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#99

なかにし礼

レコード年間売上1500万枚の金字塔を打ち立て、「天使の誘惑」、「今日でお別れ」、「北酒場」で3度のレコード大賞を獲ったなかにし礼。シャンソンの訳詞で培った言葉選びと、人々の心に響く詞の世界観が歌謡曲の新時代を拓いた。その原点には、故郷・満州(現在の中国東北部)からの決死の引揚げなどの壮絶な戦争体験が…。
作詞家としてだけでなく、小説「兄弟」、「長崎ぶらぶら節」(直木賞受賞)など作家としても話題作を執筆。
また、2度のガン宣言を乗り越え、今なお創作の現場で活躍するなかにし礼。その原動力となる平和へのゆるぎない思いとは。本人へのインタビューはもちろん、親交ある人々の証言や資料を元に、多くの人々の心を捉えたたくさんのヒット曲と共に栄光と葛藤、苦悩に満ちた人生に迫る。
今年、80歳を迎える偉大な作詞家・なかにし礼からの私たちへのメッセージとは?!
・絶望こそヒット曲の原点
「恋のハレルヤ」、「夜と朝のあいだに」など、誰も聴いたことのない斬新な詞に、時代は驚愕した。その詞に込めた思い…国に棄てられ、死と隣合わせの絶望的な引揚げ体験がもたらしたもの。
(「恋のハレルヤ」「人形の家」「あなたならどうする」他)

・訳詞と作詞との壁
立教大在学中に始めたシャンソンの訳詞は1000曲あまり。石原裕次郎との出会いが、なかにしを歌謡曲の世界に誘った。訳詞から作詞へ「いい歌を書きたい」と苦闘した日々。
(「涙と雨にぬれて」「知りたくないの」「別れの朝」「フィーリング」他)

・借金地獄からこぼれ落ちた歌の雫
絶え間なくヒット曲を量産する表の顔と、兄の常軌を逸した放蕩が生んだ借金に苦しむ裏側の苦悩。絶望と向き合うことで絞り出すようにできた歌が、やがて奇跡を呼ぶ。
(「石狩挽歌」「心のこり」「さくらの唄」「時には娼婦のように」他)

・昭和に別れを告げて
昭和の大スター・美空ひばりと石原裕次郎に「遺書」のような詞を贈った後、「僕の歌は昭和に対する恨みの歌、満州への望郷の歌だった」と気づいた。50代から小説の道へ。
(「われとわが身を眠らす子守唄」「わが人生に悔いなし」「風の盆恋歌」他)