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#204

坪内逍遥 終の“舞台”
~文豪が設計した熱海の別邸「双柿舎」~

今回は静岡県・熱海市に残る「双柿舎」を訪ねます。双柿舎はシェイクスピアの翻訳家としても知られる文豪・坪内逍遙が、亡くなるまでの15年間を過ごした終の棲家です。庭に2本の柿の木があったことから“双柿”舎と名付けられました。大正9年頃に主屋が建てられ、その後離れや書屋が増築されています。一見オーソドックスな和風建築に映る主屋と離れの外観ですが、内部には至る所にセオリーを超えた自由な遊び心が見て取れます。じつは双柿舎の建物を設計したのは何と逍遥自身。舞台美術も手掛けていた逍遥らしく、伝統にとらわれない独創的な造形を生み出しているのです。特に目を惹くのは、多宝塔のような鉄筋コンクリート造3階建ての書屋。搭の先端には、ヨーロッパの古城を思わせる銃眼付きの胸壁が施され、屋根は宝形で反りを持つ日本風。さらに壁には花頭風の窓を設え、基礎部分には“亀腹”と呼ばれる膨らみをつけて中国風にまとめています。坪内逍遥の自由な発想が生み出した“和洋中”折衷建築です。1階部分の書庫中央に設えられた階段を上って3階へ行くと、そこは小宇宙のような3畳和室の書斎。双柿舎には、まさに逍遥好みの世界が広がっていました。

取材先情報

■双柿舎(坪内逍遙氏旧居)
静岡県熱海市水口町11-17
TEL:0557-81-2232
営業時間:午前10:00~午後4:00
開館日:毎週日曜日(年末年始休館あり)
入館料:無料
交通:
【電車】JR来宮駅より徒歩 約5分
【バス】JR熱海駅より「梅園・相の原団地方面」行き約10分《来の宮駅》下車
【車】駐車場なし

※上記以外の情報については、公開出来ません。