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#15

都の夏の涼さがし

盆地特有の暑さで知られる夏の京都。都の人々は、千年以上前から様々な方法で、厳しい季節を乗り越えてきました。今回は賀来千香子さんが、京都の人がどんな工夫で「涼」を求めてきたのか、歴史を追って探ります。
清らかな水の涼、御手洗(みたらし)川が流れる下鴨神社。その境内で去年、再興されたのが平安時代以前からあるという古代の冷蔵庫「氷室」。実際に中に入り、涼しさを体感。また、平安貴族が真夏に氷を楽しんだ、その驚きの背景も明らかに。当時、たいへん貴重な氷は、運ぶのも命懸けだった!? 歴史に思いを馳せながら、下鴨神社境内の甘味処で、「氷室の氷」と名付けられたかき氷を堪能。
室町時代にルーツを持つという、美しい京うちわの専門店へ。意外と知らないうちわの歴史。繊細な技によってこの地で独自に発展し、日本人の美意識を色濃く残してきた京うちわ。菖蒲や朝顔など夏のモチーフの中に、なぜか雪のモチーフ?都では見て、そして季節を先取りして涼む?
江戸時代にルーツがある夏の涼を求め訪ねたのは、賀来さんが日頃から足繁く通う老舗和菓子店「鍵善良房」。涼やかな「くずきり」は お店に足を運ばないと食べられない逸品です。どのように作られているのか、その工程を特別に見せて頂くと、素材へのこだわりと職人の技に、改めて感動。
さらに、南禅寺のほど近く、岡崎エリアには、明治時代に手がけられた涼しげな水の庭がありました。「並河靖之七宝記念館」は2023年4月に保存修理事業を終え、リニューアルオープンしたばかり。ここに水の庭が作られた理由とは?さらに見た目以外の、涼しさの演出とは?
都に受け継がれた涼の工夫と出会う旅。そこには、あなたの知らない、もう一つの京都がありました。


【専門家出演者】
●京都ジャーナリズム歴史文化研究所代表 歴史作家
丘眞奈美 さん

 


 

都の夏の涼さがし
暑さで知られる夏の京都。都の人々は様々な方法でこの季節を乗り越えてきた。今回は、賀来千香子が京に受け継がれた“涼”の工夫を、時代を追って探る!

 

下鴨神社の古式冷蔵庫とは!?
最初に訪れたのは「賀茂御祖神社(下鴨神社)」。境内を流れる御手洗川は「みたらし団子」発祥の地とされているのだとか。夏の土用の丑の日には、足をつけ罪や穢れを水に流す御手洗祭が行われている。
合掌造りの「氷室」は古代の冷蔵庫で、神様へのお供え物の保管庫とされていた。2022年復元されたが本来はもっと深く、地下5~6mまですり鉢状の穴になっていたそう。地下水がたまっていて、境内に積もった雪を入れて凍らせて氷を作っていたとのこと!

 

<賀茂御祖神社>
・住所:〒606-0807京都市左京区下鴨泉川町59
・電話:075-781-0010
・公式サイト:https://www.shimogamo-jinja.or.jp/

 

平安時代 貴重な氷に命がけ!?
「かき氷」のルーツは平安時代で、宮内省には水・氷を管理する役職まであったという。宮内省が管理する氷室は、山城国に6箇所あったと伝わる。「氷室神社」付近には明治時代まで使われていた氷室の痕跡が残されており、「福王子神社」には氷を運ぶ際に亡くなった役夫が祀られている。氷を口にできない庶民は、氷を模した和菓子「水無月」を作ったそう。三角形は氷が割れた形を象徴している。
「休憩処 さるや」で「鴨の氷室の氷」を堪能した。

 

<氷室神社>
・住所:〒603-0000 京都府京都市北区西賀茂氷室町

 

<福王子神社>
・住所:〒616-8208 京都府京都市右京区宇多野福王子町52-6
・電話:075-463-0937

 

<休憩処 さるや>
・住所:京都府京都市左京区下鴨泉川町59 下鴨神社境内
・電話:075-781-0010
・公式サイト:https://www.shimogamo-jinja.or.jp/saruya/

 

室町時代 京うちわのルーツ
次に訪れたのは、1689年創業の老舗「京うちわ 阿以波」。6世紀頃日本に入ってきたうちわは、元々は扇ぐための物ではなく、貴人の顔を隠すための道具で、“魔をうち払う”という縁起物でもあったのだとか。
「京うちわ」は、一般的なうちわとは異なる差し柄の構造。この形は、南北朝時代に南朝の天皇へ大陸から伝わり、戦乱の後に京に入ってきたとのこと!「京うちわ」として確立したのは江戸時代。宮中絵師が絵付けした美しい「御所うちわ」が庶民に広がり、精細で美しい伝統が受け継がれてきた。

 

<京うちわ 阿以波>
・住所:〒604-8113 京都市中京区柳馬場通六角下ル
・電話:075-221-1460
・公式サイト:https://www.kyo-aiba.jp/

 

江戸時代 老舗の絶品くずきり
続いては和菓子の老舗「鍵善良房」へ。奥の喫茶室で、名物「くずきり」をいただいた。元々は限られた店舗のみに、黒田辰秋が手がけた「螺鈿のくずきり器」を用いて配達していたという。
「くずきり」の歴史について教えていただき、調理過程を見せていただいた!

 

<鍵善良房>
・住所:〒605-0073京都市東山区祇園町北側264番地
・電話:075-561-1818
・公式サイト:https://www.kagizen.co.jp/

 

明治時代 水の庭の仕掛け
「並河靖之七宝記念館」は、明治27年に完成した京町家の自宅・工房。母屋の奥には、まるで船に乗っているかのような気分になれる水の庭が!七代目・小川治兵衛が水の“涼”を五感で感じられるように、この庭を作ったという。
庭には水の注ぎ口が3箇所あり、重なり合う水音が変化して“涼”を感じさせるとのこと。

 

<並河靖之七宝記念館>
・住所:〒605-0038 京都市東山区三条通北裏白川筋東入堀池町388
・電話:075-752-3277
・公式サイト:https://namikawa-kyoto.jp/

 

ぜひ行きたい!アジサイの絶景
“涼”スポットがあるという「真正極楽寺 真如堂」へ。本堂の裏には、約1000株が咲き誇る紫陽花園が!
色によって花言葉が異なる紫陽花。花びらに見える部分は「ガク」で、花は中心部にある。奈良時代には万葉集に登場するなど、長きにわたり観賞用として愛されている。

 

<真正極楽寺 真如堂>
・住所:〒606-8414 京都市左京区浄土寺真如町82
・電話:075-771-0915
・公式サイト:https://shin-nyo-do.jp/