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【Episode21】“A Vida” 人生

ポルトガルには、首都リスボンの下町で歌い継がれてきた庶民の心の歌「ファド」がある。
「Fado」とは、「運命」、「宿命」を表す。大航海時代にポルトガルが植民地から故郷へ持ち帰った、アフリカの奴隷たちの舞曲が転じた歌だという発祥説もあるが、下町の安酒場など最下層の人々により歌い継がれてきた。人生の苦悩を生きる希望に変える、強いエネルギーを秘めた歌だ。遠く海の彼方に漕ぎ出した愛しい人を想う「懐かしさ」、「愛惜」、「郷愁」、「ノスタルジー」という、ポルトガル独特の感情「サウダーデSaudade」が根底に流れる。
世界にファドの名を知らしめた国民的歌手アマリア・ロドリゲス(1920~1999)から時は流れ、現代ファドの新星Carminho(カルミーニョ)のエネルギー溢れる歌声と、Mario Pacheco(マリオ・パチェコ)率いるポルトガルギターの、心に染みる演奏をじっくり堪能していただきたい。