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#55

遠藤実

昭和を代表する作曲家・遠藤実。遠藤が世に送り出した楽曲は5000曲といわれ、多くの歌は今も私たち日本人の心を捉えてやまない。それは、遠藤の手掛けた歌の多くが、その時代を映し、そこに生きる人々の魂を揺さぶったことにある。戦後の貧しさの中でも、夢を諦めずに生きる大切さを人々に教えてくれた、こまどり姉妹の『浅草姉妹』。戦後、民主主義が定着し、若者たちが未来に向けて夢を育むことができた時代に、学園ソングとして舟木一夫が歌った『高校三年生』。高度経済成長の訪れとともに、女性の社会進出の勢いも盛んとなる中で、彼女たちから圧倒的な支持を受けた、山本リンダの『こまっちゃうナ』。オイルショックによる経済成長が終息し、遠く故郷を離れ、都会で働く人々の心に響いた、千昌夫の『北国の春』など。世相を反映し、常に庶民の心に寄り添い、愛された“遠藤メロディー”の数々。それは「歌えば歌うほど」「聞けば聞くほど」に生きてくる魂の歌であった。
貧しかった少年時代、高等小学校高等科を卒業後に勤めた工場で歌手を夢見た時代、上京しても歌手としては芽が出ず、流しの暮らしを送る日々、そして、歌手を諦めた折、藤島桓夫『お月さん今晩わ』の思いもよらぬヒットで作曲家として歩み始めた時代、レコード会社を立ち上げながらも、そこを去らねばならなかった挫折…。遠藤は、常に逆境に置かれながら、歌を愛し続け、弱者を応援し、昭和を代表する作曲家となった。今回、当時の彼を知る、第一線の歌手たち、作詞家、親族らのインタビューと代表的な楽曲を紹介しつつ、昭和ヒット歌謡を生み出した希代の作曲家・遠藤実の心の遍歴と、遠藤メロディーの魅力に迫る。