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#293

明治の要人をもてなす迎賓御殿
~三重・桑名市「諸戸氏庭園」続編~

今回は三重県桑名市にある「諸戸氏庭園」の続編。資産家・諸戸清六が明治中期に造った庭園には、大隈重信ら明治の要人たちがたびたび訪れており、清六と中央の太いつながりを物語っています。清六自身は極めて倹約家でしたが、莫大な私財を投じて桑名に水道を引くなど社会事業家としても知られ、中央からの賓客のもてなしにも財を惜しみませんでした。
美しい庭園内の迎賓のエリアには、玄関及び座敷、御殿の広間、そして洋館などが建ち、全て国重要文化財に指定されています。玄関の車寄せは、まるで巨大な武家屋敷。しかしなぜか、沓脱の土間も式台もなく、階段を上がっていきなり現れる床は寄木張りとなっています。その構成には、かつて皇居内にあった明治宮殿との類似性が見られます。たびたび訪れた大隈重信らの進言が推察される造形です。極め付きは100畳の御殿広間。庭を美しく見せるために盛土をして床を上げ、柱間5間の広大な開口部を造り上げています。
金泥・銀泥を用いた霞の壁が目を惹く大床や巨大な一枚板を用いた床脇の地板など贅を尽くした広間は、まさに究極のもてなし空間です。

 
案内人:小沢朝江(東海大学工学部教授)

取材先情報

・諸戸氏庭園
桑名市太一丸18 TEL:0594-25-1004
【開館日時】
・春と秋のみ一般公開
・月曜休園(月曜が祭日の場合は翌日休園)
 ※詳しくはHPまで http://www.moroto.jp/
【入館料】
 大人500円、子ども(小学生以下)200円、幼児(3歳以下)無料
【アクセス】
〔鉄道〕
JR・近鉄・養老鉄道「桑名駅」から「市内循環バス寺町」下車・徒歩で約10分