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#227

都心の一等地に残るスパニッシュの豪邸
~新たな試みで蘇る「九段ハウス」~

今回は、都心の一等地に残る「九段ハウス」を訪ねます。九段ハウスは、実業家・山口萬吉が昭和2年に建てたスパニッシュ様式の大邸宅です。現在は多目的ビジネススペースとして活用されています。この建物を特徴づけているのは、設計に携わった建築家の豪華さにあります。構造設計を担当したのは、東京タワーを造ったことで知られる内藤多仲。内藤は当時画期的な「壁式鉄筋コンクリート造」を打ち出した建築家です。彼が構造設計したこの建物は、90年以上を経た現在でも耐震性に全く問題がないと言われています。意匠設計は、「旧久松伯爵邸(現 萬翠荘)」や「愛媛県庁舎」など、多くの名建築を残した木子七郎。木子は自邸をスパニッシュで建てるなど、当時流行のスパニッシュ様式に最も長けていた一人でもありました。その他、意匠デザインに今井兼次、家具デザインには梶田恵という当代一流のメンバーが参画しています。玄関を入ると目を奪われるのは大理石をふんだんに使った豪華な設え。壁式構造特有の重厚感を感じさせない美しいデザインには、計算し尽くした木子の設計理念が伺えます。一流建築家たちの高度な技術が凝縮された九段ハウスには、上質な時が流れています。

取材先情報

・kudan house 九段ハウス(旧山口萬吉邸)
東京都千代田区九段北1丁目15−9
交通機関
電車:地下鉄 東京メトロ九段1番出口から徒歩5分(約400m)
※会員制ビジネスサロンのため、一般の方の見学・利用は要予約。
実施予定のイベントプログラムは公式サイトにて随時公開