放送内容

#86

活動弁士 澤登翠

20世紀はじめ、映画には音がなかった。無声映画(サイレント映画)と呼ばれ、
当時、チャールズ・チャップリンなど多くのスターがスクリーンを彩った。
 
だが、日本に無声映画は存在しなかったと言われる。「活動弁士」と呼ばれる存在があったからだ。生の演奏と共に、独自に執筆した台本を用いて、作品の内容を語る活動弁士。最盛期には約8000人が活躍したが、トーキー映画の台頭により衰退した。
 
そんな活動弁士が、いま再び注目されつつあるという。デジタルにはないライブ感や独特な語りを持つ日本特有の話芸が見直されているのだ。
 
今回の主人公、澤登翠は活動弁士界を牽引するレジェンド。
大学卒業後、昭和期に活躍した名士・松田春翠の弁に魅了され師事。
以後、アメリカやフランスでも公演を行うなど、国内外で活躍。
師匠の「無声映画の灯を消さない」という思いを胸に、活動弁士の第一線を走ってきた。
これまで数多くの作品を語ってきた澤登だが、
語る作品の原作や背景など、台本を執筆するために、図書館や本屋での情報収集を徹底する。
レジェンドと呼ばれるようになっても、謙虚に映画と向き合い続ける。
そんな澤登による詩的で迫力のある語りに魅了されたファンは老若男女を問わない。
近年では活動弁士を志す若者も増えてきており、今では澤登翠一門を率いて若手弁士の育成や普及活動にも力を入れている。
 
かつては世を席巻した活動弁士を後世に広げるべく活動する澤登の日々に迫った。