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#62

永明寺(島根県)・永平寺(福井県)・神護寺(京都府)

「永明寺」(島根県)

 

「山陰の小京都」津和野に立つ永明寺(島根県)。室町時代の創建以来、政変の度に存続の危機を乗り越えてきた歴代城主の菩提寺には、自刃した悲運の武将、坂崎出羽守も眠っています。釈迦三尊像を安置する茅葺屋根の本堂は、江戸時代の再建。境内には淡島堂・秋葉堂・妙見堂という、神を祀る小さな三つの社が点在します。「石見人森林太郎として死せんと欲す」と遺言した森鴎外の墓前で、五木さんはそのひっそりとした佇まいに共感を覚えます。

  


 

「永平寺」(福井県)

 

都を後にした道元が、越前の深山幽谷に開いた永平寺(福井県)は曹洞宗大本山。樹齢数百年を超える杉木立が囲む堂宇には、道元の教えが息づきます。掃除が行き届いた伽藍はすがすがしく、常時200人以上の雲水が厳しい修行生活を送っています。坐禅はもちろん、日常生活そのものが修行だとするこの寺で、五木さんも精進料理をいただきました。食前食後に偈文を唱え、私語は厳禁。雲水と同じ作法に則って肉食を禁じた食事を噛みしめました。

  


 

「神護寺」(京都府)

 

日本屈指の紅葉の名所、高雄山の中腹に伽藍を広げる神護寺(京都府)。唐で正式な真言密教の教えを伝授された空海は帰朝後、この寺で十四年を過ごしました。同時期に唐に渡った最澄は、空海が持ち帰った密教を学ぶため、年齢も僧の位も下である空海に教えを乞うたと言います。日本仏教界の二大天才はこの地で親交を深め、やがて決別したのです。五木さんは金堂で、本尊薬師如来像に向き合います。最澄や空海も拝した一木造りの国宝です。