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#228

巨大な3階蔵を持つ旧家の屋敷
~東京・日の出町「羽生家住宅」~

今回は東京多摩の日の出町に建つ「羽生家住宅(上羽生)」を訪ねます。羽生家は育林などを生業にしてきた旧家で、かつては名主も務めていました。明治15年に起こった大火で辺り一面が焼き尽くされましたが、明治中期に再建された主屋を中心にした壮大な屋敷構えは健在です。主屋、離れ、土蔵、薬医門など敷地内に一体となって現存する姿は、明治の素封家の住居として東京では大変貴重な存在となっています。屋敷に近づくとまず目を惹くのは「大門」と呼ばれる巨大な薬医門。さらに驚くのが大門の脇に建つ3階建ての蔵です。その規格外の巨大さは、じつに10tダンプ48台分の容積を誇ります。羽生家には合計6棟の土蔵があり、そのうちの3棟は大火事にも焼け残った江戸時代のもの。土蔵が火事に強いことがまさに実証されました。大門を潜ると正面に現れるのが立派な式台玄関を持つ主屋。大型農家風にも思えますが、土間の入口がなく縁が回されているため、近代和風建築の要素も見られます。建物以外にも多くの古文書や絵画が保存され、幕末から昭和に至るまでの歴史的人物や芸術家たちの記録も残されています。羽生家住宅には、伝統と近代を併せ持つ旧家ならではの歴史がありました。

取材先情報

・羽生家住宅(上羽生)
東京都西多摩郡日の出町大久野1205(羽生会館・伊奈沢天神社向かい)
※個人宅につき原則非公開ですが、
通りから薬医門や土蔵を眺めることは可能です。
なお無断立ち入りはご遠慮ください。