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#223

新たな使命で輝く 箱根の別荘建築
~「正眼寺 本堂」と「強羅環翠楼」~

今回は神奈川県箱根に建てられた旧別荘を、異なる用途で継承する2軒の建物を紹介します。1軒目は成蹊学園の創立に関わった実業家・今村繁三の建てた別荘を、昭和7年に移築し本堂として活用する「正眼寺」。外観はあくまでお寺の本堂ですが、軒周りの庇などに住宅の趣が残されています。内部にも立派な須弥壇が増設されていますが、二間続きの座敷は極めて格式の高い書院造りで、別荘時代の建物がそのまま活用されています。座敷には金箔の貼られた狩野派の襖絵も残され、美術愛好家としても知られる今村繁三の好みが伝わります。2軒目は、三菱を起こした岩崎弥太郎の3男・康弥が建てた別荘を、旅館として活用する「強羅環翠楼」。もともと個人の別荘だっただけに、内玄関が併設された玄関には、いかにも住宅然とした趣が感じられます。現在客室として使われるかつての客間は、岩崎家らしく華美な設えを排した正統的な書院造り。起伏のある自然のままの広大な庭園を一望にする客室は、訪れた人を別世界へと誘います。旅館として増築した客室棟も優れた意匠が施され、昭和天皇や多くの文人墨客を魅了しています。正眼寺と強羅環翠楼は、新たな使命で輝き続ける名建築です。

取材先情報

・正眼寺
神奈川県足柄下郡箱根町湯本562
TEL:0460-85-5638
開門  8:00
閉門  16:00
交通機関
電車:最寄り駅は箱根登山鉄道 箱根湯本駅
タクシー…箱根湯本駅より4分
路線バス…箱根湯本駅から箱根登山バス(K路線)約4分「曽我堂上」バス停下車
※本数30分に1本程度。

・強羅環翠楼
神奈川県足柄下郡箱根町強羅1300
TEL:0460-82-3141
チェックイン  15:00
チェックアウト 10:00
※宿泊プランによりチェックイン時間が異なる場合は
プラン内容に準ずる
交通機関
電車:箱根登山鉄道 強羅駅より徒歩3分(送迎サービス無)