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#144

近代数寄屋の「旧猪股邸」 ~和風モダン建築の草分け 吉田五十八の代表作~

今回は東京都世田谷区成城にある「旧猪股邸」を訪ねます。猪股邸は昭和42年、労務行政研究所の理事長を務めた猪股猛氏の自宅として建てられました。都内有数の高級住宅街として知られる成城の中にあって、周囲を長い垣根で囲まれた猪股邸は、今でもひときわ目を惹く存在となっています。設計したのは近代数寄屋建築の生みの親として知られる吉田五十八。吉田は日本人独自の建築を模索し、伝統的な数寄屋建築に近代的な合理性と機能性を加味した様式を確立しました。猪股邸は彼の晩年にあたる作品で、家全体を茶室に見立てているかのような趣を醸し出しています。茶室に至る動線を3つのエリアに分け、表門から玄関までの外露地、接客空間としての主屋、そして庭に内露地を設えて、伝統的な茶室要素を構成しています。その一方で主屋内部の意匠は、まさに近代数寄屋の真骨頂ともいえるモダンデザイン。造り付けの収納や照明などを巧みに組み込み、雨戸、網戸、ガラス戸、障子戸などの建具を全て引き込み戸にまとめて広大な開口部を生み出すなど、数寄屋のデザインに住みやすさを加えています。和風モダン建築の原点ともいえる近代数寄屋建築。猪股邸はその代表的な傑作です。

取材先情報

旧猪股邸(成城五丁目猪股庭園)
東京都世田谷区成城5-12-19 
TEL:03-6407-3311(一般財団法人 世田谷トラストまちづくり)
開園時間:午前9時30分より午後4時30分まで
休園日:毎週月曜日(但し、月曜が祝日の場合は次の平日)
年末年始(12月29日~1月3日)
入園料:無料
    ※1月と8月は庭園保護の為、庭園路の散策はお休み致します。
建物内の見学のみとなります。
《ご協力のお願い》素足でご来園のお客様につきましては、建物の保護のため
できるだけ靴下をご持参、ご使用いただきますようご協力を
お願い申し上げます。
交通:小田急線「成城学園前」駅下車 北口または西口徒歩7分
     ※駐車場はございませんので、お車でのご来園はご遠慮ください。

※上記以外の情報については、公開出来ません。