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#61

吉田 正

高度成長期の日本を代表する作曲家、吉田 正。
洗練されたそのメロディは、都会派、あるいは都会調と呼ばれ多くのヒット曲を世に送り出した。吉田は言う。「先輩たちの作り上げてきた歌のパターンに足を取られずに、なんとか自分のオリジナリティを出していきたい」。その強い思いから造り出された斬新な吉田メロディは、日本経済を支えた人々の心を癒し、勇気づけた。
「有楽町で逢いましょう」(フランク永井)「誰よりも君を愛す」(和田弘とマヒナスターズ・松尾和子)などの都会派歌謡は、単にメロディが洗練されていただけではなく、「サンドイッチマン」「ティールーム」といった、それまでの歌謡曲にはなかった斬新な言葉が詞として用いられ、高度成長期に入った日本の首都・東京の当時の姿を映し出すものとなっている。
また、そのオリジナリティは青春歌謡でも発揮され、多くの若者たちを魅了し、元気づけた。「いつでも夢を」(橋幸夫・吉永小百合)「美しい十代」(三田明)など。さらに吉田には、リズム歌謡と呼ばれるジャンルもある。「恋をするなら」「あの娘と僕」「恋のメキシカンロック」いずれも歌手は橋幸夫。サーフィン、スイムリズム、ロックンロールを取り入れ、現代のJ-POPの礎ともいえるリズム歌謡は新しいものに挑戦し続けてきた吉田ならではのレパートリーと言える。
2400を越える曲を送り出した吉田正。国民栄誉賞の事由ともなった「吉田メロディ」とはどのようなものなのか、そしてそのオリジナリティはどのようにして生まれたのか、さらになぜ吉田メロディは今も多くの人々を魅了し愛唱され続けるのか?
それらの謎を解くために今回、吉田正の門下生の歌手たちをはじめ、作詞家、親族らのインタビューと代表的な楽曲を紹介しつつ、昭和ヒット歌謡を生み出した希代の作曲家吉田正の人生と『吉田メロディ』の魅力に迫る。