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まさか!「ゼロ打ち」3つ!?

4月28日午後8時。緊張の瞬間がやってきました。衆議院3補選の投票締め切り時間、即ち「日曜スクープ」開票速報コーナーの始まりです。テレビ朝日の「選挙ステーション」では、何度となく経験していますが、いつでも緊張する瞬間です。

 

 

「日曜スクープ」はこれまで、自民党の裏金問題を疑惑段階から5カ月近く報じてきました。それだけに、「裏金事件」の影響を強く受けた今回の3補選はしっかり伝えたいという思いがスタッフや出演者にはありました。

 

「日曜スクープ」の放送時間は午後7時から午後8時54分まで。午後8時から放送する開票速報コーナーは、番組後半の50分ほどにどれだけ内容の濃い放送ができるかが勝負になります。そして、そのポイントは「ゼロ打ち」です。

 

「ゼロ打ち」とは、事前の取材や出口調査を基に、開票率0パーセントで「当選」を報じること。「当選」が決まった選挙区のトークをどれだけ展開するかが、番組の構成を左右します。放送4日前の段階では、1つの選挙区だけ「ゼロ打ち」が出せるとの情報がありました。そのため、2選挙区の結果が出ていない状況で、スタジオで議論する構成を考えていました。

 

ところが、投開票当日にまったく異なる情報が入ってきたのです。まず、2選挙区で「ゼロ打ち」の可能性があるという情報です。一方、残る東京15区は接戦なので、「ゼロ打ち」は「まずない」という予測でした。夕方、その前提で「日曜スクープ」の構成台本が出来上がり、キャスターと打ち合わせを行いました。2選挙区の「ゼロ打ち」が出るというだけでも、午後8時以降は候補者、政党幹部のコメントなど様々な情報が入ってくるため、臨機応変に対応しなければなりません。普段の放送とはまったく違う、即応態勢を取る段取りをキャスターと確認しました。

 

キャスターは打ち合わせの後、出演用の衣装へ着替えに行きます。その間、制作陣はスタジオ台本の仕上げにかかります。そんな時でした。接戦が伝えられていた東京15区でも、立憲民主党の候補が大差でリードしているという情報に接したのです。ただ、大差でリードしていても「ゼロ打ち」を打てるとは限りません。あくまで、可能性があるというだけで、番組構成のパターンがより複雑になったということです。

 

午後7時から「日曜スクープ」は通常通り始まりました。番組前半は、きめ細かな伝え方に定評のある「ウクライナ情勢」です。私たち制作陣は、番組制作をコントロールする副調整室、いわゆる「サブ」でモニター越しにスタジオを見守っています。そして、午後8時少し前でしょうか、わずかに想定していた、驚きの情報が入ってきました。3選挙区すべてで「ゼロ打ち」になるというのです。

 

 

そこから、サブ内は少し混乱しました。最も可能性が低いと見られていたのが、3選挙区の「ゼロ打ち」だったからです。台本の順番を入れ替え、コーナーの要点を一言でまとめたサイドテロップなどを書き換えなければなりません。そして、3選挙区の「ゼロ打ち」とはいえ、困ったことに東京15区の当選速報を伝えられるようになるまで、若干のタイムラグがありました。そのため、一旦「立憲が3連勝」と書き換えたサイドテロップをすぐには放送できず、別の文言を用意するなど、いくつかの対応を迫られたのです。

 

 

さらに、想定以上のことが次々と起きます。当選者のバンザイや喜びのコメントVTRがどんどんサブに届きました。その度に、サブからスタジオへ進行を変更する指示が出ます。視聴者の皆さまも時々、キャスターが次の進行に迷っているシーンを見るかと思いますが、まさに、スタジオやサブでは次々と入る情報やVTRに対応しようとドタバタしているのです。後で知ったことですが、3勝した立憲民主党の岡田幹事長も3選挙区の「ゼロ打ち」は想定外で、午後8時に党本部にいなかったそうです。

 

そして、午後8時54分。多少の混乱はありましたが、キャスターやゲスト出演者は落ち着いて対応していました。誤報は無く、最新の情報とそれに応じた深い解説をしっかり放送できました。地上波の開票速報より少ない人員の「日曜スクープ」で、よくぞここまで適切に伝えられたと思います。こうした奮闘もあり、4月28日はいつもより多くの視聴者に番組を見ていただいたようです。テレビ画面の向こうにはこうして汗をかいている人間がいることをわかっていただけるとありがたいです。

 

今後も様々な選挙があります。日曜の午後8時をまたぐ「日曜スクープ」にぜひご期待ください。

 
 
「日曜スクープ」プロデューサー 江口英明

 
 
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