放送内容

#49

能面師 宇髙景子

世界最古の舞台劇ともいわれる日本の伝統芸能、能。象徴的なのは、主役が精霊や鬼など、人ならざるものを演じるときや、男性が女性を演じるときにかける能面だ。
その能面制作に日夜打ち込んでいる、能面師・宇髙景子(43)。
例えば能面の中でも女面は、「能面のよう」という比喩があるほどに無表情なのが特徴。喜怒哀楽を形容しづらい表情に作られている。ところがこの能面、やや上に向けると「嬉しさ」や「喜び」を、やや下に向けると「悲しみ」や「憂い」を帯びたように見える。こうして、感情を露わにしない能面でありながら、わずかな動きでいくつもの表情が得られるよう繊細に仕上げていくのが、能面師の技だ。
父は能面師であり、室町時代から続く金剛流の能楽師でもあった宇髙通成。芸術大学卒業後、父を師と仰ぎ能面制作に携わるようになった。
現在、3年前に亡くした父の跡を継ぎ、能面師として活躍する傍ら、能の普及に努める宇髙。その日々を追った。