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#2

清水寺と清水焼

平安京に都が移されるよりも前から京の街を見守り、多くの人が心のよりどころとしてきた名高い寺院「清水寺」。由緒あるこの寺の深い魅力を訪ねながら、その周辺ではぐくまれてきた「清水焼」の歴史をひもときます。
清水寺へ続く参道として知られる、二年坂と三年坂。通りに沿ってのれんを掲げる風情ある店に立ち寄りながら清水寺へ。入口に堂々と立つのは「仁王門(におうもん)」。左右に仁王像が控える朱色の門をくぐり、極彩色が華やかな「三重塔(さんじゅうのとう)」から本堂に向かいます。人々を笑顔で迎える大黒天像の奥にまつられているのが、本尊の十一面千手観音像。「清水の舞台」として知られる舞台は、本尊に舞楽などを奉納するために造られた場所。「舞台造り」と呼ばれる、くぎを一本も使わずに柱を組み立てた建築様式に、匠の技を感じます。
こんこんと流れる清らかな水が、清水寺の名の由来となったという「音羽の滝(おとわのたき)」。ここには、寺の起源に関わった坂上田村麻呂(さかのうえのたむらまろ)にまつわる言い伝えが残されていました。平安時代の終わりごろからあったとされる「西門(さいもん)」。神社の拝殿のような造りをしたこの場所で、かつて都人が祈りをささげてきた理由とは…。
清水寺から続く「茶わん坂」と呼ばれる坂道には、通りに沿って、たくさんの焼き物の店が並びます。そして訪れたのは、この地で江戸時代から240年以上の伝統を受け継ぐ陶芸家の8代目である清水六兵衛(きよみずろくべえ)さん。初代から現在に至る各代の作品を見せていただき、清水寺の周りで発展した清水焼の歴史に思いをはせます。伝統を受け継ぐ「六兵衛窯」の工房も訪ね、ろくろ引きや絵付けなどの作業の様子も拝見します。大正から昭和に活躍した陶芸家、故・河井寬次郎の作品が展示されている「河井寬次郎(かわい・かんじろう)記念館」では、かつて清水六兵衛が使っていたという、貴重な登り窯を見せていただきます。さらに訪れたのは、平安時代に創建された「若宮八幡宮(わかみやはちまんぐう)」。ここは昭和24年、陶祖神(とうそじん)である椎根津彦命(しいねつひこのみこと)がまつられたことにより「陶器神社」とも呼ばれるようになったのだとか。本殿の前に並ぶのは、陶器で作られた狛犬。今も静かに、この社を守り続けます。
いにしえより人々の思いを集めてきた清水寺と、伝統を受け継ぐ清水焼の奥深さに触れていきます。