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#28
「當麻寺」(奈良) 「柴又帝釈天」(東京)
「當麻寺」(奈良県)
當麻寺(奈良県)は、二上山の裾野の里にあります。五木さんの小説「風の王国」はこの山がモチーフ。古来、二上山は生と死の結界とされ、寺は二つの世界の要に位置します。本堂に祀られた中将姫像は、五木さんが「大和のモナリザ」と呼ぶ魅力的な表情です。中将姫は観音菩薩の加護により、寺の本尊「當麻曼荼羅」を一夜にして織り上げました。そこに描かれた極楽浄土の有り様を独特の節回しで語る絵解き説法は、芸能の原点となっています。
「柴又帝釈天」(東京都)
映画「男はつらいよ」で知られる柴又帝釈天(東京都)の正式名称は、経栄山題経寺。日蓮宗の古刹です。通称は、日蓮が自ら彫ったという板彫りの帝釈天像を本尊と祀るところに由来します。帝釈堂内殿の壁面は、法華経の説話などを描く精緻な木彫で覆われ、天女たちの表情、質感に見入った五木さんは「ルネッサンス期の彫刻に劣らない」と感嘆しました。国民的な映画の舞台の奥に、信仰に支えられた別世界が広がります。