番組表

放送内容

#111

第26回 民教協スペシャル 生きることを選んで

同上フェリーデッキ 谷田さん夫婦
地元宍道湖の夕日を見る谷田さん夫婦

水の都、島根県松江市
水の都、島根県松江市。日本で7番目に大きな湖、宍道湖に抱かれる街だ。宍道湖はシジミなどの魚介類に恵まれ、夕日が美しいことで知られる。
その宍道湖をこよなく愛し、家族とともにその湖畔に暮らす山陰放送報道部の谷田人司さん(50歳)。現在は、在宅でテレビ番組の企画立案などを担当する。
 
ALS・筋萎縮性側索硬化症
運動神経が冒され、意識は正常なまま体が次第に動かなくなる。治療法がない難病で10万人に1人が発症するとされる。取材活動に明け暮れていた谷田さんは、このALSと診断された。

病気は急激に進行。歩けなくなって程なく胸の筋肉が侵されて呼吸ができなくなり、気管を切開して人工呼吸器を装着、命をつないだ。それに伴って声を失い、食べられなくなった。

そんな谷田さんが「再び取材に出たい」と言い出した。
車椅子で移動できるうちに、取材を通じて「自分が生きる意味を探したい」というのだ。
同僚の記者や妻、佳和子(みわこ)さんの協力を得て、谷田さんは患者を訪ね歩き、一人一人の「生きる意味」についてインタビューを始めた。
 
そんな谷田さんが気になる患者がいた。松江市の隣、出雲市に住む奥井学さん(63)。
発病して9か月ほどで呼吸が苦しくなり始めていた。生き続けるためには気管切開して人工呼吸器を装着する必要がある。しかし奥井さんはためらっていた。
実は患者のうち8割ほどは呼吸困難に陥っても人工呼吸器を拒んで、あえて死を選ぶ。
家族の介護負担や進行する病気への不安がその理由だ。
生を選んだ谷田さん。奥井さんに生きることの意義を伝える。
家族のため、そして患者が生を選べる社会にするため、生き続けるべきだ、と。
 
谷田さんは車椅子で移動できるうちにどうしても取材したいテーマがあった。それはTLS・完全閉じこめ症候群についてだ。
意識が正常なまま体の動きが完全に止まり、コミュニケーションがまったくとれなくなる状態。一部の進行が早いALS患者がこの状態になる。谷田さんは自分がTLSになる可能性が高いと感じていた。
谷田さんはTLSになった東京の患者に取材を申し込んだ。
体がまったく動かないTLSになっても生きる意味はあるのか?谷田さんは記者として、
患者として自分の運命に向き合おうとしていた。
 
「共に生きよう」と語る谷田さんを 家族の愛が支えている。
カメラは宍道湖の美しい風景を背景に 生きる姿と家族の絆を見つめる。

 
※谷田人司さんは2022年10月逝去されました。
 また、奥井学さん、鴨下雅之さんも亡くなられました。

 
【初回放送】山陰放送:2012年2月11日