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古都を見守る山寺

古都を囲むように、なだらかに連なる山々は、いにしえより人々にあがめられてきました。そんな京の山に建つ寺を訪ね、そこに残されるはるかな物語をひもときます。
まず訪れたのは、京の街の西にある山に、平安時代に起源をもつという「三鈷寺(さんこじ)」。境内からは、はるか向こうに京都タワーや比叡山を望みます。「本堂」の奥に置かれているのは、本尊として大切にまつられてきた「金色不動尊」。そしてこの寺の名前に深くかかわる三鈷杵(さんこしょ)を見せていただきます。さらに、鎌倉時代に建てられた、もともとのお堂があったという場所へ。深い木々に囲まれた石段や石垣に、かつての面影を感じます。
そのほど近くにあるのは、平安時代に建てられた「善峯寺(よしみねでら)」。歴史ある門をくぐり見えてくるのが、寺の本堂である「観音堂」。中には、本尊の千手観音像が収められているのだとか。さらに「開山堂」には、この寺を開いた人物「源算上人(げんざんしょうにん)」の像がまつられているのです。そんな源算上人が彫ったと伝わる、石でできた釈迦如来像が置かれている「釈迦堂」。そこには、不思議な伝説が残されていました。
京の街の北、飛鳥時代に起源を持つという「志明院(しみょういん)」。由緒ある寺の「本堂」には、弘法大師空海が彫ったと伝わる「不動明王像」が置かれているといいます。そんな空海が修行をしたという「飛竜の滝」、さらにその奥にある「神降窟(しんこうくつ)」では、鴨川の源流とである、一滴ずつ落ちる湧き水を拝見します。そして案内されたのは「護摩(ごま)洞窟」。橋之助さんも演じたことのある歌舞伎の演目「鳴神(なるかみ)」の舞台となった場所としても知られます。そこに残されるはるかな伝説とは…?
京の夏の風物詩「五山の送り火」が行われる大文字山と深いかかわりを持つ「浄土院(じょうどいん)」。本堂に納められているのは、平安時代に作られたという「阿弥陀如来像」。その隣にあるのは、五山の送り火にゆかりの深い「弘法大師空海」の像、送り火の当日に灯明とともに大文字山に持って登るという像を見せて頂きます。
はるかな時を越え、多くの信仰が育まれてきた京の山寺。遠くを見渡す景色を望みながら、時代の息吹を感じます。