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#60

黒石寺(岩手県)・富貴寺(大分県)・瑞巌寺(宮城県)

「黒石寺」(岩手県)

 

北上川東岸に佇む黒石寺(岩手県)。1200年以上前、蝦夷と大和朝廷が長く激しい攻防を繰り広げた戦跡の程近くです。東北最古の寺の一つで、寺名は中興の祖である慈覚大師円仁が付近の山の黒い蛇紋石に因んだもの。「蝦夷のリーダー、阿弖流為の死から60年余り後に祀られた薬師如来坐像。その顔に浮かぶ苦渋の色から鬱積と怒りを感じます」と五木さんは呟きます。真冬に裸の男たちが本堂前で蘇民袋を奪い合う蘇民祭は、千年も続く奇祭です。

  


 

「富貴寺」(大分県)

 

富貴寺(大分県)は、国東半島に広がる寺院群の一つ。古来、自然崇拝が広がっていたこの半島に仏教が渡来し、神と仏が共存する神仏習合の地となりました。六郷満山と呼ばれた仏の里は中世に最盛期を迎えます。富貴寺は往時の面影を色濃く残し、その大堂は阿弥陀堂建築の傑作として国宝に指定されています。大堂の西側には白山神社。富貴寺の住職が代々経文を唱えてきたという社の前で、五木さんは日本人に宿る根源的な信仰の姿を実感します。

  


 

「瑞巌寺」(宮城県)

 

瑞巌寺(宮城県)は日本三景の一つ、風光明媚な松島に立つ古刹です。総門を過ぎて参道を東に逸れると、巨岩を繰り抜いたやぐら(洞窟遺跡群)が並びます。ここは墓所であり、納骨所。松島は古くから亡き人の供養をする霊地であり、その信仰が境内にも残りました。戦国時代に荒廃した寺を再興したのは仙台藩主、伊達政宗です。聖観世音菩薩立像を祀る本堂は国宝。部屋ごとに絢爛豪華な襖絵が設えられ、豪壮な堂宇に桃山美術の粋が凝縮されました。