源として消費税を引き上げようと思ってもかなり難しい状況になると、なので出来るだけ早く増税した方が良いというのが日本の経済の実力、財政の現状だというのが日本の姿だと思います。
山口
この議論をこの後も続けて頂いて国民のみなさんが納得できるような道筋をつけてこの国をしっかりと導いて頂きたいと思います。ここまで野田毅さん、野田佳彦さん、そして小黒和正さん、どうもありがとうございました。
(2018年10月21放送)
今年2019年、暮らしに大きな影響を与えるのが10月1日からの消費税10%への引き上げです。『日曜スクープ』では、安倍総理が予定通りの引き上げを表明した直後の2018年10月21日の放送で、「社会保障と税の一体改革」法案を成立させた野田佳彦前総理と、自民党税制調査会の野田毅最高顧問をスタジオに招き、消費税と時の政権の関わりを特集しました。社会保障問題に詳しい法政大学経済学部教授、小黒一正さんもゲストに加わっていただきました。