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#211

武蔵野の面影留める旧家
~屋敷林と共に守られた「顧想園」~

今回は東京都・東久留米市に残る、村野家住宅「顧想園」を訪ねます。近年都心のベッドタウンとしても発展を続ける東久留米市。顧想園は市街化が進む東久留米市の中にあって、数少ない武蔵野の原風景が残されたお宅です。およそ4000坪の敷地内には、天保9年(1838)に建てられた主屋を始め、計7棟が国登録有形文化財となっています。周囲に押し寄せる宅地開発の波からこの敷地と建物を守り抜いたのは、5代目当主の村野啓一郎氏。その遺志を受け継いで、今も村野家のご家族が個人宅としてこの顧想園を守り伝えています。建物だけではなく、鬱蒼と茂る屋敷林も含めて当時のままに残し続ける努力には、頭が下がる思いです。明治14年建築の立派な藥医門の先に姿を現すのが、大きな茅葺屋根が目を惹く主屋。東久留米市内に残る唯一の茅葺屋根だそうです。内部もほぼそのまま残されていますが、古い時代に成された改修や移築増築の歴史は、住居の変遷を知る上でも重要な存在となっています。とりわけ幕末期の「武州世直し一揆」で受けた襲撃の跡は、生きた歴史資料としても貴重です。時代を超えて受け継がれてきた顧想園は、まさに武蔵野の歴史を語り伝える名建築です。

取材先情報

・顧想園(村野家住宅)
東京都東久留米市柳窪4丁目15-41
TEL:042-344-6735 (平日9:00-17:00)
特定の日時に開催される見学会を除き、非公開です。
見学会の情報は顧想園ホームページにてお知らせされます。
交通:
【電車】西武新宿線 小平駅より徒歩20分
【バス】西武バス「武21」系統 柳窪一丁目より徒歩11分
(西武池袋線 東久留米駅 または JR中央線 武蔵小金井駅から

※上記以外の情報については、公開出来ません。