【インタビュー記事】SDGs第一人者、蟹江教授に聞く。SDGsの広がりと、メディアの役割

つながる絵本 パートナーシップで目標を達成しよう SDGs

社会を変えるイノベーションを、物語性をもって発信


2015年に国連で採択された、SDGs(Sustainable Development Goals 持続可能な開発目標)は現在、国はもとより個人、企業において関心が持たれ広がりを見せています。世界中で取り組み、達成すべきゴールに向けて今後、メディアにはどのような役割が求められるのか、SDGs研究の第一人者である蟹江憲史教授に伺いました。

蟹江憲史

慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 教授
編著書に「未来を変える目標 SDGsアイデアブック」(紀伊國屋書店)、「SDGs(持続可能な開発目標)」(中央公論新社)ほか多数。
■世界が目指す「未来のカタチ」
—蟹江先生はさまざまなメディアで「SDGsは『未来のカタチ』だ」と発言されていますね。
蟹江憲史教授(以下、蟹江) 2015年に国連総会で加盟国すべてが合意した目標の実現を、世界をあげて目指している、まさに「未来のカタチ」だと思います。またSDGsには17の目標と169のターゲットがありますが、それぞれの課題、重点項目は異なるわけで、やり方をカスタマイズし、多様性のある取り組みができる点も魅力です。

 

—個人も企業も関心をもち、広がりを見せている理由は何でしょうか。
蟹江 やり方に縛りがなく自由にできる点だと思います。企業の場合、目標と現実とのギャップがありイノベーションのしがいがある、という側面もあります。SDGsという大きなテーマに技術や知恵を活かして目に見える成果を生んでいくことが高いモチベーションにつながっていると思います。

 

■コロナ禍で見えた「一人ひとりの力」が世界を変えていく
—コロナ禍でのSDGsの推進はどうなっていますか。
蟹江 国連の報告にもあるようにコロナ禍でSDGsの進捗ペースは落ちました。しかしコロナ禍はさまざまな面で変革を促すきっかけにもなりました。それはSDGsにおいて必要な変革も後押し、サステナブルなものへ変換していく契機になったと思います。たとえば長い期間テレワークしたことで子どもの生活を理解したり、家事に参加したりしたことは、仕事への変化やジェンダー平等の実現につながっていくと思います。さらにもう一つは、自分の行動が社会とつながっていることを認識できました。マスクをして手を洗うことで、自分と社会を守ることができる。この体験で、たとえば気候変動も一人ひとりが電気の節約を心がけることで解決の糸口になることに気づいたと思うのです。一人ひとりの行動の積み重ねで世界を変えていけば、SDGsの目標達成も遠いものではないと思います。

 

■ストーリー性を大切にしたメディアの取り上げ方に期待
—BS朝日も参加している「SDGメディア・コンパクト」には、100社を超える報道機関が集結しています。そこでメディアはSDGsにどう向き合うべきか、果たすべき役割について伺います。著書のなかで「持続可能なエッセンスはストーリー性にある」と書かれていますね。その点メディアには親和性をもった発信の仕方があるのでしょうか。
蟹江 取り組みのきっかけ、背景、関わっている人々、その成果を追って紹介していくストーリー性を差別化の要因にすることは大事だと思います。今、個人も企業もSDGsへの関心を高めているなかで、そういうストーリーはたくさん生まれているはずです。それらを取り上げ伝えることで、モノの見方が変わるし、人々の行動を変える上でも影響力が大きいと思います。特に動画メディアはドキュメンタリー的なものでも切り口をサステナビリティなものにするとSDGsのストーリーになると思うので未来志向の要素を加えてつくると大きなインパクトが与えられるのではないかと思います。

 

■気軽に肩肘張らずに取り組めるメッセージも大切
—コンテンツの作り方、内容に期待することはありますか。
 文化人やタレントさんでもSDGsに関心のある方が増えていますから、影響力のある方と連携して、「楽しく」「肩肘張らずに」取り組もうというメッセージを送って欲しいですね。何から始めて良いのかわからない人も、一つ始めると、SDGsのテーマはつながっているので自然と行動が広がっていくでしょう。また企業にはイノベーションが進んでいるところも多くあって「このテクノロジーが浸透すると社会はもっと良くなる」といった内容を番組で取り上げていただきたいですね。すると「一緒にやろう」と声を上げる仲間が増えるはずです。そういう広がりを波及させる役割も期待したいです。
蟹江教授監修の番組
「つながる絵本 for SDGs」 毎週金曜よる8:54〜
番組の世界観は大人も楽しめる「絵本」。子どもが絵本を読み進めるように展開することで難しくなりがちなSDGsの主に企業の取り組みを分かりやすく伝えます。
語り 新津ちせ
監修 蟹江憲史(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 教授)

SDGsの目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」

 

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