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放送内容

#95

絵画保存修復家 岩井希久子

長い時を経て風化した絵画が、再び命を吹き込まれる瞬間がある。その大役を担うのが、絵画保存修復家だ。モネ、ゴッホ、ピカソといった巨匠たちの名画を手がけ、多くの美術館や専門家から信頼を集めてきた岩井希久子。ヨーロッパの美術修復現場で培った高度な技術と、日本の美意識を融合させたアプローチが国内外で高く評価されている。
岩井が作品に向き合うときに最優先するのが、画家の込めた想いを読み取ること。技法や材料の分析も修復に欠かせない要素だが、それは画家の表現を深く理解するための手段に過ぎないという。目指すのは、画家が何を伝えたかったのかを忠実に再現し、次の世代にそのメッセージを受け渡すこと。
岩井は保存技術に革新をもたらしたことでも広く知られている。酸素を排除し窒素等を用いる「脱酸素密閉」の額装技術では、絵画の酸化による劣化を大幅に抑制し、修復後の絵画を長期間保存可能な状態に保つことができる。この技術は、作品を未来へと繋ぐ上で欠かせない要素となっている。
保存修復家としての使命を追い続ける岩井に迫った。