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#359

三枝成彰(作曲家)

ゲスト×インタビュアー
三枝成彰(作曲家)× 石原正康(編集者)

1942年、兵庫県西宮市生まれ。父はNHK局員で、人気番組「のど自慢」を手掛けた人物。若いころは作曲家になる夢を描いていたが、戦争により断念した。そんな父の夢を託された三枝は、作曲家になるべく徹底した英才教育を受けて育つ。
父の導きにより、1962年には東京藝術大学音楽学部作曲科に入学。19歳で作曲した「木管五重奏曲」は、在学中に音楽之友社から出版されるなど、早くから注目を集める。しかし三枝はこの時、ある悩みを抱えながら音楽と向き合っていたという。その時の心境とは?
1980年代には、多くのドラマや映画などに商業音楽を提供し、売れっ子作曲家に。映画「優駿ORACION」「台風クラブ」、NHK大河ドラマ「太平記」「花の乱」、日本テレビ「火曜サスペンス劇場」、アニメ「機動戦士Zガンダム」シリーズなど、数多くの映画・ドラマ・アニメ・CM曲を世に送り出してきた。しかし、「ただ消費される音楽ではなく、歴史に残るものを作りたい」と考えた三枝が、その後取り組んだのがオペラだった。
1997年に初演されたオペラ「忠臣蔵」のビデオ・CDは、日本人作曲家のオペラ作品として極めて異例の世界27カ国もの国で発売され、またプッチ-ニのオペラ「蝶々夫人」の息子を主人公としたオペラ「Jr.バタフライ」は本場・イタリアでも上演、2008年には日本人初となるプッチーニ国際賞を受賞するなど、その功績は世界的にも認められている。
だが、一つのオペラを書きあげるのに要する時間は、最低でも約3年。三枝は作曲だけでなく、資金集めから歌手の出演交渉まで総合的なプロデュースを担当するうえ、興行するには億単位の費用がかり、収益を上げるのはほぼ不可能だという。これまでに投じた金額はなんと約60億円。赤字を補填(ほてん)するため私財を投じ、一時は借金が総額7億円以上になったことも…。一体、なぜそこまでしてオペラに情熱を傾けるのか?
今年10月、三枝の新作オペラが4年ぶりに公開される。台本を手掛けたのは直木賞作家の林真理子、美術は国際的にも知られる日本画家の千住博、そして演出はAKB48のプロデューサーとして知られる秋元康が担当。日本のオペラとしては異例の注目を集める話題作「狂おしき真夏の一日」は、一体どんな内容なのか? 林真理子の台本の仕上がりは? なぜ、秋元康に演出を依頼したのか? 「これが最後のオペラになるかもしれない」と語る、音楽人生の集大成にかける思いとは? 舞台の裏話から貴重な稽古の様子まで、赤裸々に語る。
インタビュアーは、編集者・石原正康。これまでベールに包まれてきた作曲家・三枝成彰の知られざる半生を、鋭くひもといていく!