BS朝日『バトンタッチ SDGsはじめてます』は、SDGsに取り組む個人や団体、自治体や企業にスポットを当て、SDGsに関心を寄せる若者がそこを訪ね、「持続可能な未来」への活動とその裏にある思いや気づきを学ぶヒューマンドキュメンタリー。若い彼らが受け取る「未来へのバトン」とは? 俳優・谷原章介がナビゲーターを務めます。
第2回目のテーマは「制服リユース」。この春香川県内の高校に入学した山田美羽さん(15)が、香川県高松市で地元の学校の学生服を中古で安く販売している、学生服リユースショップ「さくらや」代表の馬場加奈子(48)さんから、制服リユースから始まった地域コミュニティの在り方を学びます。
【学生服で子どもの貧困をなくす取り組み】
《制服が買えない見えない貧困》
日本で制服を採用している高校は95.7%で、公立高校の入学時にかかる費用は、制服代の他に通学用品費、教科書費、授業料など、一人あたり平均24万2,058円。そのうち制服は、冬服49,672円、夏服15,957円を占める。
山田「高校の制服を買ったとき、こんなにお金がかかるんだと驚いて、お父さんお母さんありがとうと思った」
馬場「制服が買えなくて、入学式を欠席する子もいるんです」
制服を買えないことでせっかく入学した高校に行けないなどで、社会生活に加わることができない貧困もある。馬場さんは、3人の子どもを育てるシングルマザーで、長女が中学に入学するときに経済的事情で制服が買えなかった経験があった。
「制服を少しでも安く買えることができれば…」
馬場さんが、自分が経験したことと同じことで悩んでいる人のためにと2011年にオープンしたのが、中古制服を販売する学生服リユースショップ「さくらや」だ。高校の制服のスカートは新品を買うと1万2000~4000円だが、「さくらや」では税込み3,080円で提供。どの商品も新品の約2~3割りの値段で販売している。
《中古制服を安価で販売するための工夫》
制服はクリーニングに出し、それ以外の体操服やシャツなどは地元の障がい者施設のみなさんが洗濯。体操服に縫い付けられた刺繍を取る作業は、地元のおばあちゃんが1点200円で内職し、地域の協力があってこの値段が実現できている。
山田「たくさんの人の手で、中古が新品のように生まれ変わる。たくさんの人の愛情が詰まった、中古ならではの温かさがあると思いました」
【制服リユースだけじゃない、「さくらや」の存在意義】
《シングルマザーに情報を提供》
日本のシングルマザーの平均収入は月21万5,458円、支出は21万6,402円で、毎月1,000円ほどの赤字だ。しかし母子家庭を対象とした児童扶養手当があり、子ども3人を育てる馬場さんの場合は全額支給で月額5万円の支援を受けることができた。しかし、そうした支援があることを知らなかった。
「情報を教えてくれるところがあったら」
「さくらや」では中古制服の販売だけでなく、地元の野菜やくだものを裾分けするなどで、地域の方が気軽に集える場所作りを行っている。馬場さんはお客さんと積極的にコミュニケーションを取り、シングルマザーにとっての相談相手にもなっている。
山田「困ったときに、お互いに支え合える関係ができているのは、すごくステキなことだと思いました」
《さくらやの活動は地域を越えて全国に!》
「さくらや」は、企業に回収BOXを置かせてもらう活動も行っている。(1)着なくなった制服を入れてもらう (2)さくらやが買い取り査定する (3)査定額を「子どもの未来応援基金」に寄付 (4)寄付金が子どもの支援活動に使われる。「さくらや」の取り組みに共感の輪が広がり、姉妹店は全国で55店舗。しかし回収された制服で、実際に中古として販売できるのは1割程度だという。
馬場「例え制服が回収BOXに入らなくてもいい。この活動のことを知ってもらうことが重要だと思っています。この回収BOXを見かけたことで、子どもたちに目を向け、「大丈夫?」と声をかけることができる社会にしていくことが大事です」
山田さんが受け取ったバトンは?
山田「制服が着られることは、幸せなこと。小さなことから始めて、地域にコミュニティの輪を広げていけるような大人になりたいです」
高校生の山田さんにとって身近なものである制服。そのリユースを起点にしたSDGsの取り組みに、山田さんは様々な学びがあった様子。学校の制服など、普段は気にしていなかった当たり前のことに目を向けることが、SDGsに繋がっていくだろう。
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