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#77

権力者が求めた極楽浄土
〜藤原家・足利家・徳川家〜

平安時代から人々が救いを求めたのが、極楽浄土。阿弥陀如来がおられる、はるか西にあるという苦しみのない世界です。今回は賀来千香子さんが、権力者たちが求めた極楽浄土にまつわる名所を訪ねます。
平安時代に栄華を極めた藤原道長。道長は、鴨川の西岸に壮大な寺院「法成寺」を建立し、その中に九体の阿弥陀仏を安置したお堂を建て、極楽浄土の世界を表現しました。
その姿を今に伝える唯一の場所が「浄瑠璃寺」です。境内に入れば、特別名勝に指定された美しい庭園が広がり、東側には現世を象徴する薬師如来を祀る三重塔が建ち、西側には来世を象徴する九体阿弥陀堂が佇んでいます。この庭もまた、極楽浄土を表現しているといわれているのです。九体阿弥陀堂の堂内では、一際大きな中尊を中心に、左右に4体ずつ阿弥陀如来が並ぶ荘厳な光景が広がります。この9体が示す意味とは?
室町幕府を築いた足利氏もまた、極楽浄土を追い求めていました。3代将軍・足利義満は、煌びやかな金閣寺を建立し、理想郷への願いを込めました。さらに、8代将軍・足利義政も銀閣寺に浄土への思いを込め、東求堂というお堂を建てたのです。
天下人・徳川家康もまた、浄土への強い思いを抱いていました。家康は旗印に「厭離穢土 欣求浄土」と掲げ、現世からの解放を願ったのです。徳川家と深いゆかりを持つ知恩院では、徳川2代将軍秀忠により建立された三門の楼上に特別に登らせていただきます。その中に広がる極楽の世界とは? 法然上人を祀る御影堂では、黄金に彩られた極楽浄土の世界を体感します。さらに「早来迎」の別名を持つ国宝絵画をモチーフにした「二十五菩薩の庭」を拝見します。
旅の締めくくりは、ホテルとお寺が一体となったユニークな場所へ。福岡県でミシュランガイドに掲載された料理旅館が、京都で初出店。厳選された京都の食材を使った料理を堪能し、心も体も満たされるひとときを過ごします。