放送内容

#11

小説家 今村翔吾

今年1月、第166回直木三十五賞を受賞した『塞王の楯』。近江の国・大津城を舞台に、どんな攻めをも、はね返す石垣。どんな守りをも、打ち破る鉄砲。「最強の楯」と「至高の矛」の宿命の対決を描いた戦国小説だ。作品に貫かれるテーマは「人は何故争うのか」。戦がない世を目指し、なにがあっても破られない石垣を作ろうと励む主人公の熱い思いが、その問いを読者に投げかける。著したのは、異色の経歴をもつ小説家・今村翔吾(37)。

小学5年生の夏、古書店で『真田太平記』(池波正太郎)と出合った今村。夏休みの間に読了すると、その後も司馬遼太郎らの時代小説を読み漁り、いつしか小説家を志すようになった。
しかし大学卒業後はダンスインストラクターや作曲家として活動。「いずれは小説家になる」と周囲に公言しながらも、実際に小説を執筆することはなかった。そんな中、30歳の頃にダンス教室の生徒からの言葉に衝撃を受ける。「先生だって夢を諦めてるくせに・・・」
一念発起した今村はダンスインストラクターを退職し、本気で小説家を目指すこととなる。

あらゆる文学賞に応募しながら、デビューへの道を模索していた中、ある作品が選考委員を務めていた北方謙三の目に留まった。北方は、編集者へ今村に長編小説を書かせるよう推薦したという。そこからわずか一か月で長編小説『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』を脱稿した今村は、小説家デビューを果たすことになる。
直木賞を受賞した現在、今村は連載7本を抱える売れっ子作家。
講演に番組出演と多忙な日々を過ごす中、合間の時間はすべて執筆に費やしている。
番組が目撃したのは、常人離れした今村の執筆量。
一体なぜそこまで書くことができるのか。その日常に密着した。