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#247

小津安二郎の愛した海辺の宿
~日本映画の聖地「茅ヶ崎館」~

今回は神奈川県茅ケ崎市に残る「茅ヶ崎館」を訪ねます。気候温暖で風光明媚な茅ヶ崎が、全国的に注目を集めるのは明治32年。「南湖院」という旧結核療養所の誕生がきっかけでした。国木田独歩を始めとした著名な療養者の存在が、その名を一躍高めたのです。同時に見舞客のための旅館が建ち始めるようになった茅ヶ崎は当時普及し始めた海水浴レジャーのための海浜旅館の流れと相まって発展していきます。今回紹介する茅ヶ崎館はそんな時代から営業を続けてきました。一方、風光明媚な茅ヶ崎は、市川團十郎や川上貞奴などの芸能文化人たちの別荘地としても知られていました。昭和11年に松竹大船撮影所が誕生すると、映画関係者が茅ヶ崎館に逗留するようになります。世界的映画監督・小津安二郎もそのうちの一人です。秋から春にかけて「中2階棟2番」の部屋に泊まり込み、多くの名作の脚本を書き上げました。彼の愛した部屋には、長逗留で残した生活の痕跡が当時のままに残り、世界中の小津ファン憧れの部屋となっています。以前湘南には多くの海浜旅館が建っていましたが、現存するのは茅ヶ崎館ただひとつ。“日本映画の聖地”ともいえる茅ヶ崎館は、茅ヶ崎の文化歴史をそのまま伝える貴重な資料です。

取材先情報

・茅ヶ崎館
神奈川県茅ヶ崎市中海岸3-8-5  TEL:0467-82-2003
チェックイン:午後3時
チェックアウト:午前10時
無料駐車場完備
交通:JR東海道本線 茅ヶ崎駅(南口)下車
徒歩20分・ タクシー 1メーター
コミュニティバス「えぼし号」サザン通り中央7下車 徒歩3分
【車】東名高速道路 
厚木IC→国道129号線→国道134号線 40分
※無料駐車場あり