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#62

愛しく切ない島の盆 鹿児島 甑島 ~15歳の夏! 祭り そして島立ち~

薩摩半島の西方約30kmに位置する甑島列島。北から上甑島・中甑島・下甑島と3つの島が連なっています。太陽が海から昇り海へと沈み、海面が様々な色に光り輝くことから、かつては「五色(ごしき)島(じま)」と呼ばれていた美しい島です。古くは8000万年前(白亜紀)の地層から形成された断崖や巨岩は圧巻。そんな荒々しい島の風景とは対照的な穏やかで人懐っこい島民たちが旅人を優しく迎えてくれます。

上甑島には、お盆の時期に「かずらたて」という伝統行事に参加するために多くの人が帰省します。「かずらたて」は、五穀豊穣を祈る里地区の伝統行事。もともとは十五夜の行事でしたが、人口が少なくなった近年は、お盆で帰省する人の多い8月13日に毎年行われています。
山から採ってきた葛カズラを束ねて長さ80mの大綱を作り、それを大蛇に見立てて地域内を練り歩きます。先頭を行くのは、思い思いの化粧・衣装の子供や若者の踊り連。大漁旗やノボリをなびかせながら、鉦や一斗缶、ほら貝の音に合わせ踊り進み、若衆を中心にした島民たちが大綱を頭上に持ち上げながら、その後ろを練り歩きます。港公園に着くと祭りは最高潮、とぐろ巻きにした大綱の上で子供や若者達が踊るユニークな祭りです。

上甑島を旅するのは作家・島田雅彦。
島民とともに「かずらたて」に参加し、祭りに熱く燃える中学三年生に出会います。また民族楽器「ごったん」を使った故郷の唄を通して、甑島列島には高校がないため中学校卒業生の多くは15歳の春に島を離れる「島立ち」を経験することを知ります。島を離れる少年たちと、それを送り出す父や母の想いとは・・・。
他にも甑島を代表する景勝地・長目の浜(国の天然記念物)の夕日の絶景、漁師が営む料理店の甑島名物キビナゴ、故郷にUターンした若者が作る懐かしくも新しい豆腐を堪能するなど、甑島の歴史や文化、暮らしを訪ねる2泊3日の旅です。