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#288

“方円”デザインに込めた茶道の館
~京都・宇治市「松殿山荘」~

今回は京都府宇治市の「松殿山荘」を訪ねます。風光明媚な丘陵地帯に広大な敷地を有する松殿山荘は、高谷宗範という茶人が大正8年から昭和9年にかけて造営した壮大な庭園と、その中に建つ茶室を中心とした様々な建築群の総称です。高谷宗範は本名を恒太郎といい、長い間検事や判事など法曹関係の官吏を勤めていた人物です。趣味で茶の湯を始めたことから、退職後は茶道に専念し、小堀遠州の流れを汲む茶の湯を研究したのち、自らの流派を立ち上げました。宗範は当時主流とされていた「小間の茶(草庵式)」に対して、「広間の茶(書院式)」を主眼とする茶道を目指し、「山荘流」と名付けました。建物の設計から作庭に至るまで全て自らが行い、その設計コンセプトを「心は円満に丸く、行いは正しく四角く」という“方円”デザインに込めています。玄関から広間の大書院に至るまで至る所にあしらわれた方円デザイン。格式の中にモダンな意匠が融合する極めて独創的な名建築です。
 
案内人:矢ヶ崎善太郎(大阪電気通信大学工学部教授)

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茨垂木いばらたるき
唐破風に用いられる曲線状の垂木。

取材先情報

・松殿山荘(公益財団法人 松殿山荘茶道会)
〒611-0002 京都府宇治市木幡南山18 TEL:0774-31-8043
【開館日時】
随時実施いたします(年末年始、8月中は休荘です)。
10名様以上でご希望の2週間前までにご連絡の上、お申し込みください。
入荘料:1,500円(見学のみ)
※詳しくはホームページhttp://www.shoudensansou.jpまで
 
【アクセス】
・JR奈良線、京阪電鉄宇治線 木幡駅下車 東へ約1km 徒歩約20分