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#9.10

夏スペシャル
涼を味わう鴨川と山寺

今回は2時間の夏スペシャル。京の街を静かに流れる鴨川に沿った様々な場所で、季節の風情を感じ、いにしえの都を見守る山々に建つ寺で、はるかな物語をひもときます。
四条大橋を渡り、まず訪れたのは京料理の店「ちもと」。江戸時代の半ばより続くこの店には、谷崎潤一郎など数多くの文化人も足しげく通ったとか。常連客だった歌舞伎俳優の寄せ書きが残る、貴重な屏風(びょうぶ)も見せて頂きます。そして京の夏の風物詩として知られる、鴨川納涼床を楽しめるこの店で、同じく夏の味、鱧(はも)料理に舌鼓を打ちます。「宮脇賣扇庵(ばいせんあん)」は、江戸時代に始まる京扇子の専門店。ここで橋之助さんは「中村芝翫(しかん)」襲名に合わせ、お世話になった方に配るお祝い用の扇子を作ってもらったのだとか。さらに、涼しげな夏扇子や、歌舞伎に欠かせない舞扇子など、様々な品を拝見します。京で最も古い禅寺、建仁寺。その塔頭である「大統院(だいとういん)」に残るのは、江戸時代の名高い絵師、円山応挙が描いたと伝わる貴重な「幽霊画」。ある意味涼しさを醸し出してくれる、その表情とは…。豊臣秀吉の時代に架けられた「三条大橋」を渡り、訪れるのは「木戸孝允(きどたかよし)旧宅」。この建物の中を特別に拝見し、近くから木戸孝允も親しんだという鴨川の風景を眺めます。さらに川をさかのぼって山を登り「貴船(きふね)神社」へ。1300年あまりの歴史を重ねるという神社には、水神がまつられ、水にまつわる伝説が残されていました。そんな貴船神社の近くに店を構えるのが「貴船ふじや」。江戸時代に創業した料理旅館でこの季節に楽しめるのが、鮎(あゆ)料理。せせらぎの中、風味豊かな品々を堪能します。
そして、京の街の西にある山に建つ、平安時代に起源をもつという「三鈷寺(さんこじ)」へ。「本堂」の奥には、本尊の「金色不動尊」。そしてこの寺の名前に深くかかわる三鈷杵(さんこしょ)を見せていただきます。そのほど近くにあるのは、平安時代から時を刻む「善峯寺(よしみねでら)」。寺の本堂である「観音堂」の中には、本尊の千手観音像が収められているのだとか。さらに「開山堂」に、この寺を開いた「源算上人(げんざんしょうにん)」の像がまつられています。そんな源算上人が彫ったと伝わる、釈迦如来像が置かれた「釈迦堂」には、不思議な伝説が残されていました。京の街の北、飛鳥時代に起源を持つという「志明院(しみょういん)」。その「本堂」には、弘法大師空海が彫ったと伝わる「不動明王像」が置かれています。そんな空海が修行したと伝わる「飛竜の滝」。さらにその奥の「神降窟(しんこうくつ)」では、鴨川の源流のひとつである湧き水を拝見します。そして案内されたのは「護摩(ごま)洞窟」。橋之助さんも演じた歌舞伎の演目「鳴神(なるかみ)」の舞台となった場所としても知られます。京の夏の風物詩「五山の送り火」が行われる大文字山と深くかかわるのが「浄土院(じょうどいん)」。本堂に納められている、五山の送り火ゆかりの弘法大師空海の像や、送り火の当日、灯明とともに山に持って登るという像を見せて頂きます。
古都を潤してきた鴨川のほとりを歩いて、夏の趣を味わい、多くの信仰が育まれてきた山寺からの景色を望みながら、時代の息吹を感じます。